第12章 第4回代理戦争

第111話 やれるからやる。それだけだ

 ホームに来て25日目にして第4回代理戦争前日、恭介は朝からリュージュに乗ってコロシアムに来ていた。


『デイリークエストだね?』


「そうだ。5連戦でやる」


『2連戦で評価A以上って内容なのになんで5連戦するの? 私が言うのもなんだけど代理戦争前日だよね?』


「やれるからやる。それだけだ」


『名言ありがとう! いつでも入場どうぞ!』


 恭介からまた名言が出たと喜びつつ、フォルフォルは入場門を開いてモニターから消えた。


 コロシアムの中に入ると、恭介は上空に緑色のヒッポグリフを見つけた。


「キィィィィィ!」


 ヒッポグリフは色の通り風属性であり、恭介はギフトを使わずそのままナイトメアを銃に変形させて急降下するヒッポグリフに弾丸をしこたま浴びせた。


 火属性は風属性に対して相性が良いから、ヒッポグリフが風を纏って急降下しようとも火属性の弾丸を弾けずダメージを蓄積する。


 ギリギリまで粘ってからリュージュを操作して横に回避すれば、ヒッポグリフは翼も撃ち抜かれていたせいでバランスを崩し、そのまま地面に激突した。


 背後に回ってから、恭介はナイトメアを蛇腹剣に変形させて斬りまくった。


「キェェェェェ!」


「煩い」


 何度も斬られた痛みで絶叫するヒッポグリフに対し、今度はナイトメアを三叉槍に変形させて脳天を突き刺した。


 一方的な戦いでヒッポグリフは力尽き、その体は光になって消えた。


『やだー、ドラキオンを使わなくても圧倒的じゃないですかー』


「ハウス」


 フォルフォルは恭介の塩対応を受け、泣くふりをしながらモニター上から消えた。


 次に現れたのは紫色の大蛇であり、薄い煙を体から放出していた。


「ギフト発動」


 リュージュの役目はヒッポグリフを倒したことで終わったため、恭介がギフトの発動を宣言した。


 それにより、恭介はリュージュのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移動した。


 紫色の大蛇はピュートーンと呼ばれるモンスターで、その体から放出する煙にはゴーレムの機体の耐久度を削る効果があった。


 それゆえ、恭介はラストリゾートをガトリングガンに変形させて連射し始める。


 (絶対に近づけさせない)


 耐久度を削る煙への対策は近づかないことである。


 近づかずに倒すなら銃火器を使う戦法がベストだと考え、それに加えて部位破壊も考えてやりやすさからガトリングガンを選んだ。


「シュロ!?」


 近づいてじわじわとゴーレムを壊していこうと思ったら、それどころか全く近づけないしダメージを一方的に受けている。


 そんな事実に驚かされている内に、全ての牙が折られて目を潰され、鱗もボロボロになった。


「とどめだ」


 ラストリゾートをビームランチャーに変形した後、恭介は弱っているピュートーンにビームを放ってとどめを刺した。


 体が消失していくピュートーンに変わり、本来であればペリュトンがあらわれるはずだった。


 しかし、ペリュトンは一向に姿を見せず、コックピットのモニターにフォルフォルの声が響く。


『サプラァァァァァイズ!』


 サプライズとして現れたのは黒い影だった。


 その黒い影は徐々に山羊頭に鳥の翼を持つ姿へと変わり、悪魔として有名なバフォメットになった。


 バフォメットはドラキオンを見て訊ねる。


「我を呼んだのはお前か」


「呼んでねえ!」


 力強く返答するのと同時に、恭介はビームランチャーでバフォメットを攻撃する。


 それに対し、バフォメットは手を前に出して六芒星の魔法陣を発動した。


 魔法陣がビームに触れた衝撃で激しい土埃が生じ、その少し後で土埃の中から恭介が撃ったのと同じ威力のビームが飛び出した。


 だがちょっと待ってほしい。


 恭介が得体の知れない相手を前に、攻撃した後もずっと同じ場所に留まるだろうか。


 そんな選択は絶対にしない。


 攻撃した直後には移動し始めており、恭介はバフォメットの背後に回り込んでからラストリゾートを蛇腹剣に変形させ、角を狙って横に薙いだ。


 六芒星の魔法陣は胴体を守るサイズだったので、頭部に狙いを定めて物理攻撃を仕掛ければ当たると思ったのである。


 狙いは正しかったようで、バフォメットは自分の背後にドラキオンが移動したことに気づいて振り返った時に左右の角を切断されていた。


「ぬぁぁぁぁぁ!」


 角を失った痛みに絶叫するバフォメットに休みなど与えず、恭介はラストリゾートをモーニングスターに変えてバフォメットの脇腹を殴った。


 とっさに右翼でガードしたバフォメットだったが、そのせいで翼を傷めてしまってバランスを崩し、そのまま地面に倒れた。


「おのれ! よくも我に土をつけてくれたな!」


 バフォメットはすぐに立ち上がり、自分を守るべくドーム状に魔弾を連射し始める。


 遠距離戦が得意なバフォメットだから、ラストリゾートによる物理攻撃を恐れて個のように動いたのだ。


「山羊は地面を歩くだろうが!」


 恭介はラストリゾートをタワーシールドに変形させ、ツッコミを入れながらシールドバッシュを行った。


 バフォメットの魔弾はタワーシールドを突破できず、まともに突撃を喰らって後ろに倒れてしまった。


「サプライズは終わりだ!」


 再びモーニングスターに変わったラストリゾートを振るい、恭介はバフォメットにとどめを刺した。


 バフォメットが力尽きて消えれば、4体目のモンスターが姿を現す。


 そのモンスターとは、100本の腕と50個の頭を持つヘカトンケイルだった。


 GBOにおいて、ヘカトンケイルは全身黄色の超巨大土属性モンスターであり、どの腕にも棍棒が装備された手数で勝負するスタイルだ。


 レース時のゴーレムと同じぐらいの大きさがあるから、コロシアムでサイズが縮むゴーレムにとってはとても大きく見える。


 (集中しろ。やればできる)


 深呼吸した後、恭介はラストリゾートをビームランチャーに変形させてヘカトンケイルに接近する。


「「「…「「ぺちゃんこにしてやる!」」…」」」


 ヘカトンケイルは100本の棍棒を振るってドラキオンを殴ろうとするが、恭介はドラキオンを巧みに動かしてそれらの攻撃を躱しつつ、撃てるタイミングでビームを放つ。


 数の暴力であっけなく勝負がつくと思う者もいるかもしれないが、巨体ゆえにヘカトンケイルの動きは大して速くない。


 ドラキオンのスピードだが、GBOでもトップレベルのものなので恭介が集中さえ切らさなければドラキオンにヘカトンケイルの攻撃は当たらないだろう。


 じわじわとダメージが蓄積され、イライラし始めたヘカトンケイルのスイングが乱暴になる。


 その結果、自分の棍棒同士をぶつけて痺れてしまう手が出て来る始末であり、怯んだ隙を突いて恭介はヘカトンケイルの50個ある頭を狙い、ビームを薙ぐように放つ。


「「「「…「「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」…」」」


 ビームで半分以上の頭が消し飛び、ヘカトンケイルはあまりの痛みに地面を転がる。


「ゴロゴロ転がるな。狙いにくいだろうが」


 そうは言うけれど、恭介は冷静に頭を狙い続けて全て消し飛ばした。


 ヘカトンケイルが光になって消え、遂に5体目のモンスターが現れる。


 真っ赤な大蛇のボディの両端に頭があるそれは、アンフィスバエナと呼ばれる双頭龍だ。


 黒金剛アダマンタイト製のゴーレムだとしても、油断しているとバターのように熔かせるレベルの炎を吐くため、GBOでは非公式の戦いたくないモンスターランキングでも上位5位に入る。


 恭介はラストリゾートをガトリングガンに変形させた後、速さでアンフィスバエナを翻弄する。


「「フィィィバァァァ!」」


 両端の頭が同時に炎を吐くが、恭介はヘカトンケイルを倒して調子が上がっており、たかが2つの頭の攻撃なんて当たらない。


「進んで戦いたいとは思わないが、当たらなければどうということはない!」


 ドラキオンが高速で縦横無尽に飛び回ってガトリングガンを撃ち続ければ、アンフィスバエナはドラキオンを捉え切れないどころか2つの首が絡まってしまう。


「片方貰い!」


 左側の頭に集中攻撃を浴びせた後、大鎌にラストリゾートを変形させて恭介はその首を斬り落とす。


「フィバァ!?」


「もう片方もな!」


 痛みに驚くもう片方の首も大鎌で刈ってしまえば、アンフィスバエナの体は光になって消滅した。


 5連戦が終わり、恭介はドラキオンのモニターに表示されたコロシアムバトルスコアを確認し始める。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①ヒッポグリフ②ピュートーン

     ③バフォメット④ヘカトンケイル

     ⑤アンフィスバエナ

部位破壊:①嘴/翼(左右)②牙×4/目(左右)

     ③角(左右)/翼(右)

     ④頭(全て)⑤頭(左右)

討伐タイム:52分13秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

ファーストキルボーナス:首無大鎌デュラハンデスサイズ

            黒金剛アダマンタイト×100

サプライズ撃破ボーナス:ベースゴーレム

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

デイリークエストボーナス:50万ゴールド

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv20(stay)

コメント:悔しいけど実に見ごたえのあるショーだったよ

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 (少し疲れたな。早く帰って休もう)


 心の中ですらフォルフォルにツッコむのが面倒に思えたので、恭介はギフトを解除して格納庫に帰還した。

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