第42話 爆発は芸術だ!
恭介に見送られ、麗華は自分だってやってやるんだと気合を入れてレース会場にやって来た。
『大丈夫? 正直、麗華ちゃんにリッジハイウェイはまだ早いと思うんだけど』
「フォルフォルが私の心配をするなんて珍しいわね」
『私はね、君に
「言い換えれば代理戦争で死ねってことよね? 最っ低」
言外に代理戦争で自分に死んでほしいというフォルフォルの発言を受け、麗華はコックピットのモニターに映るフォルフォルに凍てついた眼差しを向ける。
『許して麗華ちゃん。デスゲームの運営として、私は何よりも代理戦争が盛り上がるのを優先しなくちゃならないんだ』
「そんなの私に関係ないでしょ。さっさと入場門を開きなさい」
『はーい』
フォルフォルは麗華の言うことにおとなしく従い、入場門をを開いてモニターから消えた。
(まったく、なんなのよもう)
麗華はフォルフォルに自分が見世物扱いされていると改めて思い知り、不快な気分になりながら入場門を通ってリッジハイウェイに移動した。
入場門を通って移動した先には、ブラストキャリッジ4機とプリンシパリティ3機が交互に並んでおり、レース開始の合図を待っていた。
麗華の乗るプリンシパリティがスタート位置で待機状態になった瞬間、レース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1,GO!』
スタートの合図が聞こえた瞬間、麗華の目の前で事故が起きた。
3位と7位のブラストキャリッジがスタートダッシュに失敗して爆発したのである。
間に挟まれていた5位のブラストキャリッジが爆発に巻き込まれ、ブラストキャリッジ3機が開始と同時に爆発する滅多にない事態が起きた。
その爆発に巻き込まれ、4位と6位のプリンシパリティが跡形もなく吹き飛ばされてしまった。
1位のブラストキャリッジはスタートダッシュに成功しており、2位のプリンシパリティもその爆風を利用してスタートダッシュを成功させた。
その一方、麗華は昨日シミュレーターで何度もリッジハイウェイの予習を行っていたから、ブラストキャリッジがスタートダッシュに失敗することを想定できていた。
だからこそ、スタートダッシュと同時に斜め上方向に飛んでいたため、その爆風を利用して普通のスタートダッシュよりも最初から加速できた。
ただし、想定よりも爆発の規模が大きかったこともあり、麗華の乗るプリンシパリティは爆発を完全に回避できたとは言えなかった。
「あぁ、もう! なんでこんなに爆発するのよ!」
3位から7位までの5機が爆散してしまい、麗華はビリだけど3位という順位で1位と2位を追いかけながら怒る。
『爆発は芸術だ!』
「逆でしょ! 気が散るから黙ってて!」
『はーい』
イラついていても麗華にツッコんでもらえたため、フォルフォルは静かにモニターから消えた。
スピードを維持し続け、ショートカットできるカーブはコースを無視して飛ぶことで麗華は2位のブラストキャリッジとの距離をどんどん縮めていく。
陸を走るしかないブラストキャリッジは、割と序盤で別のプリンシパリティに抜かれており、今は麗華にそろそろ追いつかれそうな所にいた。
ブラストキャリッジはつい先程まで1位のプリンシパリティに向かって銃撃戦を行っていたが、麗華が後ろから来たことに気づくとターゲットを麗華に変えた。
順位を上げたい気持ちはあるが、このまま放置しておけば麗華に抜かれてしまうとわかったからである。
側面と天井に設置されたマシンガンの弾幕で近づけないようにしているが、麗華は道をショートカットするからあっという間に追い抜いてしまった。
「今までガンガン撃ってくれたお礼よ」
後ろ手に
それによって生じた爆風で加速し、麗華の乗るプリンシパリティと1位のプリンシパリティの距離が縮まる。
「ここから先は銃撃祭りね」
麗華の言った通りで、
2機の違いと言えば、麗華のプリンシパリティは
ただし、スタートダッシュ時のブラストキャリッジ3機分の爆発により、爆散したゴーレムの破片でボディが傷ついたという点では麗華のプリンシパリティの方が状態はよろしくない。
爆風による加速も段々と通常のトップスピードに戻って来たため、一定の距離のまま麗華は1位のプリンシパリティ目掛けて銃撃を開始する。
普通のプリンシパリティは十字架を模った剣を武器とするから、麗華の遠距離攻撃を避け続けるしかない。
剣を振ったところで麗華には当たらないし、仮に当たる状態ならばそれだけ追いつかれてしまっているということになってしまうのだ。
麗華の銃撃は避けるか剣で防がれてしまい、2周目に入ってもまだ2機の間にある距離はほとんど変わらない。
それでも、銃撃を躱すために動いている分だけ1位のプリンシパリティにロスが生じており、少しずつではあるが着実に2機の距離は縮まっていた。
距離が近づけば近づく程、1位のプリンシパリティは大きく避けなくてはいけない。
3周目に突入した頃には剣が届く範囲まであと少しだったこともあり、前にいたプリンシパリティが向きを反転して麗華に接近戦を仕掛けて来た。
「ふーん、そっちがその気ならやってやるわ」
剣を構えて接近するプリンシパリティに対し、麗華は距離を取らずにこちらも接近しながら
ただし、左手で持っている方はノータイムで連射し、右手で持っている方は敵が隙を作るために発射する間隔をずらしている。
その不規則性が目の前のプリンシパリティに隙を生じさせ、麗華はその右翼を撃ち抜くことに成功した。
バランスを崩したプリンシパリティに対し、コックピットを撃ち抜いて戦いを終わらせた。
『翼の折れたプリン』
「言わせないわよ」
フォルフォルが気に入ったネタを言い終わる前にインターセプトし、麗華はそのまま誰にも邪魔されずにゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は傭兵アイドル、福神漬け&プリンシパリティだぁぁぁぁぁ!』
「ふぅ、割とギリギリだったわね」
昨日のレースと比べて余裕がなかったから、麗華はレースが終わったことにホッとしていた。
コースから離れて退場すると、レース会場前でコックピットのモニターに映ったレーススコアを確認する。
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レーススコア(ソロプレイ・リッジハイウェイ)
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走行タイム:26分51秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:167回
他パイロット周回遅れ人数:6人
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総合評価:A
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報酬:資源カード(食料)100×1枚
資源カード(食料)50×1枚
資源カード(素材)100×1枚
資源カード(素材)50×1枚
15万ゴールド
戦闘勝利ボーナス:魔石4種セット×15
全滅ボーナス:
ギフト:
コメント:恭介君とは対極的で野蛮なレースだよね(´艸`*)
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「何こいつめっちゃムカつく!」
『野蛮な女の子は恭介君に嫌われちゃうかもよ?』
「だ ま れ」
『あっはい』
最近のフォルフォルだが、麗華を揶揄ってもすぐに麗華の怒気を感じてモニターから消える。
余計なことを言って怒らせるぐらいなら、最初から言わなけば良いのに言ってしまうのはフォルフォルがフォルフォルだからなのだろう。
フォルフォルが消えて冷静になり、麗華はふと自分が恭介に野蛮な女性だと思われているのか心配になった。
ヒャッハーとか世紀末全開な感じの声は出していないから、野蛮ではないはずと思ったものの、恭介は今までずっと非殺生ボーナスを貰い続けている。
だとすれば、全滅ボーナスを貰う自分は野蛮な印象を抱かれてしまうかもと不安になり、麗華は帰ってみたら恭介に自分がどんな風に見えているか訊ねることを決めた。
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