第17話 ソファー一番乗りは私だ~!

 タワーを脱出した後、ジャック・オ・ランタンのコックピットのモニター画面にタワー探索スコアが表示される。



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タワー探索スコア(マルチプレイ)

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踏破階層:3階層~4階層

モンスター討伐数:106体

協調性:◎

宝箱発見:〇

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総合評価:S

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報酬:青銅ブロンズ50個

   3万5千ゴールド

   資源カード(食料)5×1

   資源カード(素材)5×1

宝箱発見ボーナス:アップデート無料チケット(待合室パイロットルーム

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv3(stay)

コメント:恭介君のためにもっと宝箱の隠し方にバリエーションを増やすね

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 (余計なことはしないでほしいね)


 モニターに表示されるスコアを一通り見た後、ジト目で現れたフォルフォルに恭介はジト目を向け返した。


 ジト目合戦で先に折れたのはフォルフォルだった。


『安心して良いよ。宝箱探しの難易度は全参加国一律で上げるから』


「一律の対応をするなら難易度はそのままにしといてほしかったんだが」


『そうすると日本だけ毎回宝箱を手に入れそうだからね。他の国は宝箱を見つけられてないところの方が多いから、難しかろうが結果は同じなんだ。これで日本が極端に強くならないんじゃないかな』


 (本当に余計なことをしてくれる)


 恭介は他国と手に汗握る接戦なんて望んでいない。


 安全マージンをきっちり確保した上で戦いたいと思っているから、フォルフォルに余計なことをされて心の中で舌打ちした。


 麗華もスコアの確認を終えたようだったので、恭介達はそれぞれのゴーレムを操縦して転移門ゲート経由で格納庫に戻って来た。


 格納庫で魔石の補充と期待の損耗をチェックし、恭介はコックピットから降りた。


 麗華もほとんど同じタイミングでコックピットから降りて来たため、恭介と共に格納庫から待機室パイロットルームに移動した。


「更科、これを手に入れた」


「おぉ、無料チケットじゃん。5万ゴールド浮くのは大きいね」


「そうだな。折半しても2万5千ゴールドだと更科が支払えなくて泣いちゃうもんな」


「泣かないよ!? それに、もう払えるんだからね!?」


 ちょっと待ってくれと抗議する麗華だが、払えたとしてもその後お金がなくて困るに違いない。


 とりあえず、恭介はチケットを使って待機室パイロットルームのアップデートを行う。


 それにより、無機質で殺風景だった待機室パイロットルームがホテルの談話室のように代わった。


「ソファー一番乗りは私だ~!」


 麗華は大人1人が寝ころべそうなソファーを見つけ、嬉しそうにダイブした。


 恭介は内装と調度品がホテルっぽくなっただけで5万ゴールドもかからないと思い、他に何ができるようになったのか確認した。


 そして、モニターの横にアップデート前はなかったリモコンが設置されていることに気づいた。


 リモコンを手に取って操作していくと、フォルフォルが勝手に映し出した日本を映し出すチャンネルの他に、映画を見るチャンネルやGBOのPVを見られるチャンネル等を見つけた。


 その中でも特に恭介が当たりだと思ったチャンネルはショップチャンネルだった。


『流石は恭介君! 私が説明しなくてもショップチャンネルに気づくとは驚いたよ!』


「そこは驚いてないで説明してくれよ」


『はーい。ショップチャンネルはね、タワーやレース、代理戦争とは違ってお金さえあれば色々なものが買えるチャンネルだよ。チャンネルを表示した状態でリモコンのボタンを操作すれば、アイテムが購入できるんだ』


「貯金しといて正解だったな」


「うぐっ、お金がぁ…」


 ショップチャンネルの説明を聞いて読みが当たったとホッとする恭介に対し、麗華はお金が足りないと嘆いていた。


 対照的な2人を見てフォルフォルはニヤリと笑う。


『ほら、さっきグレムリンボマーを相手に麗華ちゃんも言ってたじゃん。金は力なり。メモしておきなさいってね』


「ぐぬぬ…」


 先程自分が言った言葉をフォルフォルに使われ、麗華は悔しそうに唸った。


 恭介は麗華とフォルフォルのやり取りをスルーし、ショップチャンネルによさげなものがないか探し始めた。


 (アイアンもこの段階で買えるのか。いや、そんなことより設計図だ)


 アイアンをこのタイミングで買えるのは貴重だが、それよりも先にゴーレムの設計図を手に入れる方が先だ。


 設計図の場合、一度手に入る時を逃すと次にいつ手に入れられるかわからないのだ。


 ショップチャンネルは日付が変わるごとにラインナップが変わるから、お金があって欲しい物があるならすぐに買わないと逃してしまう。


 ちなみに、今日購入できる設計図の一覧は以下の通りだ。



 ・エンジェルの設計図 5万ゴールド

 ・ジャックフロストの設計図 5万ゴールド

 ・ザントマンの設計図 5万ゴールド

 ・ケット・シーの設計図 10万ゴールド



 (ザントマンを買おう。ジャック・オ・ランタンよりも扱いやすいし)


 ジャック・オ・ランタンは火炎放射機能と大鎌デスサイズが特徴的なゴーレムだ。


 それに対し、ザントマンは敵対するゴーレムやモンスターの動きを鈍らせる空間を展開し、衝撃吸収機能で攻撃によって生じた衝撃を吸収して自身の燃料に変えられる機能の盾を持つ。


 持久戦になったとしても、盾で吸収した燃料を使って魔石を温存できる。


 火炎放射のような飛び道具はなくても、攻撃はモーニングスターを使うから短距離~中距離攻撃は可能だ。


 恭介はザントマンの設計図を購入し、ついでに所持金に余裕があったのでゴーレム1機分を賄えるアイアンも購入した。


 総額10万円の買い物だったが、それでもグレムリンとの戦闘で感じたデバフの厄介さとジャック・オ・ランタンのコストパフォーマンスの改善を盛り込んだザントマンの設計図は恭介にとって買いだと思えた。


 麗華はエンジェルの設計図を買うか悩んでいた。


 もしもこの設計図を買えば、貯金がまた1万円しかなくなってしまうからだ。


 GBO時代に使っていたヴァルキリーと同様に、エンジェルは翼があるので空を飛べる。


 空を飛べれば地上しか動けない敵に対して有利に戦えるから、麗華の気持ちとしては買いたい気持ちに若干傾いていた。


「更科、エンジェルを買っとけ。空を飛べた方が従来の更科の戦闘スタイルに近づけるだろ? お金なんてタワー探索やレースで貯められるんだから、次にいつ手に入るかわからないチャンスを無駄にするな」


「わかった。買うわ」


 恭介の乗るドラキオンが翼のあるゴーレムであり、空を飛べる有用性をしっかり理解しているから、恭介はエンジェルの設計図を買っておくべきだと判断して麗華を後押しした。


 麗華は鉄まで買う余裕がなかったので、ショップチャンネルの利用はそこまでにして2人は格納庫に戻った。


 恭介も麗華も各々のゴーレムのコックピットに乗り込み、カード状の設計図を差し替える。


 恭介は青銅ブロンズからアイアンに構成マテリアルを変え、カボチャ頭の墓守姿から三日月頭の騎士に姿が変わった。


 赤い魔石を使っているから、カラーリングは赤く染まっており、モーニングスターと盾を持つ赤い三日月頭の騎士風ゴーレムの姿は敵の返り血を浴びているのではないかと思わせる雰囲気があった。


 麗華のゴーレムはザ〇っぽい見た目から機械天使と呼ぶべき見た目へと変わった。


 元々装備していたのはライフル1丁だったが、ゴーレムを変更したことで装備は2丁の銃に変わった。


 両者とも調整を終えてゴーレムから降りた後、忘れない内に午後手に入れた資源カードを待機室パイロットルームのカードリーダーに挿入した。


「さて、夕食まで自由時間にしよう。このままここで映画を見ても良いし、風呂に入るのも自由だ」


「了解。夕食は19時ぐらいでも良い? 流石に昨日と同じ時間だとお腹空いちゃうから」


「19時で構わない。まだ2時間以上あることだし、有意義に使ってくれ」


「そうする。じゃあ、また後でね」


 恭介も麗華も待機室パイロットルームには残らず、お互いの私室に入っていった。


 それぞれ時間を有意義に使い、夕食の時に集まってからは雑談や明日の予定について話した。


 今のところ順調に事が進んでいるため、恭介も麗華も枕を高くして寝られた。

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