第28章 変更された育成計画
第271話 ルーナ、唯一神でありたい気持ちが駄々洩れじゃないか
恭介達が瑞穂に来て61日目、瑞穂は高天原に向かってまだハイパードライブを継続している。
予定では今日の午後に高天原に到着予定なので、恭介は朝からアンチノミーに乗ってレース会場にやって来た。
「ルーナ、新しいコースが解禁されたんだってな。スパイラルパレスだっけ?」
『そうだよ。今回も縛りプレイをする?
ルーナの案内を聞いて、恭介は引っ掛かることがあってノータイムで縛りプレイとは言わなかった。
「なあ、ギフトはずっとLv50が上限なのか?」
『今のところそうだね。これ以上ギフトレベルを上げちゃうと、恭介君が本格的に神の領域に足を踏み入れて後戻りできなくなっちゃうもん。ぶっちゃけ、Lv50だって結構ギリギリなんだよ? 恭介君、ギフトが上限に到達したことで感じた変化とかない?』
「…自分以外の動きが遅く感じられることが何度かあった」
『なるほど。恭介君は時空の力に目覚めつつあるね。しかも事態は私が想像してたより進んでたらしい。どうしたものかな』
偶に自分と周囲の時間の流れが違うのではと違和感を覚えることが何度かあったから、それを口にしてみた恭介は自分がルーナの予想を超えるスピードで神に近づいていることが明らかになった。
この状態でも恭介はパニックに陥ることなく、確認すべきことをルーナに訊ねる。
「仮に神の領域に本格的に入った場合、俺はどうなる?」
『別に恭介君が時空神になる以外何も起こらないよ。ただ、私が今は唯一神の状態だったから、その貴重性が失われちゃうなって思っただけ。時空神にならないようにギフトの使用は控えてね』
「なんだ、ルーナの都合かよ。縛りプレイでスパイラルパレスに挑むから入場門を開け」
『はーい』
ルーナによって開かれた入場門をくぐり、アンチノミーはスパイラルパレスに移動した。
スパイラルパレスとは、ルートが延々と螺旋している宮殿のコースであり、螺旋を無視して先に進もうとしても透明の壁に阻まれる。
スタート地点には既に7機のゴーレムが位置に着いており、アンチノミーが位置に着くのを待っている。
1位の位置には風属性のプライドルシファー。
七つの大罪において傲慢を司るルシファーの上位互換機体であり、翼が悪魔の物に変わっている以外はブリュンヒルデによく似ている。
4つのビットは相変わらず攻撃に特化しており、ビームの火力も上がっている。
2位の位置には火属性のラースサタン。
七つの大罪において憤怒を司るサタンの上位互換機体であり、サタンよりもずっと邪悪な外見になっている。
口から放てるビームに加え、翼から飛ばして着火させることで爆発する火薬も強化されており、できれば近づきたくない機体と言えよう。
3位の位置には水属性のエンヴィーレヴィアタン。
七つの大罪において嫉妬を司るレヴィアタンの上位互換機体であり、悪魔落ちした水龍と呼ぶべき外見だ。
口から高火力のビームを放てるのは同じだが、レヴィアタンだった時はできた変形ができなくなった代わりに、翼から展開したエネルギーフィールドは一定以上の火力がないとエネルギーを吸収して自身の攻撃に任意のタイミングで上乗せできる。
4位の位置には土属性のスロウスベルフェゴール。
七つの大罪において傲慢を司るベルフェゴールの上位互換機体であり、衛星のように展開する4枚の盾を衛星が反射できる攻撃の上限が高まった。
5位の位置には火属性のグリードマモン。
七つの大罪において強欲を司るマモンの上位互換機体であり、6つの腕にそれぞれ蛇腹剣を握っており、背中の一対の翼に仕込まれたビームライフルで遠い敵も攻撃できる。
6位の位置には風属性のグラトニーベルゼブブ。
七つの大罪において暴食を司るベルゼブブの上位互換機体であり、持久力に長けたゴーレムであり、攻撃を吸収して操作可能な爆弾を作れる盾を4枚ずつ衛星のように展開している。
7位の位置には水属性のメランコリーアスタロト。
自身に何かが近づけば近づく程そのスピードの落ちるフィールドを展開しており、自身の銃で発射する時は逆に発射後のタイミングで銃弾が加速する。
そのフィールドの出力が操作できるようになったため、緩急をつけた反撃ができるようになった。
いずれも特徴的なゴーレムの準備が整ったため、レース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1,GO!』
縛りプレイのため、今回も恭介は
1位~7位の機体同士での激しいスタートでの争いを掻い潜った時、恭介はまた周囲の時間が自分よりもゆっくりと流れているように感じた。
その感覚が落ち着いた時には、既に恭介が他の7機を抜いて1位になっていた。
螺旋状のコースをひたすら進むしかないスパイラルパレスは、三半規管が弱いとそれだけでまともに戦えない。
恭介はこれまでのゴーレム操作で三半規管もしっかり鍛えられていたため、特段問題が生じることなく先に進むことができた。
ただし、アンチノミーが半周した辺りで最初のギミックとして勢いの強い逆風が吹き始めた。
(ドライザーなら余裕なのにな。いや、ここは創意工夫で何とかするしかない)
ないものねだりをしていても仕方ないので、恭介はビヨンドロマンをドリルに変形させてアンチノミーの正面に構えた。
ドリルによって空気抵抗をなくし、恭介は加速した。
『これが恭介君! 縛りがあってもそのハンデを平然と乗り越えてみせる!』
「ルーナ、煩い」
『はーい』
ドリルの操作は思ったよりも繊細だったから、恭介はルーナのネタ発言をばっさりと斬り捨てた。
逆風はどんどん強まっていったが、2周目に突入することでパタリと止まった。
その代わりにコースの天井と地面の蓋が一斉に開き、ランダムにビームが放たれるようになった。
ドリル形態から蛇腹剣にビヨンドロマンを戻してから、恭介はビームを避けることに専念した。
ビームは何処を飛んでいても発射されるため、運が悪いと進んでいる真下や真正面にビームが発射されてダメージを負ってしまう。
前方ではプライドルシファーとラースサタン、グリードマモンが走行不能な状態で墜落していた。
(このコースは守りに強い機体の方が有利そうだな)
恭介の予想は正しくて、3周目に入るタイミングでグラトニーベルゼブブの残骸が飛び散っているのを見つけた。
おそらく、吸収した攻撃で造った爆弾にビームが命中して自爆しまったのだろう。
これで生き残っているのは、恭介を除いてエンヴィーレヴィアタンとスロウスベルフェゴール、メランコリーアスタロトの3機だ。
スパイラルパレスでは、ゴーレムが1機でも3周目に突入するとビームを反射できる盾を持ったブランスレイヤーに加え、被弾しても制限回数こそあれど身代わりが使えるアサルトノワールが現れる。
その結果、ランダムに発射されるビームだけ避ければ良い状態ではなくなり、レースの難易度が跳ね上がる。
3周目も3分の1が終わる地点で、ブランスレイヤーとアサルトノワールのコンビにペースを乱されたスロウスベルフェゴールの残骸があり、半周した所で今度はエンヴィーレヴィアタンがそのコンビと交戦していた。
エンヴィーレヴィアタンはアンチノミーが追い付いて来たことに気づき、これ以上蓄えている時間はないと判断し、今までに蓄えたエネルギーを上乗せしたビームをブランスレイヤーとアサルトノワールのコンビに放った。
ずっと耐え続けていたおかげで、エンヴィーレヴィアタンのビームはブランスレイヤーとアサルトノワールのコンビの許容ダメージ量を上回って撃墜した。
その隙にアンチノミーがエンヴィーレヴィアタンを追い越したが、エンヴィーレヴィアタンは周回遅れにされたことが悔しくて後ろからアンチノミーを狙ってビームを連発する。
(火力はあっても当たらなきゃ意味がない)
そんな風に思っていたら、残り3分の1の地点で前方にメランコリーアスタロトがいてその後ろに恭介のアンチノミー、そしてエンヴィーレヴィアタンが縦並びになった。
メランコリーアスタロトも抜かれたくないから、後ろの2機を狙ってガンガンビームを撃ち始める。
それを恭介が躱し、エンヴィーレヴィアタンが吸収して上乗せしたビームを撃ち返す。
恭介は挟まれる形になったけれど、そこに新たなブランスレイヤーとアサルトノワールのコンビが現れたことで状況は変わった。
アサルトノワールがメランコリーアスタロトを狙い、ブランスレイヤーがエンヴィーレヴィアタンに向かったことで恭介はフリーになり、その間にメランコリーアスタロトを追い抜いてギリギリ全員を周回遅れにした状態でゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黒い凶星、トゥモロー&アンチノミーだぁぁぁぁぁ!』
恭介はすぐにコースから脱出し、レーススコアがモニターに表示されたのでそれを確認する。
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レーススコア(ソロプレイ・スパイラルパレス)
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走行タイム:44分44秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:0回
他パイロット周回遅れ人数:7人
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×10枚
資源カード(素材)100×10枚
100万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×100
ぶっちぎりボーナス:ベルフェゴールの設計図
ギフト無使用ボーナス:ベースゴーレム
デイリークエストボーナス:100万ゴールド
ギフト:
コメント:普段使いできるゴーレムが4機になったね
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(ルーナ、唯一神でありたい気持ちが駄々洩れじゃないか)
コメントを見てそう思ったが、手に入れたベースゴーレムを見たかったので恭介は気持ちを切り替えて瑞穂の格納庫に戻った。
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