第96話 アンデッドが性欲を持て余す程リュージュは美しいってか
ホームに来て22日目、恭介と麗華は朝食後に各々のゴーレムに乗ってコロシアムに来た。
『早速デイリークエストに挑むんだね?』
「おう。というか、コロシアムで2連戦で初めての相手を倒し、評価A以上を獲得って全然優しくないだろ。俺達はともかく、E国とF国の2人は厳しいと思うんだが」
『ふーん、余裕じゃん。まあ、デイリークエストがヌルゲーだと君達2人が退屈しちゃうでしょ? だから、私は君達が真面目に挑まないとクリアできない難易度に設定したんだ』
「あっそ。まあ、マーリンとムッシュがどうなろうと知ったこっちゃないがな。フォルフォル、マルチプレイを5連戦やる。入場門を開いてくれ」
『はーい』
フォルフォルが開いた入場門を通り、恭介と麗華はコロシアムの中に入った。
中心には赤い牛人と呼ぶべきミノタウロスがおり、その肩には大きなハルバードを担いでいる。
「ブモォォォォォ!」
ミノタウロスは敵が現れたことを知り、威嚇するべく吠えた。
「こいつは慣らしで俺がやる。劣勢にならない限り待機で頼む」
『新ゴーレムお披露目だもんね。了解』
麗華が言った通り、恭介はリュージュに乗らずに別のゴーレムに乗っている。
それはヨトゥンでもなく、昨日ショップチャンネルで手に入れたゴーレムとヨトゥンの設計図を設計図合成キットを合成して手に入れたゴーレムだ。
購入した設計図はベルグリシというゴーレムのもので、75万ゴールドとショップチャンネルで手に入る設計図にしては高めである。
GBOにおいて、ヨトゥンとベルグリシの設計図を合成した場合、9割以上の確率でユミルの設計図が手に入る。
わざわざそのように表現したのは、恭介が設計図合成キットを使った結果が通常とは異なるものだったからだ。
手に入ったゴーレムはナグルファルであり、北欧神話ではラグナロクにおいて死者の爪で造られた船として知られているが、GBOではゴーレムとして登場する。
背中にソードウィングユニットを装備した人型ゴーレムであり、小型飛空艇のように変形することもできる。
装備はヨトゥンに装備させていた
「さあ、始めようか」
次の瞬間、恭介はミノタウロスに急接近して
ミノタウロスは予想以上の速さに慌ててハルバードで身を守った。
両翼の部分は蛇腹剣になっていて、蛇腹剣が両サイドからミノタウロスの角を斬り落とした。
恭介はナグルファルの構成を水属性にしているから、火属性のミノタウロスに対して属性的な相性が良い。
2本の角を斬り落とされたミノタウロスは膝をつき、恭介は隙ができた瞬間を見逃さずに
ミノタウロスの体は光の粒子になって消え、それと入れ替わるようにして黄色い大樹がコロシアムの中心に現れた。
「次はトレントか。麗華、ここからは戦闘に加わってくれ」
『待ってました』
ゴーレムチェンジャーを使い、恭介はナグルファルからリュージュにゴーレムを乗り換えつつ、次は参戦してもらうつもりだったので麗華に声をかけた。
トレントはGBOにおいて土属性であり、火属性で攻撃しても与えられるダメージが増えることはない。
風属性の攻撃が弱点なので、今回は麗華のケルブが活躍するだろう。
だからこそ、麗華も待ってましたなんて言った訳だ。
トレントがゆさゆさ揺れた直後、地中から無数の根が飛び出してリュージュとケルブを襲う。
しかし、リュージュもケルブも空を飛べるから、上空に逃げれば根は届かない。
敵の攻撃が当たらない距離を把握してしまえば、後は一方的に攻撃するだけだ。
「こりゃ的当てだな」
『大きいから目を閉じて手も当てられるわ』
恭介もリュージュを機械竜形態に変形させ、麗華と一緒に攻撃に加わる。
トレントは悪足搔きとして地面から自分を守るように岩壁を創り出したけれど、ケルブとの属性的な相性が悪くてあっさり壁を壊されてしまい、恭介の言う通り的当て状態になった。
ただし、タフだったこともあってとどめを刺すのに5分以上かかってしまった。
3体目のモンスターは青緑色の巨狼の見た目をしたガルムだ。
青緑という体表だが、属性的には風属性に分類される。
「アォォォォォン!」
ガルムが遠吠えしたすぐ後から、風の刃がガルムの周囲に形成されてケルブを襲う。
リュージュは相性が悪いから、先にケルブを倒してしまおうという考えらしい。
『恭介さん、自分の身は自分で守れるから好きに攻撃しちゃって』
「了解」
麗華はケルブを操縦し、風の刃を余裕で躱していく。
ムキになったガルムが麗華に攻撃している隙に、恭介は死角に移動してビームを放ち、ガルムに無視できないダメージを与えた。
『チャンス到来!』
攻撃が止んだのをきっかけとして、麗華も反撃を開始する。
足を中心に麗華が攻撃したことで、素早く動くことはできなくなった。
ガルムの動きが鈍ったのを見て、恭介はリュージュを竜人型に戻して
一度の突きで三度の攻撃が入り、ガルムの顔が派手に散ってその体が音を立てて倒れた。
光になって消えたガルムと入れ替わり、次に現れたのは首のない黒騎士だった。
その黒騎士は右手に大鎌、左手に兜を持っており、霊馬に騎乗していた。
これがGBOにおけるデュラハンである。
デュラハンは無属性のため、相性の良い属性もなければ悪い属性もない。
しかも、騎乗する馬が霊体だから行動範囲は空中も含まれる。
何を思ったか、デュラハンの初手は左手に持った兜をリュージュに投擲することだった。
「ヒ○ダマ豪速球!?」
恭介は飛んで来た兜に対し、
「ごびゅっ!?」
三度の衝撃が兜の中身に突き刺さり、デュラハンの兜が爆散した。
兜が消えたことで胴体と霊馬も消えた。
「えっ、馬鹿なの死んだの?」
『恭介さん、シミュレーターも絶対じゃないんだよ』
「そりゃそうだろうけど、これは予想外だわ」
そんなやり取りをしていると、5体目のモンスターとして骸骨竜が現れた。
『スケリトルドラゴンが~、コロシアムに~、来る~』
「『煩い』」
『あっはい』
余計なことを言ったフォルフォルを早々に消えてもらい、恭介と麗華はスケリトルドラゴンとの戦いに集中する。
「カタカタカタカタカタ」
(声が出ないタイプか。カタカタ煩いな)
ドラゴンなのに骨をカタカタ言わせているだけだから、耳を塞ぎたくなる大音量というより鬱陶しいという感じだ。
無属性なのはデュラハンと同じであり、翼があるから空も飛べる。
恭介はシミュレーターで効果的な作戦を見つけたため、それを実行するべくリュージュを機械竜の姿に変形させた。
その瞬間、スケリトルドラゴンがピクっと反応して腰をカクカクさせ始めた。
(アンデッドが性欲を持て余す程リュージュは美しいってか)
スケリトルドラゴンはリュージュに夢中になり、腰をカクカクさせながらリュージュを追いかける。
作戦通りにスケリトルドラゴンが釣れたため、恭介は麗華が攻撃を当てやすいようにスケリトルドラゴンを誘導する。
『ギフト発動!』
麗華が
10万ゴールドをコストに放ったビームは、頭部と胴体、尻尾を貫いてスケリトルドラゴンを一撃で仕留めてみせた。
スケリトルドラゴンが光の粒子になって消えたことにより、戦闘が終わってコロシアムバトルスコアがそれぞれの見るモニターに表示された。
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コロシアムバトルスコア(マルチプレイ)
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討伐対象:①ミノタウロス②トレント③ガルム
④デュラハン⑤スケリトルドラゴン
部位破壊:①角(左右)②なし③足(全て)/牙(全て)
④兜⑤頭/尻尾
討伐タイム:43分20秒
協調性:◎
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総合評価:S
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報酬:100万ゴールド
資源カード(食料)100×10
資源カード(素材)100×10
ファーストキルボーナス:
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×60
デイリークエストボーナス:50万ゴールド
ギフト:
コメント:スケリトルドラゴンを発情させるとか半端ないねw
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コメント欄に恭介が目を通した時、フォルフォルがニヤニヤした顔で恭介を見ていた。
恭介は払いのけるように手を振り、無言でフォルフォルに消えるよう伝えた。
『ギフトがレベルアップした! 報酬とボーナスで150万ゴールドは大きいね!』
「おめでとう。ギフトを使っても金欠にならないのは良いことだな」
恭介は麗華が嬉しそうに報告したため、優しい笑みを浮かべて反応した。
それから、やるべきことをやり終えたので恭介達は格納庫に戻った。
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