第309話 戦争を終わらせるには敵を全て滅ぼすしかない。あと一息だよ
変則的なリズムで突き出される黒い柱を避けつつ、恭介と麗華はナイアルラトホテップに反撃する。
その反撃ではナイアルラトホテップの攻撃は止まらず、恭介達を執拗に狙う黒い柱の猛攻が続く。
そこに昇降機を使って沙耶達が合流する。
『兄さん、
「来たか!」
沙耶が瑞穂から発進した
ただでさえ数的不利な状況のナイアルラトホテップは、ここで恭介が更にパワーアップしては困るから、恭介と沙耶が装備の受け渡しをするのを阻止するべく猛攻を仕掛ける。
『やらせないわ!』
恭介と沙耶を攻撃している分、側面ががら空きになったので麗華が全武装を一斉掃射した。
それにより、ナイアルラトホテップが歪な形で固まった。
『やるなら今しかないよね!』
『トゥモロー様の邪魔はさせない!』
晶と明日奈がチャンスだと思って攻撃した時、ナイアルラトホテップの体が急激に膨張して周囲に衝撃波が広がる。
そのせいで2人の攻撃はナイアルラトホテップに当たらず、ナイアルラトホテップは追撃されない内に第三形態へと変形し始めていた。
「待たせたな」
右手にラストリゾート、左手にはラストリゾート形態の
それでも、ナイアルラトホテップは変形に多少のエラーが出ても最後まで変形することを優先し、傷だらけになりながらも第三形態の触手に寄生されたドライザーと呼ぶべき見た目に変形してみせた。
『この姿を他の者に披露するのは初めてだ。存分に味わってくれたまえ』
満足した様子のナイアルラトホテップの声が聞こえた直後、
(目で見えたけど、あの速さに対応できるか? いや、しなきゃ勝てない)
一瞬だけ弱気になりそうだったが、弱気になったら勝てないと思って気持ちを奮い立たせた恭介が意識をナイアルラトホテップの動きに集中させる。
強い気持ちによって周囲の速度が遅く感じられるようになり、次の攻撃は
これにはナイアルラトホテップも素直に驚いていた。
『ほう、これを躱すか。では、最終決戦と洒落込もうか』
「そろそろ終わらせたいのは同感だ」
その直後から、恭介とナイアルラトホテップの高速一騎打ちが始まった。
『一体何が起きてるんです?』
『速過ぎて捉え切れないや』
『トゥモロー様、どこまで行くのですか貴方は…』
2期パイロットと明日奈には恭介とナイアルラトホテップの戦いが目で追えていない。
一方、麗華は辛うじて目で追えているけれど、ナイアルラトホテップを狙撃するには自信がなかった。
誰の助けも期待できない状況だが、恭介はナイアルラトホテップを相手に一歩も引けを取らずに戦っていた。
(奴はドライザーに姿が似てるだけで、専用武装を使えないなら問題ない)
ドライザーは恭介にとって思い入れのあるゴーレムであり、それを触手に寄生させるというのは不愉快なことだったが、不愉快であることよりも先に専用武装が真似されている可能性の方が心配だった。
しかし、ナイアルラトホテップは一度もドライザーの専用武装を使わないから、外見だけドライザーに似せて恭介の動揺を誘っているのだろう。
今は高速で追尾するビームの撃ち合いになっているけれど、恭介はそのスピードに慣れて来た。
『君には興味が尽きないな。どうだい、私と子供を作らないか?』
「断る。どんな思考回路でそうなったかも訊く気はない」
ナイアルラトホテップからすれば、優秀な生物の遺伝子を取り込んで自分の駒にしたいと考えていた訳だが、恭介はどうしてそう考えたか訊くことすら時間の無駄だと考えてばっさりと斬り捨てた。
その時、ナイアルラトホテップに向かって一筋のビームが放たれ、それがナイアルラトホテップの右肩を貫いた。
『私の恭介さんに何言ってんの?』
『面白い』
麗華は狙撃のチャンスを狙っていたが、先程まではなかなかタイミングを掴めずに撃てなかった。
そんな時にナイアルラトホテップが恭介を口説き始めるものだから、怒りによって感覚が研ぎ澄まされて麗華は高速戦闘中のナイアルラトホテップを狙撃することに成功したのだ。
ナイアルラトホテップはまさか恭介以外にも自分にまともなダメージを与えられる者がいるとは思っていなかったから、麗華に対しても興味を示した。
しかしながら、二兎を追う者は一兎をも得ずという諺があるように、ナイアルラトホテップは恭介に致命的な隙を晒してしまった。
恭介は黄色いスイッチを押してドライザーを土属性に変えたら、
最近では、核ミサイル並みの破壊力を想像することも簡単に感じられるようになって来たため、ナイアルラトホテップは不意打ちでそれを喰らって玉座の間を貫通してその身で要塞を真っ二つにした。
更に
『侵攻組の皆さん、おめでとうございます。C207ナイアルラトホテップの生命反応が完全に消失しました。ただし、ドリームランドの中心部から高エネルギー反応が新たに発生しております。速やかに撤収して下さい』
『流石ナイアルラトホテップだよね。ただじゃ死なないって意思を感じるよ。急いで脱出してね。帰るまでがドリームランド侵攻作戦だよ』
ラミアスのアナウンスに続け、ルーナが遠足解散時の教師みたいなことを言った。
(敵地で休みたいとは思わないけど、毎回この手の作戦は忙しないな)
やれやれと首を振りつつ、恭介は他の瑞穂クルーを連れてドリームランドから撤退した。
ショップチャンネルにてワープチケットを購入していたから、恭介達はすぐに瑞穂に帰艦できた。
その直後にドリームランドが爆発し、宇宙から星が1つ消えた。
瑞穂は既にその場から離れてハイパードライブを始めていたため、その爆発に巻き込まれることはなかった。
ドリームランドが崩壊すると同時に、恭介達の乗るゴーレムのコックピットのモニターにはバトルスコアが表示される。
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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)
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出動時間:1時間12分43秒
撃破数:ヤード=サダジ1体
クタニド1体
ノーデンス1体
ナイアルラトホテップ1体
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×20枚
資源カード(素材)100×20枚
200万ゴールド
ファーストキルボーナス:兵装ユニット合成キット
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:戦争を終わらせるには敵を全て滅ぼすしかない。あと一息だよ
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「ルーナ、コメントの口ぶりからしてナイアルラトホテップの欠片から情報を引き出せたんだな?」
『そうだよ。アザトースの現在地がわかったんだ。というか、アザトースはナイアルラトホテップが倒されないと現れないようになってたんだ』
「ナイアルラトホテップ自身がアザトースの存在を隠す結界になってたのか」
『正解。ただ困ったことにね、アザトースは切り離された次元にいるんだ。座標はわかってもそこに移動するための手段を構築中だから、少しだけ時間が欲しいな』
アザトースと1秒でも早く戦いたい訳でもないから、恭介はそれについて急かすつもりはない。
むしろ、アザトースが異次元に存在するならば、安全に行って帰って来れる手段を構築してほしいぐらいだ。
「わかった。ところで、ギフト欄のstayの後に?が付いてるのはなんだ?」
『ナイアルラトホテップとの戦いのせいで、恭介君は時空神の領域に到達しちゃったんだ。と言っても私と比べればまだ雛レベルだけどね。でも大丈夫。幸いにも麗華ちゃんも神の力に目覚めつつある。君達夫婦が寿命の違いで悲しい別れ方をすることはないよ』
「そうか。これから先のことは麗華と話し合うとして、まずは侵攻組を労わないとな」
ルーナとの会話を切り上げ、恭介はギフトを解除してから今回の作戦に参加した瑞穂クルーを労うことにした。
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