第199話 そう! そのツッコミが欲しかったんだよ恭介君!

 夕方になり、沙耶と晶も私室から出て来られるようになったため、瑞穂のクルーは待機室パイロットルームでニューイングランド侵攻作戦の反省会をすることにした。


 全員が集まったところで、手を組んで椅子に座るルーナがモニターに現れた。


 もっとも、恭介と麗華以外にはそれがフォルフォルに見えているのだが。


 その左斜め後ろには、ラミアスが直立不動で立っている。


『諸君、まずはニューイングランド侵攻作戦を成功させてくれたことに感謝する。よくやってくれた』


「ゲン○ウスタイルにラミアスを巻き込むなよ」


『そう! そのツッコミが欲しかったんだよ恭介君!』


 ルーナは恭介にツッコまれて嬉しそうに笑った。


 それからはゲン○ウスタイルを崩し、ルーナは普通の口調に戻る。


『ということで、改めてみんなお疲れ~。ウボ=サスラがニューイングランドだった時は驚いたけど、恭介君達が頑張ってくれたおかげで敵の拠点を破壊できたのは素晴らしい成果だよ』


「惑星に化ける敵とかヤバいだろ。こっちの手札を大半使ったんだぞ?」


『確かにそうだね。でも、恭介君達にはまだまだ伸びしろがあるから、今回の作戦を糧にもっと強くなってくれると信じてるよ』


 ルーナは恭介達の成長に期待している。


 主戦力の恭介と麗華が強くなることも期待しているが、2期と3期のパイロットがもっと強くなることで恭介達が少し楽をできると思っている。


 そこで沙耶が口を開く。


「フォルフォル、グロースのような即死攻撃を使える敵はあとどれだけいますか?」


『難しい質問だね。クトゥルフ神話の中でもビッグネームの敵は要注意と考えるべきだ。でも、ギフトレベルが30に到達すれば、恭介君と麗華ちゃんみたいに即死攻撃を無効化できると考えてる。それは今までに収集して来た情報からも確度が高いと思うよ』


 ギフトレベルを30にすると聞き、3期パイロットの4人が今の倍までギフトレベルを上げなければならないのかとざわついた。


 晶はずっと気になったことをルーナに訊ねる。


「ねえフォルフォル、ずっと気になってたんだけどギフトの使用回数を1日1回から増やせないの? クトゥルフ神話の侵略者達と戦うのなら、ギフトの使用制限を解除してくれた方が助かるんだけど」


 その疑問に恭介達は頷いた。


 わざわざ1日に1回しか使えないなんて縛りがなければ、もっと頻繁にギフトを使ってギフトのレベル上げをできるのだから当然だろう。


『これからの戦いを考えるとそうしてあげたいのはやまやまなんだけどさ、ギフトって本来は人の身に余る力なんだよね。だから、1日に1回って縛りにしないと君達の体が壊れちゃうんだ』


「ギフトレベルが30まで上がれば即死攻撃を防げるぐらい体が強くなるんでしょ? それでも危険なの?」


『ギフトレベルの上昇に伴って人間から超人と呼べる存在に向かうのは確かだよ。でも、徐々に鍛えてギフトを肉体に浸透させているのにペースをいきなり上げたら、負荷が大き過ぎて体を壊しちゃうよ。筋トレだってやり続けるだけじゃなくて休めて超回復させるでしょ? それと一緒だね』


「そっか。良い考えだと思ったんだけどなぁ。できないならしょうがないね」


 晶も無理をして体を壊したくなかったから、ルーナの説明を聞いてギフトが1日1回しか使えないという理由に納得した。


 ギフトの話はここまでで良いだろうと思い、恭介はルーナに訊ねる。


「今回の作戦をずっと見てたなら、俺達にアドバイスでもしてくれないか? 客観的にどう見えたのか知っておきたい」


『そうだね。それが君達のためになるなら喜んでアドバイスさせてもらうよ。まずは恭介君だけど、もっと想像力を鍛えると良いよ。土精霊槌ノームハンマーは使用者のイメージによって威力が左右される。強烈な一撃をどうイメージするかによって戦局は変わるから、色んなアニメで想像力を今まで以上に豊かにしてね』


「アニメで勉強か。わかった」


 恭介も土精霊槌ノームハンマーの使い方によって、もっと効率的に戦えたのではと思っていたので、ルーナのアドバイス通りにやってみることにした。


『次は麗華ちゃんだね。麗華ちゃん、どうして残骸換金サルベージを使わなかったんだい?』


 ルーナが口にした残骸換金サルベージとは、金力変換マネーイズパワーがLv30に到達したことで会得した派生技である。


 その効果とは、戦場に散らばる敵の残骸を吸収する穴を出現させ、穴に入ったものを換金する金力変換マネーイズパワーの補助になるものだ。


「換金率がそれほど高いとは言えないから、私の中で優先度が低かったのよ。敵を減らすことで頭がいっぱいだったし」


『1ゴールドを笑う者は1ゴールドに泣くんだよ。塵も積もれば山となるんだから、次からは必ず使ってね』


「わかったわ」


 最近では金力変換マネーイズパワーで支払う金額も上がって来たから、少しでも収入が増えるのならば使わない手はない。


 麗華も今度から残骸換金サルベージを忘れずに使うことにした。


『さて、2期と3期のパイロットについては共通のアドバイスになるよ。まずはギフトを毎日使ってレベル上げしよう。これが最優先だよ。1日に1回しか使えないからこそ、毎日使って鍛えるんだ』


 これは先程の晶の質問にも関係する話だが、ギフトレベルを上げることが生存に繋がるので2期と3期パイロットの全員が頷いた。


『もう1つのアドバイスだけど、柔軟な戦闘スタイルを確立してほしい。例えば、恭介君や麗華ちゃんみたいに複数のゴーレムに乗ったり、変形武器を使うって感じだね。君達には作戦の報酬として、2機目のベースゴーレムとゴーレムチェンジャーが与えられてるはずだ。まずはサブのゴーレムを用意するところから始めてね』


 このアドバイスについても頷ける話だった。


 1機しかゴーレムを持っていないとか、1つの変形できない武器を持っていた場合、そのゴーレムと武器が通用しない敵と遭遇した時に詰んでしまう。


 複数人で行動していれば対応できる者もいるだろうが、それでも戦える者が減る事態は避けたいから、2機目のゴーレムを乗り換えできる戦力として用意することは急務と言えよう。


「だったら、俺と麗華が今は使ってないゴーレムの設計図を放出しよう。設計図合成キットを使えば、そこそこ使えるゴーレムになるものもあるだろうし」


「そうだね。私もケルブ以下の天使シリーズを放出する」


「トゥモロー様、使用済みのアシュラを下さい!」


 真っ先に手を挙げたのは明日奈だった。


 恭介の使用済みという響きに興奮しているらしく、若干鼻息が荒くなっている。


『面白くなって来たね。ワクワクが止まらないよ』


「黙ってろルーナ」


 ルーナが下卑た笑みを浮かべるので、恭介は語気を強くしてルーナを黙らせた。


 その後しばらくの間、ゴーレムの設計図の交換や調整に時間が費やされた。


 結果として、2期と3期パイロット達はそれぞれ以下の設計図を手に入れた。


 沙耶はソロネとラセツの設計図を合成し、オファニエル。


 晶はケルブ。


 明日奈はアシュラ。


 仁志はドミニオンとケイローンの設計図を合成し、エインヘリヤル。


 遥はパワーとペガサスの設計図を合成し、アリコーン。


 潤はリャナンシーとメビィの設計図を合成し、アスタリスク。


 晶と明日奈は元々の設計図が強力だったこともあり、合成できる設計図が今は誰の手元になかったので暫定的にそのまま使うことになった。


 それ以外のメンバーは、設計図合成キットさえあれば合成できるだけの組み合わせがあったため、新たなゴーレムの設計図を手に入れられた。


 属性については、1機目のゴーレムと属性的な相性が得意でも苦手でもない属性になったから、沙耶と遥が火属性、晶と仁志が風属性、明日奈が土属性、潤が水属性を選んだ。


『シミュレーターを使うだけじゃなくて、各種コンテンツでサブのゴーレムを使って実戦に投入できるようにしようね。それだけでもかなり戦略は変わるから』


 ルーナがまともなアドバイスをしたから、2期と3期パイロットの6人は頷いた。


『はい、という訳で反省会終わり。打ち上げやるよー』


 反省会はちゃんとやるけれど、打ち上げもしっかりやる。


 オンとオフをしっかりと切り替えなければ、クトゥルフ神話の侵略者達と戦っていられない。


 そういうつもりでルーナが全員を食堂に行くよう指示し、食堂では立食パーティーが準備されていたので、瑞穂のクルーは料理や飲み物を楽しんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る