第97話 これは良い物だ
格納庫に戻って来た恭介だったが、まだ時間に余裕があったのですぐにレース会場に向かった。
『恭介君、レースもやるの? 午前中に頑張り過ぎじゃない?』
「カオスビーチなら問題ない。そうだろう?」
『うーん、確かに君の実力ならそうだろうね。はい、入場門』
フォルフォルは恭介の言い分に納得して入場門を開いた。
恭介はリュージュを操作し、入場門を通ってカオスビーチに向かう。
新しいコースではなく、カオスビーチに向かったのはデイリークエストを意識してのことだ。
昨日のデイリークエストが初めて走るコースで評価A以上を獲得することだったから、同じ条件が出て来ても良いように今日は一度走ったことのあるカオスビーチを選んだのである。
カオスビーチには既に、アンダーテイカー、スイーパー、キュクロ、ライカンスロープ、ジャックフロスト、モノティガー、ブリキドール、エンジェル、マッドクラウンが順番に並んでいた。
恭介が位置に着けば、レース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1』
「ギフト発動」
恭介がギフトの発動を宣言し、彼はリュージュのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。
『GO!』
ドラキオンがスタートダッシュに成功し、他の9機をスタートから突き放す。
ドラキオン以外は
第3回代理戦争の際、1周目は砂浜に元々配置されていたモンスターがゴーレムの進行を邪魔するだけだった。
ところが、モンスターの数が倍になっているだけでなく、波の勢いが強くて海から色々な障害物が流れて来た。
(空を飛ぶ俺には全く問題ない)
砂浜にいるクラブアーミーがドラキオンに向かって砂を固めた矢を放つが、ドラキオンの動きを捉え切れずに全て外れてしまう。
恭介が2周目に突入した途端、砂浜の下からあちこちに岩がせり上がって来た。
砂浜の上にいたモンスターはせり上がった岩の上にいる個体もいれば、砂浜の上に留まる個体もいた。
前回は岩の上にモンスターは乗らなかったけれど、今回は乗っていて空を飛ぶゴーレムへの攻撃と砂浜を走るゴーレムに頭上から攻撃する役目を与えられているらしい。
もっとも、距離が近づこうと恭介の操縦するドラキオンには攻撃が当たらないため、モンスター達は他のゴーレムへの攻撃に力を割くようになったのだが。
(えっ、この程度で走行不能なの?)
2周目も半周したところで、ジャックフロストとブリキドール、マッドクラウンが大破して動けなくなっているのを見つけ、恭介は彼等の乗るゴーレムが弱過ぎやしないかと思った。
代理戦争で使用されたコースは、通常のレースで走る際にはパワーアップしているけれど、ゴーレムのスペックも上がっているのだから問題ないと考えたのだが、恭介の予想以上に他のゴーレムは弱いようだ。
2周目が終わるまでにコースの至る所で爆発音が響き、海から飛んで来た珊瑚やガラスの瓶、樽等で爆発した地雷に巻き込まれたらしいゴーレムの残骸も見つかった。
結局、恭介が3周目に入った時点で残っているのはエンジェルだけだった。
カオスビーチは3周目に入った途端、更なる変化を遂げて天候が雷雨に変わった。
雷はゴーレムを狙って落ちるけれど、ドラキオンはトップスピードで移動しているから雷がドラキオンに当たることはなかった。
エンジェルはドラキオンとの距離が縮まると、代理戦争の時とは違って逃げずに反転し、装備しているライフルでドラキオンを狙って銃撃を開始する。
「無駄無駄ァ!」
絶好調な恭介が銃撃を全て避けてすれ違った直後、雷がドラキオンの真後ろに落ちた。
偶然、そこには地雷が埋め込まれており、地雷が爆発してエンジェルがその爆発に巻き込まれてしまう。
そうなれば、もう誰も恭介を邪魔する者はいなくなったため、恭介はトップスピードを維持したままゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』
カオスビーチからレース会場前に戻り、それから恭介は
リュージュのコックピットに戻って来た後、レーススコアがモニターに映し出されたので確認し始める。
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レーススコア(ソロプレイ・カオスビーチ)
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走行タイム:20分46秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:0回
他パイロット周回遅れ人数:9人
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×6枚
資源カード(素材)100×6枚
60万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×60
ぶっちぎりボーナス:設計図合成キット
ギフト:
コメント:信じられるかい? これでもコロシアム5連戦した後なんだぜ?
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(信じるも何もそれが事実だ)
レーススコアの確認を終え、恭介は格納庫に帰還した。
リュージュのコックピットから恭介が出て来ると、麗華が笑顔で出迎える。
「お疲れ様。これで第3回代理戦争のコースはコンプリートしたね」
「ありがとう。また設計図合成キットが手に入ったぞ。すぐに使い道は思い浮かばないけど」
「良いなぁ。フォルフォルが恭介さんを依怙贔屓してるとしか思えない当たり具合だね」
『心外だね。私は一切手を加えてないと誓おう。純粋に恭介君の運が良いだけなんだ』
麗華が羨ましさからフォルフォルの仕業ではないかと疑ったが、フォルフォルはすぐにそれを否定するべくモニターに姿を現した。
「フォルフォル、説明ありがとう。帰って良いぞ」
『酷い。私をホストに貢ぐ都合の良いOLみたいに扱うなんて』
「そんなOLは俺の周りにいないから知らん」
『じゃあキャバ嬢に貢ぐ独身貴族童貞サラリーマンでも良いや』
「なんで男性版だとそんな要素モリモリなんだよ。ハウス」
恭介にツッコミを入れてもらえたから、ひとまず満足したのかフォルフォルはモニターから消えた。
何か良いアイテムが出てないかチェックするためである。
○設計図
・ピクシーの設計図 5万ゴールド
・タム・リンの設計図 10万ゴールド
・ユニコーンの設計図 50万ゴールド
・ヨトゥンの設計図 75万ゴールド
・ジャバウォックの設計図 100万ゴールド
○鉱物マテリアル
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○武器
・三叉槍(
・マシンガン(
・ハルバード(
・
○魔石
・4種セット×10 1万ゴールド
・4種セット×50 5万ゴールド
・4種セット×100 10万ゴールド
(
先日手に入れた武器合成キットを使えそうだと判断し、恭介は
「100万ゴールドの武器を即断即決で購入するなんてすごいね」
「麗華だって今は500万ゴールド以上蓄えてるじゃん」
「私の場合はほら、ギフトに使う分もあるから」
麗華の
それを考えるだけで、麗華の目からハイライトが消えてしまった。
恭介は麗華の肩に手を置いて励ます。
「まあまあ。麗華の一撃はいざって時の切り札になるんだから。逆境だって一撃で変えられたらロマンがあるじゃん」
「…いつか恭介さんをロマン砲でメロメロにしてやる」
「頼もしいね。さて、ちょっと武器を合成して来る」
「私も見たい」
恭介が格納庫に戻ると言えば、麗華も興味津々なようでその後に続いた。
武器合成キットを使う対象として、恭介は
(これは良い物だ)
なんとなく試した結果、GBOではまだ誰もゲットしていない武器ができてしまった。
それはナイトメアと呼ばれる武器だった。
ドラキオンのラストリゾートには劣るが、武器の形態が
ギフトなしで3種類の武器を自在に扱えるのは便利だから、恭介は完成したナイトメアに大満足だった。
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