第55話 ゲスフォル最低かよ
恭介がイベントエリアに戻って来ると、そこは麗華のヴァーチャーの隣だった。
『恭介さん、お疲れ様。リュージュのデフォルトの姿だけで勝てたね』
「ただいま。他が想定よりも大したことなかったから楽ができたよ」
他国のパイロット達が聞いたらブチギレ待ったなしの発言だが、それは誰も否定できない事実でもある。
武器を使った攻撃をせず、機械竜の姿に変形もせずにレースに参戦していたのだから、恭介が追い詰められたとはとてもではないが言えないだろう。
恭介と麗華が喋っていると、ゴールしたパイロットのゴーレムがぼちぼちイベントエリアに戻って来た。
帰還可能なゴーレム全てが帰還したことを確認し、ホログラムのフォルフォルが喋り始める。
『いやぁ、スリリングで見応えのあるレースだったね。早速全体向けの結果を発表するよ』
フォルフォルがコメントした直後、恭介達のコックピットのモニターに個人向けレーススコアとは別の画面が表示される。
-----------------------------------------
レーススコア(第2回代理戦争・ストームタワー)
-----------------------------------------
1位:トゥモロー(日本/リュージュ/26分53秒)
2位:ワイルドレディ(A国/パワー/30分37秒)
3位:マーリン(E国/ケット・シー/30分46秒)
4位:ムッシュ(F国/メビィ/30分51秒)
5位:海王(C国/ラセツ/32分29秒)
6位:アマゾネス(BR国/アラクネ/37分18秒/中破)
7位:クレオパトラ(EG国/スフィンクス/40分4秒/小破)
8位:ベルリナー・ヴァイセ(D国/リャナンシー/記録なし/死亡)
9位:カーリー(IN国/イフリート/記録なし/死亡)
10位:チェルノボーグ(R国/ブラストキャリッジ/記録なし/死亡)
-----------------------------------------
備考:ベルリナー・ヴァイセの財産は海王に譲渡済
カーリーとチェルノボーグは討ち取られてないから物的財産は没収済
-----------------------------------------
(5位の海王がベルリナー・ヴァイセを殺したのか)
全体向けのレーススコアを見て、恭介はC国の海王が自分のゴールした後に動けなくなったD国のベルリナー・ヴァイセを容赦なく仕留めたのだと悟った。
自分達がやっていたのはただのレースではなく、代理戦争であることが備考欄に書かれた内容で各国のパイロット達に改めて思い知らせた。
D国とIN国とR国は先程のレースにより、新たにまとまった資源を得る手段が失われて緩やかに滅ぶしかなくなった。
『今日以降、D国とIN国とR国では国民同士の資源の奪い合いが始まるかもしれないね。私、この3ヶ国がどんな風になるのか考えるだけでワクワクして来ちゃったよ」
「ゲスフォル最低かよ」
『ちょっとちょっと! なんでみんな私のことをゲスフォルって呼ぶときだけ意思が統一されてるのさ! 一体私のどこがゲスだって言うんだい!?』
恭介がゲスフォルと口にした時、他のパイロット達もフォルフォルをゲスフォルと呼んでいたようだ。
異議ありと訴えるフォルフォルだが、その顔がゲス顔なのだからそう言われても当然だろう。
「顔がゲスだろ」
『まったくもう! 私の顔の何処がゲスだって!? もうレース部門はここまで! 次は待機してた日本の福神漬けも出番のバトル部門だよ!』
イベントエリアに集まったパイロットから顔がゲスだという声が集まり、話題を変えないと話が進まないと判断したらしく、フォルフォルが進行を再開した。
『今回のバトルのテーマもサイコロを振って決めるよ』
フォルフォルが指パッチンしたら24面ダイスが突然現れ、それを放るのと同時にフォルフォルが歌い出す。
『何が出るかな♪ 何が出るかな♪』
お決まりのネタの後で24面ダイスが止まった時、その面に記されていた文字はコロニーフォールだった。
『テーマ決定! コロニーフォールだよ! やったね!』
コロニーフォールのルールがそれぞれのコックピットのモニターに映し出される。
・戦場は落下する小惑星でパイロット達の共通ミッションはその破壊
・その小惑星が大気圏に突入するまでの2時間で規定ラインまで砕けないと失敗
・失敗した場合は全員報酬を貰えない
・小惑星には破壊を邪魔を妨害しようとするモンスターが出現する
・モンスターはタワー6~10階層に出たもののみでイベント専用アイテムを落とす
・スタート位置はバラバラで国別にまとまることはない
・味方は同じで他国のパイロットは色違い、モンスターは色も形も違うアイコン
・ゴーレムのサイズはタワー探索時と同じ
全てのパイロットが8つのルールを確認したところで、全ゴーレムの足元に魔法陣が現れる。
『いってらっしゃーい』
フォルフォルの声が聞こえた後、イベントエリアが光に包み込まれた。
光が収まって恭介が目にしたのは、戦争で滅ぼされて廃棄された
宇宙空間にいるせいで無重力の状態にあるから、今は通常ならば空を飛べないゴーレムも宙に浮いていることだろう。
『コロニーフォール、始め!』
フォルフォルの宣言と同時に、リュージュのモニターの右上に大気圏突入までの時間がカウントダウン形式で表示される。
メイン部分にはミッション進捗率とマップ、複数のアイコンが映し出されており、必要な情報は全てモニターに出ていた。
中心にある白三角アイコンが自分であり、恭介は
また、黒丸アイコンのモンスターの群れが押し寄せて来たことを知り、恭介は臨戦態勢に移行する。
現れたモンスターはレッドキャップジェネラル率いるレッドキャップの群れだった。
コックピットのサイドポケットには、早速イベント専用アイテムが描かれたカードが転送されて来た。
(爆弾は4つ。イベント専用アイテムのドロップ率は100%じゃないのか。使うなら効率良く使わないとな)
恭介が倒した敵は10体いて、その内爆弾をドロップしたのは4体だけだ。
ただし、レッドキャップジェネラルは通常のレッドキャップがドロップした爆弾よりも威力のありそうな爆弾をドロップした。
タワーでは昇降機を守るモンスターを倒せば、イベント専用アイテムを確実に落とし、そうでない
そうであるならば、イベント専用アイテムは貴重だから有効に使わねばなるまい。
恭介は1つだけ爆弾を具現化して、穴の開いた地面にそれを放り込んでみた。
ドカンと音を立てた爆弾が爆発し、穴が拡張したことを確認できた。
(穴を掘り続ければ、
適当にあちこち爆弾を仕掛けるよりも、一転集中の方が
放り込まずに設置したのは、ただ放り投げて起爆するよりも爆発を大きくできそうな手段を思いついたからだ。
恭介はリュージュを機械竜の姿に変形させ、上空から魔石のエネルギーを消費してビームブレスを放った。
それが設置した爆弾に命中し、試しに投げ込んだ時とは比べ物にならない大爆発が生じる。
この大爆発が
ついでに言えば、大爆発に巻き込まれたモンスターがいたようで、そのドロップアイテムがリュージュのコックピットのサイドポケットに転送されて来た。
(爆弾じゃなくてドリル?)
どのモンスターからも爆弾が手に入るわけではなく、違うアイテムも手に入ることがわかった瞬間だった。
ドリルは地面に三脚を立ててから地面に打ち込む装置であり、恭介は先程の大爆発の爆心地に設置してみた。
その結果、反対側まで穴が貫通して生じた亀裂もどんどん広がっていき、
ミッションが進んだことにより、モニターに表示される進捗率が0%から7%になった。
(この調子でガンガン進めよう。そのためにもモンスターを探さねば)
開始5分で上々の成果を出せたから、恭介は気合を入れてモンスターを探し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます