第103話 これぞフォルフォル。痒い所に手が届かないことに定評がありますね
恭介がスタンピードボルケーノに挑戦している頃、沙耶と晶はタワー10階層に来ていた。
本日のデイリークエストがタワー探索で初めての階層に挑むことであり、2人は次の代理戦争までに初めて挑める階層が10階層しか残っていなかった。
両者ともラセツとリャナンシーに乗り換えており、これで機体を構成する鉱物マテリアルはさておき、GBO時代と同じゴーレムに乗れている。
『サーヤ、どっちのレッサーデーモンも臨戦態勢だよ。気を付けて』
「晶さんも気を付けて下さい」
インプと同じで全身が黒く、尖った耳と充血した目、蝙蝠の翼、鉤のある長い尻尾といった特徴は変わらないが、レッサーデーモンになって脹れていた腹が引っ込んで背が伸びた。
武器も片方は何かの骨を削って作られた槍を握っており、もう片方はホブゴブリンの頭蓋骨と背骨で作られたメイスを握っている。
レッサーデーモン達は沙耶達を視界に捉えた時点で紫色の魔法陣を出現させ、そこから6階層以上で出て来たモンスターの混成集団を召喚した。
レッドキャップとサファギン、ハニワン、シルクモスがレッサーデーモン2体を囲み、沙耶と晶は数的不利に追い込まれる。
もっとも、この事態はシミュレーターで体験済みなので2人は慌てたりしないのだが。
「打合せした通り、レッドキャップとシルクモスはお任せします。サファギンとハニワンは私が引き受けますので」
『了解』
属性的な相性を考慮し、沙耶と晶は自分達が戦う相手を決めていた。
沙耶はサファギンとハニワンをボムスター零式で屠り、晶はランプオブカースでレッドキャップとシルクモスを次々に撃ち抜いていく。
2人が取り巻きを倒して油断しただろうと判断し、メイスを持ったレッサーデーモンが沙耶を襲い、槍を持ったレッサーデーモンが晶を襲う。
しかし、そうなるだろうことは予想できていたから、沙耶はレッサーデーモンのメイスをボムスター零式で弾き飛ばし、晶も槍の穂先をランプオブカースで撃ち抜いて破壊した。
「オノレ!」
「ヨクモ!」
レッサーデーモン2体は自分の得物を破壊され、再び足元を中心に紫色の魔法陣を出現させる。
そこからレッドキャップジェネラルとサファギンモンク、シャッコウ、モスマンが1体ずつ現れ、レッサーデーモン達を守るポジションに着いた。
どうやら、沙耶達と戦っているレッサーデーモンも恭介達が戦ったのと同様に特殊個体のようだ。
「レッドキャップジェネラルとモスマンはお任せします」
『はいよ。サファギンモンクとシャッコウはお願いね』
必要な言葉だけ交わし、沙耶と晶は自分が倒すべき相手に攻撃を始める。
沙耶は自分に飛び蹴りを仕掛けるサファギンモンクを狙い、ボムスター零式をフルスイングする。
それがサファギンモンクに当たり、シャッコウに向かって吹き飛ばされた。
シャッコウにサファギンモンクがぶつかった時、ボムスター零式の効果でサファギンモンクが爆発してシャッコウはそれに巻き込まれた。
サファギンモンクよりもシャッコウの方が硬く、罅割れた部位もあるがまだ生き残っていたため、沙耶は反撃の隙を与えずに再度ボムスター零式をフルスイングする。
その攻撃がシャッコウの罅割れた部位に命中し、シャッコウの体の一部が派手に砕けた。
砕けた後にボムスター零式の効果が発動し、シャッコウの体は完全に爆散した。
一方、晶は早々にレッドキャップジェネラルを撃ち抜き、今は周囲を飛び回るモスマンを狙って攻撃していた。
『ちょろちょろと動き回って鬱陶しいなぁ』
狙撃精度が麗華に劣る晶だから、掠ったりして惜しい攻撃は何度かあったがこれぞ命中という射撃はなかった。
苦戦している晶を見て、援軍を出せば勝てると思ったレッサーデーモン達が魔法陣を出現させる。
「やらせる訳ないでしょう」
手が空いた沙耶が片方のレッサーデーモンを殴り、もう片方のレッサーデーモンのいる方に吹き飛ばせば、2体とも召喚を邪魔されて援軍を呼べなかった。
『そろそろ効いて来たみたいだね。次は外さないよ』
石化の効果がようやくモスマンの行動に影響を及ぼし始め、動きが鈍くなったところを晶が撃ち抜いた。
邪魔者がいなくなれば、後は爆発で怯んだレッサーデーモン2体を倒すだけだ。
「モウダメダァァァ!」
「アンマリダァァァ!」
沙耶と晶が1体ずつ倒したところで、それらの体が光の粒子になって消えた。
コックピットのサイドポケットに戦利品が転送されたのを確認し、沙耶は晶に声をかける。
「お疲れ様でした。特殊個体でしたね」
『お疲れ~。恭介君達と同じ特殊個体と戦うなんて、フォルフォルが悪さしたんじゃないかって勘繰っちゃうよね』
『私は悪くねえ! 悪くねえんだ!』
晶がフォルフォルを疑えば、フォルフォルはわざととしか思えない台詞を口にしながら2人のゴーレムのモニターに現れる。
「シミュレーターに特殊個体のデータを入れるという話はどうなりましたか? 恭介さん達から要請があったはずですが」
『その件については実装しないことになったよ。だって、コロシアムのサプライズみたいに特殊個体だってサプライズだもん。それに、レッサーデーモンの特殊個体なんてせいぜいデーモンと同じことができるだけで、身体的スペックはレッサーデーモンのままだからね』
「これぞフォルフォル。痒い所に手が届かないことに定評がありますね」
『そんな風に責められても駄目なものは駄目なの。じゃあね』
フォルフォルは逃げるようにして、モニターから姿を消した。
沙耶達は昇降機に乗って11階層まで移動した後、魔法陣でタワーを脱出した。
それと同時に、タワー探索スコアが沙耶と晶の乗るゴーレムのモニターに表示される。
-----------------------------------------
タワー探索スコア(マルチプレイ)
-----------------------------------------
踏破階層:10階層
モンスター討伐数:72体
協調性:◎
宝箱発見:設置なし
-----------------------------------------
総合評価:S
-----------------------------------------
報酬:5万ゴールド
資源カード(食料)10×1
資源カード(食料)5×1
資源カード(素材)10×1
資源カード(素材)5×1
特殊個体キルボーナス:アップデート無料チケット(
ギフト:
コメント:これで沙耶ちゃん達もナショナルチャンネルを使えるね
-----------------------------------------
「晶さん、特殊個体キルボーナスはなんでしたか? 私はアップデート無料チケット(
『僕の方はアップデート無料チケット(格納庫)だったよ。ということは、ナショナルチャンネルが使えるようになったんだね』
「そうなりますね。これで私達も日本と連絡が取れるようになりました」
『日本って言っても持木内閣でしょ? 恭介君達が扱いにくい分、僕達を懐柔しようとあの手この手を仕掛けて来るんじゃない?』
晶はナショナルチャンネルで家族や友人と話をしたいと思う反面、この状況を危険視している。
恭介と麗華が持木内閣に対して良い感情を抱いていないのは明らかで、資源も第3回代理戦争の前日に送ってから一度も送っていないのだ。
沙耶と晶は少ないながらも送っているから、持木内閣としては自分達と組んで恭介達の力を借りずともやっていけるようにしたいと考えるのが自然な流れだろう。
そうするためには、自分達を味方につけるべく余計なことを仕掛けて来るのではないかと疑いたくなる晶の気持ちはよくわかる。
「持木内閣に誠意が感じられなければ、私達も恭介さん達と同じ対応をすれば良いだけです。晶さん、恭介さん達と持木内閣のどちらの味方をすれば良いかなんて、猿でもわかることを訊かないで下さいね?」
『訊かないよ。恭介君達には生き残るための力を貰った。というか、現在進行形で助けられてるじゃん。言葉だけの連中と比べるだけ恭介君達に失礼じゃないか』
「わかってればそれで良いんです。戻りましょう」
『帰ろー』
沙耶と晶は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます