第12話 ガンガン行こうぜ
麗華がベーススナイパーをキュクロに変更している間に、恭介は
その直後にモニターにフォルフォルが現れた。
『やるねぇ。これで日本にまとまった資源が送られたよ』
画面が半分に割れ、国会議事堂前にカードの通りの大量の資源が積み上がった状態で出現する映像が映し出された。
大量の資源が現れたのを見つけ、自衛隊がわらわらと群がってその資源の回収をし始めるのが画面の半分に映る。
『甘い物を地面に落とした時、蟻ってあんな感じで集まるよね』
「例え方が酷いな。悪意100%じゃん」
『だってさぁ、この事態において何もできない連中が
フォルフォルの言い分は寄生を良く思わない口ぶりだった。
恭介もその考えを否定はできないけれど、肯定もできないので何も答えずに格納庫に戻った。
その時には既にキュクロが完成しており、風属性だからカラーリングは緑色になっていた。
麗華がコックピットを開いて顔を出したところで格納庫のモニターの電源が入り、麗華のキュクロを見てニヤリと笑う。
『どう見てもザ〇です。ありがとうございました』
『〇クとは違うのよ、ザ〇とは!」
麗華はフォルフォルのノリにうっかり乗ってしまった。
そんな麗華とフォルフォルをスルーして、恭介はライカンスロープに搭乗する
「更科、そろそろタワーに行くぞ。さっさとシートに戻れ」
「わかった」
恭介がコックピットを閉めるのを見て、麗華もその後に続いた。
ライカンスロープとキュクロが起動し、
タワーはプラクティスタワーと異なり、頂上が見えない石作りの塔だ。
その中に入ってみると、ライカンスロープもキュクロもサイズが人間大まで小さくなるのはGBOと同様である。
「さて、行けるところまで行くか」
『うん。背中は任せてくれて良いから』
それがわかっているので恭介は頷いた。
「わかった。じゃあ、俺が前衛で更科が後衛のフォーメンションで進むぞ」
『了解』
恭介達がフォーメーションを組んでタワーの探索を開始すると、早速それを邪魔しようとスライム5体が現れる。
5体は色が赤と青、黄、緑と透明の5種類おり、色付きは属性ありで透明は無属性のようだ。
「さっきのレースじゃ風圧で吹き飛ばしたけど、今度はそうもいかないな」
レースの時はモンスターを倒してドロップアイテムを回収するよりも、非殺生ボーナスの方が実入りは良いだろうと考えてまともな攻撃をしなかった。
しかし、今回はレースのようにタイム最優先ではないから、モンスターを倒して資源を確保することが優先される。
恭介は銃剣を背中に固定して、ライカンスロープを四足歩行の体勢に変える。
四足歩行のライカンスロープは二足歩行の時よりも素早く動けるから、すれ違いざまにスライム2体を鉤爪で切り裂く。
味方が倒されて怯んだ残り3体は、麗華が一発ライフルで撃って仕留めた。
恭介がライカンスロープで通り過ぎる時に残り3体の位置を誘導したため、麗華は一発だけでまとめて倒せたのだ。
「ガンガン行こうぜ」
『明日葉さんのフォローのおかげね。ガンガン行きましょう』
麗華は恭介のおかげで無駄弾を撃たなくて済んだから、恭介の動きに感心した。
彼女はマルチプレイで様々なパイロットと組んで来たが、恭介がソロプレイばかりしていたとは思えないぐらい今まで組んだ中でも上位に入る動きだったと判断している。
ドロップアイテムはコックピットのサイドポケットに転送されるから、恭介と麗華はそのまま前へ進む。
少し進んだ所で再びスライムが現れたが、今度はその数が倍の10体だった。
「タワーの1階層ってこんなに
『私の知ってる限り異常よ。多分、デスゲーム仕様じゃないかしら?』
『正 解 で す ☆』
突然、フォルフォルが2人のゴーレムのコックピットのモニターに現れ、横にピースした決めポーズを披露した。
それにイラっと来た2人だが、グッと堪えて先程と同じように恭介からスライム達に接近していく。
今度はすれ違いざまに6体切り裂き、麗華が連続して弾を撃って残り4体を2体ずつ倒した。
「おいおい、冗談だろ?」
『群れなんてちゃちなもんじゃないわ。あれは波よ』
スライム10体を倒したと思ったら、今度は大量のスライムが集まって波を作りながら押し寄せる。
「更科、先に何発か撃って数を減らしてくれ」
『任せて!』
大量のスライムが固まっているならば、一発の銃弾でもまとめて何体も撃ち抜ける。
それゆえ、麗華が六連射したら通路の先が見えるようになっており、そのタイミングで恭介も背中に固定した銃剣で弾を発射しながら突撃し、鉤爪でどんどんスライムの数を減らしていった。
稼いだヘイトは麗華の方が最初は多かったけれど、時間を経過するごとに恭介の稼ぐヘイトが増していく。
麗華はフレンドリーファイアを防ぐべく、恭介がスライム達に接近戦を挑んだ瞬間から攻撃を中断して待機していた。
恭介が困った時にいつでも次弾を発射できるようにしていたが、結局恭介が全て倒してしまった。
これにはフォルフォルが不満そうに2機のコックピットのモニターに現れる。
『あるぇぇぇ? もうちょっと苦戦しないのー? もっと苦戦しようよー』
「『断る』」
恭介と麗華の反応がシンクロし、フォルフォルはリアクションの方向性を変えた。
『なんだいなんだい? 恭介君も麗華ちゃんも息ぴったりじゃーん。くっつくの? くっつくの?』
ニヤニヤした顔になったフォルフォルに麗華が反応しそうになったから、彼女が何か言う前に恭介が口を開く。
「乗るなよ更科。ここで乗ったらフォルフォルが喜ぶだけだ」
『…わかった』
麗華は通信越しに深呼吸しているのが明らかだった。
それでも、気持ちを落ち着かせられたのなら十分である。
スライムウェーブとも呼ぶべき戦いが終わり、恭介と麗華のコックピットのサイドポケットは各種魔石や資源カードが目録として出て来た。
それらをしまい、先へ進んでいると麗華が声を上げる。
『明日葉さん、あそこを見て下さい』
壁の床に触れているはずの部分から、スライムがにょーんと現れたのだ。
「俺が切り裂く」
スライムを素早く倒した後、恭介はライカンスロープでスライムが出て来た壁を試しにノックしてみる。
その結果、ノックしようとした手が壁をすり抜けていく。
隠し通路だとわかれば、恭介と麗華はそこに入るのを躊躇わない。
通路はすぐに終わり、宝箱でもあるのかと隠し部屋に到着した2人を待っていたのは魔法陣とその中心には
「ブロンズスライムって隠し部屋にいるんだな。稀に出て来るだけだと思ってたんだが」
『ここって隠し部屋じゃなくてスライムがスポーンする場所だっただけ?』
麗華が首を傾げたところで口元に手をやるフォルフォルがモニターに現れる。
『ピンポーン。宝箱のある隠し部屋だと思った? ざぁんねぇぇぇん! スポーンルームでしたぁぁぁ!』
『なんなのよもう!』
モニターを殴りたい衝動を発散するべく、麗華はブロンズスライム目掛けて怒りの一撃を放った。
当たり所が悪かったらしく、ブロンズスライムは撃ち抜かれてすぐに倒れた。
ブロンズスライムが倒されるのと入れ替わるようにして、大量のスライムが魔法陣の上に現れた。
『鬱陶しいわね!』
麗華が苛立ったままライフルで連射し、大量に現れたスライムも残り5体まで減った。
「俺も仕事するか」
恭介はライカンスロープの鉤爪で5体のスライムを次々に倒した。
魔法陣を消したかったところだけれど、残念ながら簡単には消せないようになっていた。
それならこの場にずっと留まる意味もないので、恭介達はスポーンルームから出て2階層に続く昇降機を探した。
昇降機はそれから5分程度で見つかったが、その前に体の大きなスライムが陣取っていた。
「ジャイアントスライム、邪魔だ退け!」
恭介は早く2階層に上がりたかったので、銃剣の弾丸を撃ちながら接近した。
ジャイアントスライムが銃撃で凹んだのを確認してから、素早く距離を詰めて鉤爪でジャイアントスライムの核を切断してみせた。
これで昇降機前に敵はいなくなったため、恭介と麗華はそれぞれのゴーレムを操縦して昇降機の中に入る。
スポーンルームから来たであろうスライムの集団が迫っていたが、昇降機が動き始めて恭介達は1階層から2階層に移動してそれらとわざわざ戦わずに済んだ。
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