第158話 欲しい物は自分の力で勝ち取ってこそだよね

 瑞穂に戻って来た恭介は、ブリザードルインズで手に入れた拒絶盾リジェクトシールドをナグルファルが装備しているグレートブルーと合成し始めた。


 武器合成キットを使ったことにより、グレートブルーの装飾が豪華になった青い十字剣が完成した。


 (レジェンドブルー。大剣とトンファー、盾になる武器か。良いじゃないか)


 レジェンドブルーはグレートブルーの上位互換であり、今までの機能に加えて実弾とビームに耐えられる盾に変形できるようになった。


 ナグルファルにはソードウィングがあるので、正面を盾形態にしたレジェンドブルーで守り、ソードウィングで反撃する攻防一体の動きもできるようになった訳だ。


「良いなぁ。私もそろそろ切替竜銃スイッチドラガンより強い武器が欲しい」


「レースで手に入るかもしれないぞ。頑張れ」


「欲しい物は自分の力で勝ち取ってこそだよね。頑張る」


「その意気だ」


 恭介に見送られ、麗華はに乗ってレース会場に向かった。


 レース会場に麗華が到着したら、フォルフォルがソロモンのモニターに現れる。


『欲しい物は自分の力で勝ち取ってこそだよね。頑張る(キリッ)』


「黙ってスタンピードボルケーノに繋がる入場門を開きなさい」


『はーい』


 フォルフォルが自分の真似をするのが不快だったため、麗華はフォルフォルにさっさと入場門を開けと指示した。


 フォルフォルもこれ以上揶揄うと不味いと判断し、入場門を開いてモニターから姿を消した。


 麗華がソロモンを操縦してスタンピードボルケーノに移動してみれば、既に7機のゴーレムが位置に着いていた。


 1位の位置に水属性のケルブ。


 2位の位置に火属性のサイバードレイク。


 3位の位置に風属性のアシュラ。


 4位の位置に風属性のベルグリシ。


 5位の位置に土属性のサイバードレイク。


 6位の位置に水属性のアシュラ。


 7位の位置に火属性のベルグリシ。


 8位の位置に麗華のソロモンが着いたら、レース開始のカウントダウンが始まる。


『3,2,1,GO!』


 ソロモンのスペックは他の7機よりも高かったため、スタートダッシュで1位になることができた。


 スタンピードボルケーノは火山の麓からスタートし、レース開始と共に3種類のモンスターが大量に押し寄せて来る仕様になっている。


 その3種類のモンスターとは、パイロリザードとマグマイマイ、トーチホークだ。


 パイロリザードの群れが一気に動くことにより、ドドドドっと大きな音がコース内に鳴り響く。


 山登りするゴーレムを吹き飛ばしてやると言わんばかりの数であり、陸を進むアシュラとベルグリシにとっては厄介だと言えよう。


 マグマイマイはパイロリザードの群れに置いていかれてしまい、コースのあちこちに殻に籠った状態で居座っている。


 ゴーレムが近くに来た時に殻から飛び出し、走行の邪魔をするのがマグマイマイの役割だ。


 トーチホークは空を飛べるゴーレム対策として配置されていて、数の暴力でゴーレムを撃墜する役割を担っている。


 だが、トップスピードで飛ぶソロモンには近寄れないようで、コース上空ではモーゼが海を割ったようにトーチホークの群れを割ってルートを確保している。


 スタンピードボルケーノのモンスター達は、共通して自分を抜き去ったゴーレムの邪魔をしない。


 それゆえ、麗華はとにかくトップスピードを維持してモンスター達を抜き去り、そのモンスター達を利用して後ろに続くゴーレム達の進路妨害を狙う作戦なのだ。


 これは恭介がスタンピードボルケーノで使った戦法であり、その有用性はシミュレーターで把握済みである。


 戦闘音が後方から聞こえていたが、先に進むにつれてその音がどんどん小さくなっていき、火山の中腹に来ればモンスター達の姿が見えなくなる。


 モンスターが現れなくなった代わりに、コースのあちこちから溶岩柱が噴き出して麗華の行く手を阻む。


 (うわっ、タイミングが悪いわね)


 麗華がムッとするのも仕方のないことだ。


 何故なら、前方では溶岩柱がずらっと横並びに吹き出しており、何処にも抜け穴が存在しなかったからである。


 このまま進めば溶岩柱に突っ込むことになってしまうから、麗華はソロモンの一対の翼の銃からビームを放ち、ソロモンが通り抜けられる穴をこじ開けてそこを通過した。


『麗華ちゃんがレースで武器を使っても珍しくないから、恭介君が使った時程の興奮はないね』


「レースの邪魔だから黙ってなさい」


『はーい』


 フォルフォルの言う通り、恭介はレースで武器を使うことがほとんどない。


 だからこそ、フォルフォルも恭介に武器を使わせてやったぜとテンションが上がるのだが、麗華が武器を使う頻度は少なくないからあまり盛り上がらないようだ。


 抜け穴を用意しない横一列の溶岩柱は山頂までに3つ出現し、残り2つもタイミングが悪かったせいで麗華は一対の翼の銃で強引に突破した。


 山頂には火口があり、そこに飛び込むことで山の麓まで一気に降りる仕様になっている。


 しかし、火口に飛び込む際に注意すべきは一定間隔で噴火することだ。


 火口の途中に横穴があり、その横穴を通ることで麓のスタート地点に戻れる。


 火山の噴火は1位のゴーレムが山頂に到着してから始まり、ソロモンのトップスピードだと噴火が始まるギリギリ前で横穴に辿り着けた。


 (火口から飛び降りる時だけブリュンヒルデに変わった方が良いのかしら?)


 スタンピードボルケーノを風属性のブリュンヒルデで挑むのはリスクがあると思ったから、今日はわざわざ水属性のソロモンに乗っている。


 それでも、スピードが重要なポイントだけゴーレムチェンジャーを使って乗り換えるのもありかもしれないと麗華は考えた。


 使うかどうかは2周目の火口に飛び込む時に決めることにして、麗華は2周目に突入する。


 麗華の目の前はパイロリザードの群れで覆われており、自分が空を飛べるゴーレムに乗っていて良かったと思う程だった。


 陸を走るゴーレムがこのコースに挑むなら、間違いなくパイロリザードの群れとの戦闘でなかなか先に進めないだろう。


 スタンピードボルケーノでは、1位のゴーレムが2周目と3周目に突入することでコースに現れるモンスターの種類が増えていく。


 2周目では新たにヒートエイプが出現し、落ちている石を投げたり火の玉を飛ばして邪魔をするようになる。


 麗華はそれらを無視して進み、8位と7位のベルグリシを2つ目の溶岩柱で追い抜いた。


 3つ目の溶岩柱の地点では、突破に失敗した6位のサイバードレイクの残骸を見つけ、その少し先で5位のアシュラを抜かした。


 山頂に到着したところで、火口付近には熔けたアシュラの残骸が転がっていた。


 おそらくタイミングを誤り、噴火しているところに突っ込んでしまった結果、打ち上げられて火口付近に残骸が落ちたのだろう。


 どのタイミングで噴火が起きたのかわからなかったため、麗華はゴーレムチェンジャーを使ってブリュンヒルデに乗り換えてから火口に飛び込んだ。


 その考えは正しく、ブリュンヒルデが横穴に到着した時に噴火が起きた。


 (危なかった…)


 ソロモンのまま飛び込んでいたとしたら、火口付近のアシュラと同じ運命を辿ってはずだ。


 再びゴーレムチェンジャーでソロモンに乗り換え、麗華は3周目に突入する。


 今度は口から強酸性の液体や火の針を吐くパイロコブラが現れたが、空を飛ぶソロモンには当たらない。


 1つ目の溶岩柱の地点に到着した時、麗華は3位のサイバードレイクの上半身と下半身に分かれて地面に落ちていることに気づいた。


 (タイミング悪く溶岩柱が腹部に命中したようね。ご愁傷様)


 2つ目と3つ目の溶岩柱も運良く噴き出しておらず通過できて、山頂に到着したタイミングで麗華はケルブを捕捉した。


 麗華がケルブを捕捉したのと同様に、ケルブも麗華の乗るソロモンの接近を捕捉していた。


 それで焦ったケルブが火口に飛び込み、その直後に噴火が起きてしまった。


 ケルブの三対の翼からの銃撃だけでは噴火はどうにもならず、噴火が収まった時にはケルブの残骸があちこちに降って来た。


 それをぼーっと見ていると先に進めなくなるので、麗華は再びゴーレムチェンジャーでブリュンヒルデに乗り換え、無事に横穴まで辿り着いてそのままゴールした。


『ゴォォォル! 優勝は傭兵アイドル、福神漬け&ブリュンヒルデだぁぁぁぁぁ!』


 長居しても仕方ないから、麗華は脱出してレース会場前に移動した。


 それから、モニターに映し出されたレーススコアをチェックし始める。



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レーススコア(ソロプレイ・スタンピードボルケーノ)

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走行タイム:44分39秒

障害物接触数:0回

モンスター接触数:0回

攻撃回数:5回

他パイロット周回遅れ人数:7人

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×5枚

   資源カード(素材)100×5枚

   50万ゴールド

非殺生ボーナス:魔石4種セット×50

ぶっちぎりボーナス:リペアチケット

デイリークエストボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:金力変換マネーイズパワーLv19(stay)

コメント:物欲センサーが発動しちゃったねm9(^Д^)プギャー

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 (フォルフォルマジ最低)


 不快な気持ちになったため、麗華は瑞穂に帰ってから滅茶苦茶恭介に甘えた。

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