第262話 ロマン武器だからロマンがあるのではありません! ロマンがあるからロマン武器なのです!
格納庫に戻って来た恭介は、ファルスピースとコールオブウォーが合成可能な武器同士であることを知り、すぐに合成作業に始めていた。
完成した武器の名はビヨンドロマンであり、その特徴はロマン武器なら変形自在という縛りのあるラストリゾートと呼ぶべきものだった。
ロマン武器縛りというのはかなりピーキーな仕様と言えよう。
「これはまたロマン溢れる武器が手に入ったな」
『ロマン武器だからロマンがあるのではありません! ロマンがあるからロマン武器なのです!』
「いきなりどうした?」
『一度ロマン武器について物申してみたかったんだよね。多くの人間はロマン武器という物を勘違いしてるからさ』
そのルーナの発言には納得できる部分があったため、恭介は否定せずにいた。
そこに麗華がコックピットから回線を繋げて連絡して来る。
『恭介さん、この後宝探しもする?』
「しよう。まだたっぷり時間もあることだし」
思い立ったらすぐ行動ということで、恭介と麗華はタワーに移動した。
タワーの昇降機に乗って地下14階に移動してみると、そこは山岳地帯と呼ぶべき場所でモンスターの鳴き声が至る所から聞こえていた。
『ミッション! 1時間以内にワイバハムートの卵を奪え!』
ミッションのアナウンスが聞こえて恭介は苦笑する。
「ワイバハムートが出て来るのは確定だな」
『そうだね。
『グヘヘ、ワイバーンのお肉だよ。ヤりまくりだね、麗華ちゃん』
『貰える物は貰っておくわ』
『あれ、このリアクションは求めてたのとは違うなぁ』
麗華が恥ずかしがると思っていたルーナとしては、下卑た笑みも引っ込むぐらいに困惑していた。
どうして麗華が恥ずかしがらなくなったかと言えば、恭介と結婚したからという理由に尽きる。
結婚した以上、色ボケして生活が破綻しない限りにおいて恭介と子供を作ることに誰も文句は言えない。
それならば、ワイバーンのお肉は有用であることは間違いないから、麗華も開き直ってワイバーンの肉を集めるつもりなのだ。
『あんなに初心だった麗華ちゃんは何処に行ったんだろう? 恭介君、毎晩絞られてて辛くない?』
「気が散るから黙っとけ。ハウス」
『はーい』
時間制限がある宝探しをしているので、ルーナのしょうもない雑談に付き合っている暇はない。
その証拠に恭介達を倒しにワイバーンの群れが押し寄せて来た。
「ビヨンドロマンのテストだ」
そう言って恭介はビヨンドロマンをホーミングランチャーに変形させて発射する。
それにより、極太のビームがワイバーン達を次々に撃ち抜くようにカクカク軌道を変えつつ飛んで行く。
(消費エネルギーが多いな。少数の敵に使うのは止めておこう)
有用なのは間違いないけれど、使いどころを考えずガンガン撃ってしまうと魔石を無駄遣いしてしまうとわかり、ホーミングランチャー形態は普段使いしないことにした。
襲って来たワイバーンを全滅させたから、その肉がアンチノミーのコックピット内にあるサイドポケットに目録として転送された。
目録でなければ、今頃アンチノミーのコックピットはワイバーンの肉だらけになっていたはずだから、恭介は目録が転送されて来たことにホッとした。
「どんどん行こう」
『そうだね。お肉が待ってる』
「その発言だと食いしん坊キャラみたいに聞こえるかも」
『酷~い。私、暴飲暴食なんてしないのに』
「すまん、冗談だ」
『もう、恭介さんってばお茶目なんだから』
2人の通信が糖度の高いものになっており、芸の細かいルーナはモニター上で大量の砂糖を吐き出しながら砂糖製造機のプラカードを掲げているのだが、恭介も麗華もそれには触れずに先へと進んだ。
道中ではワイバーンだけでなく、ツインヘッドワイバーンやトリニティワイバーンも
「今までの宝探しで一番敵の数が多くないか?」
『私もそう思う。ツインヘッドワイバーンとトリニティワイバーンが
恭介の言う通りで、地下14階層に現れる
これは常識的な数を配置していても、恭介と麗華にあっさりクリアされてしまうがゆえの措置である。
「それだけルーナがテコ入れしたってことだろ。おっと、ワイバハムートを見つけた」
『いた。卵を抱え込んでるね。近衛のトリニティワイバーン2体がこっちに来てる。邪魔だからヴォイドで動きを止めるよ』
「頼んだ」
麗華はシグルドリーヴァからヴォイドに乗り換え、信号をオンにすることで自分達の接近に気づいて襲い掛かって来たトリニティワイバーン2体の動きを止める。
それによって生じた隙を無駄にはせず、恭介が斬馬刀形態のビヨンドロマンを振り抜いてさっさと仕留めた。
近衛が倒されたのを見ていたため、卵を守る者が自分のみになったワイバハムートは怒り狂いながら恭介と麗華にブレスを放つ。
『私が防ぐ!』
麗華はネクサスに乗り換え、パラダイスロストでワイバハムートのブレスを防いだ。
その後ろから恭介が対艦砲に変形させたビヨンドロマンでワイバハムートの頭部を攻撃する。
ワイバハムートは麗華の守りが堅かったこともあり、その守りをぶち抜いてやるとムキになっていたため、恭介からの攻撃に気づくのが遅れて完全に避け切れなかった。
急所には当たらなかったけれど、それでも体に大きな穴が開いて大ダメージを受けたことは間違いない。
だからこそ、ワイバハムートは恭介を真っ先に倒さなければならない敵だと認定した。
『どこを見てるの? ギフト発動』
体に空いた穴によって激痛が走るけれど、それを我慢して恭介にブレスを吐くワイバハムートに対し、麗華は
頭に血が上っていて冷静な判断ができず、麗華の脅威度を見誤ったのがワイバハムートの敗因だ。
ワイバハムートの体にもう1つ大きな穴が空き、それが原因でワイバハムートは力尽きて光の粒子になって消えた。
ワイバハムートがいなければ卵を守る者はもういないので、恭介がそれを回収したことでミッションクリアとなり、宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示される。
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宝探しスコア(マルチプレイ)
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ミッション:1時間以内にワイバハムートの卵を奪え
残り時間:22分11秒
協調性:◎
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総合評価:S
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報酬:100万ゴールド
資源カード(食料)100×10
資源カード(素材)100×10
ランダムボーナス:快眠枕
デイリークエストボーナス:スケープゴートチケット
ギフト:
コメント:今夜は眠れなさそうだから、枕が無駄になっちゃうかもしれないね
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(別に枕はいつでも使えるだろうが)
ルーナのコメントを見て恭介は心の中でツッコんだ。
それを言葉にしなかったのは、言葉にすることでルーナがニヤニヤしながら余計なことを口にする予感がしたからである。
その一方、麗華はルーナに抗議をしていた。
『ちょっとルーナ、YES/YES枕ってどういうことよ?』
『麗華ちゃんならNOなんて選択肢は要らないでしょ?』
『要らないけどそうじゃないわ。こんな枕がなくたって私は恭介さんにアピールできるもの』
『…エッチですぜ、こいつァ』
恥じらいのない麗華の発言にルーナは一瞬言葉を失ったが、すぐにゲスな笑みを浮かべて余計なことを言った。
(麗華がワイバーンの肉をバクバク食べてたら、それとなくセーブさせることにしよう)
麗華とルーナのやり取りを静かに聞いていた恭介は、夜に麗華が暴走しないように手を打つことに決めた。
それはさておき、報酬の確認を終えた恭介と麗華は瑞穂の格納庫に戻った。
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