第72話 弱いって罪なことだな
真っ赤になった麗華を見て晶が面白がっていることに気づき、恭介は晶にジト目を向ける。
「彼氏彼女の関係ではないが、デスゲームを一緒にくぐり抜けた仲だ。晶、あんまりからかわないでくれ」
「はーい。あと、僕のことはお姉さんと呼んでね」
「晶って大学生ぐらいに見えるんだがいくつだ?」
「一昨日27になった」
キリッとした表情で自分の年齢を答える晶を見て、恭介達はマジかこいつという目になった。
「俺と同い年かよ」
「5つも上だったんですね」
「性別だけじゃなくて年齢も誤魔化してたんですね」
「あれぇ、思ってた反応と違うぞぉ」
晶は自分の予想していた反応ではなかったらしく、首を傾げて苦笑していた。
それから沙耶が25歳だと申告したので、日本チームは恭介>晶>沙耶>麗華という年齢順であることがわかった。
話をしている内に打ち解けて来たので、その調子で恭介はギフトの話を振る。
「2人のギフトはなんだった? 俺は
「私は
「私は
「僕は
沙耶のギフトは
どちらもデスゲームでは使えそうなギフトだったから、とりあえずギフトで他国にハンデを負うことはないだろう。
「GBOで2人はどんなゴーレムを操縦してた?」
「私はラセツです。武器は打撃メインでした」
「僕はリャナンシーだね。似合うでしょ?」
「そうか…。フォルフォル、出て来い」
『呼んだ?』
少し考えてから恭介がフォルフォルを呼ぶと、フォルフォルはすぐにモニターに姿を現した。
「例えば、俺が使ってない武器を沙耶や晶に譲ることはできるか?」
『できるよ。タワー前とかレース会場前で受け渡せば良いんだよ』
「なるほどな。沙耶、使う武器は打撃メインって言ってたけど、モーニングスターは使えるか?」
沙耶は話の流れを理解して頷く。
「使えます。ボムスター零式をいただけるんですか?」
「まあな。俺と麗華は政府が誠意を見せない限り、日本に資源を送るつもりはない。だが、沙耶と晶にそれを強要するつもりはない。だから、ボムスターは餞別だ」
「…そうですか。では、ありがたく使わせてもらいます。1期パイロットと2期パイロットが共に行動するのは非効率ですから、私達は私達のペースでやってみます」
沙耶は恭介と麗華に対する政府の在り方を良しとはしていないが、かと言って資源を送らない理由もないし日本で待つゲーム友達もいるので、恭介達と別行動をすると宣言した。
「僕のメイン武器はビームランチャーだったから、麗華ちゃんの武器はお下がりで貰っても扱えないや」
「頑張って
「そっか。後は報酬に期待かな。情報ありがとう」
日本の1期パイロットと2期パイロットは二手に分かれ、お互いのペースで代理戦争まで進めることになった。
勿論、先輩として恭介も麗華も求められればアドバイスをするつもりだ。
一旦別れてから、恭介達はタワー前で落ち合った。
沙耶がボムスター零式を恭介から受け取り、晶と共にタワーに挑んでいったのを見届けた後、恭介と麗華は魔法陣で解禁されたタワー11階層に移動した。
遺跡風の通路を進む恭介だが、今日はリュージュではなくアシュラに乗っている。
コピーパイロットプログラムをリュージュに差し込むことで、リュージュは恭介達の後から付いて来ている。
アシュラに乗っている理由だが、恭介がまだアシュラでまともな戦闘をしたことがなかったからだ。
難易度の低いタワー探索で操縦に慣れておこうと考え、今日はアシュラに乗ることにした。
『恭介さん、アシュラの乗り心地はどう?』
「今のところ問題ない。正面のオークを蹴散らして来るわ」
恭介はそれだけ言って、集団で突撃して来たオークをシミターで斬り捨てていく。
6本の腕で6本のシミターを操るには慣れが必要だが、恭介はGBOでの操縦経験があったから容易く操縦してみせた。
オークの群れをあっさり倒したところで、麗華とリュージュが恭介に合流した。
『余裕そうだったね』
「まあね。コロシアムでの戦闘のせいでタワーのモンスターじゃ弱く感じる」
『確かに。私も見てて敵モンスターが隙だらけに感じたもん』
それから、恭介達はサクサクと前に進む。
オークの群れと何度か戦闘になったけれど、恭介だけじゃなくて麗華もパワーアップしてるから、ただのオークでは群れと遭遇しても物足りなかった。
しばらくして正面に昇降機が見つかったが、通路の途中に明らかに怪しいレバーがあった。
『恭介さん、あのレバーを撃っても良い? あからさまに罠っぽいから、撃って作動させてみようかと思うんだけど』
「そうだな。もしかしたら宝箱が出て来ないとも限らないし、やってみてくれ」
『わかった』
麗華がランプオブカースでレバーを狙撃したところ、レバーが地面に触れるまで押されて倒れた。
その直後に正面の通路が横にずれて両側の壁が天井に収納され、左側の穴からオークの上半身と蜥蜴の下半身を持つモンスターが現れた。
「オーカスが出たぞ。流石は麗華。また引き当てたな」
『最近、私には宝箱じゃなくて珍しいモンスターしか見つけられないってわかるようになった』
「さっさとやっちまおうぜ」
『そうだね』
オーカスは大きく息を吸い込んで火を吐き出したが、恭介達にその攻撃は当たらない。
1対3は不利だがやってやると言わんばかりに気合を入れるオーカスだったが、リュージュが機械竜の姿に変形してビームを発射したら一瞬で片が付いた。
『噛ませ犬? いや、豚かしら?』
「弱いって罪なことだな。あっ、奥にいたオークナイトまで倒しちゃったよ」
恭介達は不完全燃焼だったので、昇降機に乗って12階層も探索することにした。
内装は変わらないが、出て来る
「オークより斬り応えがあるじゃん」
『この階層では私も活躍するんだから!』
リュージュに活躍の場なんて与えないと言わんばかりに麗華が頑張り、恭介達はどんどん進んで行く。
その途中で恭介は天井の模様が他と違う箇所を見つけた。
『麗華、天井の台形の模様を撃ってくれないか?』
「任せて。狙い撃つわ」
麗華がランプオブカースで狙撃すると、台形の部分が奥に押し込まれて正面の地面が大きく開かれた。
床下から宝箱がせり上がって来たのだが、その宝箱はいつもよりも大きかった。
『うわぁ、大きい!』
「麗華、これはミミックだ。近付いたら噛みつかれるぞ」
「キシャ!?」
恭介に見破れたことに驚き、ミミックはガパッと口を開いて驚いた。
「成敗」
恭介は素早く距離を詰め、ミミックを6本のシミターで滅多切りにした。
その結果、光の粒子になって消えたミミックの中から宝箱が現れた。
『うん、知ってた。恭介さんは宝箱をゲットできる星に生まれてるのよ』
「同じ地球出身だぞ。それはさておき、開けてみよう」
宝箱を開ければ、その中身はアシュラのコックピットのサイドポケットに送られて来た。
その中身は5万ゴールドとニンフの設計図だった。
「どうしよう、今更ニンフの設計図とかハズレだわ。麗華は欲しい?」
『要らない。ドミニオンの方が強いもの。帰ったら晶さんにあげたら? 沙耶さんにはボムスター零式をあげたけど、晶さんには何も餞別を渡せなかったし』
「そうしよう」
ニンフの設計図の使い道も決めたところで、恭介達はさっさと昇降機を守るスプリガンディフェンダーを仕留めて13階層に移動した。
そろそろ正午になるタイミングだったから、恭介と麗華は魔法陣に乗ってタワーから脱出した。
その際、タワー探索スコアがコックピットのモニターに表示されたから欠かさずにチェックする。
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タワー探索スコア(マルチプレイ)
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踏破階層:11階層~12階層
モンスター討伐数:45体
協調性:◎
宝箱発見:○
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総合評価:S
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報酬:
10万ゴールド
資源カード(食料)10×4
資源カード(素材)10×4
ギフト:
宝箱発見ボーナス:魔石4種セット×40
コメント:恭介君達には物足りないよね。反省する!
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フォルフォルは今日まで恭介達を11階層から先に進ませなかったことを後悔した。
恭介達からしても、報酬がしょぼくてこれはちまちま探索するものじゃないと感じた。
未だに不完全燃焼だった恭介達は、午後は充実した時間にしようと決めて格納庫に帰還した。
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