第162話 報酬に華がないのは私のせいじゃないんだからねっ

 恭介は笑顔の麗華にギフトレベルアップチケットⅣを差し出す。


「麗華、これあげる」


「何かな? えっ、ギフトレベルアップチケットⅣ!? 良いの!?」


「良いよ。俺が持ってても宝の持ち腐れだし」


「ありがとう!」


 麗華は嬉しさのあまり恭介を抱き締めた。


 ギフトレベルアップチケットⅣを使用できるのは、ギフトレベルが20以下の者だけだ。


 麗華のギフトレベルは丁度20であり、このチケットを使ったことでギフトレベルが一気に24まで跳ね上がった。


「でも、なんだか申し訳ないや。恭介さんがあれだけ頑張って私だけこんな良い思いをさせてもらえるなんて」


「一体いつから麗華だけに使えるアイテムを貰ったと錯覚していた?」


「えっ、何それ怖い。一体何を手に入れたの?」


 恭介のリアルラックの高さから、麗華は自分が貰ったギフトレベルアップチケットⅣなんてオマケなんじゃないかと思い始めた。


鷲巨人砲フレースキャノンと2個目のリミットブレイクキットも手に入れたぞ」


「…それはあまりにも狡くない?」


「狡くないさ。運も実力の内なんだから。まだ、リミットブレイクキットを使うにはナグルファルもタラリアも少し足りないから、今日は鷲巨人砲フレースキャノンだけ合成するかな」


 そう言ってから、恭介は鷲巨人砲フレースキャノンとタラリアのグリムリーパーを武器合成キットにて合成するべくタラリアに乗った。


 合成の結果、銃とビームキャノン、大鎌デスサイズに変形自在なクロノグリーンという武器が完成した。


 変形できる武器の種類が増えたのも良いが、グリムリーパーの時よりも射撃と斬撃の威力や攻撃速度が上がったのもポイントが高い。


 恭介が完成させた武器を見て、麗華も自分だってレアアイテムをゲットするんだと意気込んでコロシアムへと向かう。


 コロシアムでフォルフォルに無駄口を叩かせず、ソロプレイで5連戦すると告げて入場門を開かせたら、麗華はブリュンヒルデを動かしてコロシアムの中に移動した。


 そこに待ち構えていたのは、軽トラックよりも大きなディオメデホースだった。


「蜂の巣にしちゃうんだから」


 機関銃形態のジャバウォックで連射し、ディオメデホースは麗華の宣言通りに蜂の巣のように穴だらけの姿に成り果てた。


『酷いよ麗華ちゃん! 動物をもっと労わろうよ!』


「動物じゃなくてモンスターでしょ。モンスターは愛でるものじゃなくて倒すものよ」


『野蛮な答えをありがとね。そんなに暴力的だと恭介君にドン引きされちゃうよ?』


「恭介さんなら第一に私の安全を考えてくれるわ。だから、確実に倒す私の選択を尊重してくれるって信じてる」


 迷いのない麗華の言葉にフォルフォルはニヤリと笑みを浮かべる。


『愛の力があれば私に惑わされたりしないってことだね。早くキスの先のステップに言っちゃってよ』


「煩いわね。私達には私達のペースがあるの。そもそも次の敵が出て来るんだからおとなしく消えなさい」


『は~い』


 フォルフォルがモニターから消えるのと同時に、力尽きたディオメデホースの体が消えてその代わりに枝分かれした立派な角を持つ黄色い牡鹿が現れた。


 (ケリュネディアーね。このまま戦うわ)


 土属性のケリュネディアーが相手ならば、風属性のブリュンヒルデに乗ったまま戦うという麗華の判断は正しい。


「ケリュゥゥゥン!」


 ケリュネディアーが鳴いた直後、ブリュンヒルデの足元から岩の棘が飛び出した。


 麗華は高度を上げることでそれを躱し、機関銃形態のジャバウォックの連射をケリュネディアーの頭部に集中させる。


 弾丸が連続して当たることで角が折れて両目も潰され、ケリュネディアーは怒りの声を上げた。


「ゲリュア゛ア゛ア゛!」


 前脚を高く上げてから地面に叩きつけると、地面が罅割れてケリュネディアーの両脇に岩の大剣が現れた。


 しかし、それがブリュンヒルデに射出されるよりも先に、ジャバウォックの連射がケリュネディアーの体を蜂の巣にしたので、岩の大剣は崩れ落ちてケリュネディアーの体も光になって消えた。


『ワンパターン戦法は美しくない。他の方法でも戦ってよ』


「相手によって戦い方を決めるわ。フォルフォルの指図なんて受けないから」


『もう、麗華ちゃんってばボディラインと違って性格はわがままなんだから』


「あ゛?」


『ぴぇっ!?』


 麗華の機嫌が一気に悪くなり、その声にフォルフォルはビビッて慌ててモニターから消えた。


 怒るとわかっているのに余計なことを言うなんて、フォルフォルは本当にどうしようもない。


 機嫌が最悪な麗華の前にケルベロスが現れ、麗華は無言でゴーレムチェンジャーを使ってソロモンに乗り換えた。


「「「ワォォォォォン!」」」


「あ゛?」


「「「キャイン!?」」」


 ソロモンのコックピットから漏れ出す怒りのオーラを感じ取り、ケルベロスは尻尾を股下にしまい込んで震えた。


 一瞬にして今の麗華には敵わないと悟ったらしい。


「虫の居所が悪いの。サンドバッグになってもらうわ」


 麗華はそれだけ言った後、ゴエティアをガトリングガンに変形させてケルベロスの3つの頭を順番に攻撃した。


 水属性の攻撃は火属性のケルベロスにとって大ダメージを与えるので、あっという間に3つの頭が蜂の巣になってケルベロスは地面に倒れた。


 ケルベロスもあっさり倒した麗華の前に現れたのは、モンスターの頭蓋骨をヘルムとして被り、腰蓑をつけたアンタイオスと呼ばれる巨人だった。


 右手には特大の棍棒を握っており、麗華の乗るソロモンを見て好戦的な笑みを浮かべる。


「おいおいおいおい! そんなつまんねーガラクタじゃなくて腕っぷしで勝負しようぜ!」


 (確か、地面に足が着いている限りダメージを受けても無限に回復するんだったわね)


 まだ機嫌は完全に直ってはいないものの、冷静に頭を働かせられるぐらいには落ち着いた麗華がゴエティアをガトリングガンから鞭に変形させる。


 アンタイオスの足を地面から引き剥がすべく、鞭を使う作戦はシミュレーターで昨日練習していたのである。


「どらっしゃあぁぁぁぁぁ!」


 ソロモンを叩き潰そうと考え、アンタイオスは棍棒を全力で振り下ろす。


 その際にアンタイオスの体が前のめりになったため、麗華はするっとその攻撃を躱して背後に回り込み、アンタイオスの左脚に鞭を巻き付けて空を飛ぶ。


 コロシアムの9戦目の相手程度では、アンタイオスが必死に踏ん張ろうとしてもあっさりと鞭に巻き取られた左脚のせいで逆さまの状態で吊し上げられてしまう。


 地面に立っていないアンタイオスなんて怖くないから、麗華がジャイアントスイングで上空に放り出し、ガトリングガンに戻したゴエティアで全身を蜂の巣にすることでアンタイオスは力尽きた。


 アンタイオスの死体が光になって消えたところで、最後にヒュドラが姿を現す。


 麗華はヒュドラ相手ならば慣れたブリュンヒルデで戦いたいので、ゴーレムチェンジャーですぐにブリュンヒルデに乗り換えた。


 (ヒュドラの必勝法はバランスを崩させて転ばせることだったわね)


 以前に恭介がヒュドラと戦った時のことを思い出し、麗華はヒュドラの左側の首を集中してビームで破壊した。


 ヒュドラは麗華の狙いに気づき、攻撃を受けていない頭から水属性のブレスや毒を吐いて反撃するのだが、ブリュンヒルデにヒュドラの攻撃は全く当たらないせいでされるがままになってしまった。


 結局、左側に増え過ぎた頭の重さのせいで、ヒュドラはバランスを取れなくなって転んだ。


 そうなればこっちのものだから、麗華は一気に勝負に出る。


「ギフト発動」


 20万ゴールドを消費してジャバウォックから強化されたビームを放てば、再生力を上回るダメージを与えてヒュドラは力尽きた。


 ヒュドラの体が光の粒子になって消え、5連戦を終えたブリュンヒルデのモニターにコロシアムバトルスコアが表示される。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①ディオメデホース②ケリュネディアー

     ③ケルベロス④アンタイオス⑤ヒュドラ

部位破壊:①頭②頭③頭(全て)

     ④顔/腕(左右)/脚(左右)⑤首×30

討伐タイム:33分23秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

デイリークエストボーナス:黒金剛アダマンタイト×50

ギフト:金力変換マネーイズパワーLv25(up)

コメント:報酬に華がないのは私のせいじゃないんだからねっ

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 フォルフォルのコメントにイラっとしたが、麗華は黙ったままコロシアムを出て瑞穂に戻った。


 それから、コックピットを出た麗華が気持ちを切り替えるために恭介に甘えたのは言うまでもない。

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