第89話 さあ、格差社会を始めようか
設計図と鉱物マテリアルを探す時間は終了し、麗華と沙耶は格納庫によく似たエリアに転移させられた。
恭介達がいるイベントエリアとは別の空間であり、恭介と晶はイベントエリアに映し出されている映像で麗華と沙耶を見守っている。
ベースゴーレムは各国に1機用意されており、生存しているコレクト&ビルド参加者がベースゴーレムを手に入れたアイテムで強化していく。
コレクト&ビルドなんてタイトルのバトルだが、かける時間は9割以上がコレクトに割かれている。
もっとも、誰もそこにツッコミを入れる者はいないのだが。
コレクトが終わってパイロットが残っている国は、日本とF国、E国、A国、C国だけだ。
つまり、完成したゴーレムは当初の予定の半分しかない5機ということである。
(今回の代理戦争で半数の国が消えたか。これは第2回デスゲームも次回の代理戦争で終わりかな)
そんな風に恭介が考えていると、タイムアップのブザーが鳴った。
『はい、そこまで! 早速評価を始めるよ~』
フォルフォルがビルドの時間は終わりだと宣言し、そのまま評価の時間になった。
『鉱物マテリアルについて説明するね。手に入る鉱物マテリアルは
(ということは、麗華達は鉱物マテリアルでは満点か)
恭介がコレクト&ビルドを見ていた中で、麗華以外に
ただし、ムッシュが1機のゴーレムを賄えるだけの
何故なら、ムッシュは他国のパイロットを潰して回ったり、沙耶にモンスタートレインされてキマイラの相手をしていたからだ。
結局、ムッシュはキマイラを倒せないままタイムアップしたから、ムッシュがどんな設計図を持っているのかによって順位が大きく変わるだろう。
『次にゴーレムの設計図について説明するね。キュクロとブリキドールが10点、ライカンスロープとエンジェルが20点、ジャック・オ・ランタンとジャックフロストが30点、ザントマンとアークエンジェルが40点、イフリートとケンタウロスが50点、キングクラブが60点、リュカオンが70点だよ』
ここで、各国の完成させたゴーレムを見てみよう。
日本は
F国は
E国は
A国は
C国は
『という訳で、コレクト&ビルドの優勝は日本の福神漬け&(゚д゚)だよ! おめでとう!』
フォルフォルがお祝いの言葉を述べた後、麗華達コレクト&ビルドの参加者がイベントエリアに戻って来た。
ホログラムのフォルフォルが恭介達の前に現れて喋り始める。
『お疲れ様。弱い者虐めをしたり、モンスタートレインしたりと人間の醜い部分がよくわかるコレクト&ビルドだったね! それじゃ、総合順位を発表するよ!』
フォルフォルがそう言った直後、恭介達のコックピットのモニターに初めて見るスコアが表示される。
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総合スコア(第3回代理戦争)
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1位:日本(生存者4人/獲得資源(食料)100×18/(素材)100×18)
2位:F国(生存者2人/獲得資源(食料)100×10/(素材)100×10)
3位:E国(生存者2人/獲得資源(食料)100×9/(素材)100×9)
4位:A国(生存者2人/獲得資源(食料)100×2.5/(素材)100×2.5)
5位:C国(生存者2人/獲得資源(食料)100×2/(素材)100×2)
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脱落国:R国/D国/IN国/BR国/EG国
報酬:アップデート無料チケット(フリー)
コメント:さあ、格差社会を始めようか
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(スコアの表記とコメントに悪意しか感じないわ)
敢えて生存者や獲得した資源カードの枚数を公開し、格差社会を始めようなんて煽るフォルフォルに恭介は戦慄した。
『悪趣味ね』
『まさに外道ですね』
『フォルフォルの半分は下種でできてるって本当?』
『あぁ、各国のパイロット達が私をディスる声が聞こえて来るね。だが敢えて言おう。弱いから駄目なんだ! ハーッハッハッハ!』
開き直ったフォルフォルは強かった。
そんなフォルフォルが代理戦争の締めの挨拶を始めようとした時、E国のマーリンとF国のムッシュが全員に通信を繋いだ状態で口を開く。
『『ちょっと待ってほしい』』
(デジャヴか?)
前回の代理戦争終了時、マーリンとムッシュが同じタイミングで同じセリフを持って締めの挨拶を邪魔したことから、恭介は以前もこんなことがあったなんて思った。
フォルフォルも同じように思ったからなのか、少しうんざりした表情に変わる。
『また君達? 話は聞くだけ聞くけど何かが変わるとは限らないよ。それでも良いなら用件を言ってごらん』
『同盟システムを希望する』
『はっきり言って日本とそれ以外が戦ってもギリギリ良い試合ができるか怪しいぐらいだ』
情けないことを言い出すマーリンとムッシュを見て、フォルフォルの目が燃える。
『情けないこと言うなよ! もっと熱くなれよ! 諦めんなよ! 頑張れ! 頑張れ! 頑張るんだよぉぉぉ!』
(フォルフォルが熱血キャラって似合わないな)
恭介は白けた目でフォルフォルとマーリン、ムッシュのやり取りを眺めていた。
その視線を感じたからか、フォルフォルが恭介のコックピットのモニターに現れる。
『トゥモロー、ちょっとなんとか言ってやって! マーリンとムッシュが私のデスゲームにケチをつけるんだ!』
フォルフォルからの救援依頼に恭介は大きく息を吐き出した。
「前提として、俺はフォルフォルの味方をするつもりがないと言っておく。それをふまえてよく聞け。一度敵対したら容赦なく潰す。今まで俺は積極的にパイロットを殺したことはないが、敵として積極的にかかわって来るなら潰す。良いな?」
恭介の声のトーンはいつもよりも冷たく、それはまるで筧前首相と喋っている時のようだった。
直接顔を見て話をしている訳ではないのに、マーリンもムッシュも通信を通して感じるプレッシャーのせいで滝のように冷や汗をかいていた。
フォルフォルは恭介の言葉を聞いて満面の笑みを浮かべる。
『トゥモローは最高にクールだね! ということで、次回もハラハラする展開になることを期待してるよ! またね~!』
次の瞬間には
恭介がリュージュのコックピットから降りた時、麗華もソロネのコックピットから降りて恭介に抱き着いた。
「恭介さん、お疲れ様」
「麗華もな。お疲れ」
「私、また1人殺しちゃった」
「敵意には敵意を返すべきだ。じゃなきゃ、麗華がやられてたんだから」
麗華が池上の発言を思い出したのだろうと察し、恭介は麗華を抱き締める力を少し強くした。
「次回の代理戦争は今まで以上に他国に狙われるのかな?」
「どうだろうな。俺の警告を無視して同盟を組んでくるなら、俺達も蹴散らすまでだ。その時は敵対したことを後悔するぐらい、完膚なきまでにぶちのめせば良い」
「あはは、恭介さんってば過激だね」
「過激って言われても構わん。麗華達を死なせるよりずっとマシだ」
力なく笑う麗華に対し、恭介は麗華達を守るために準備を怠らないようにしようと気持ちを引き締めた。
それと同時に、こんな暗い話ばかりしていても気分が悪くなるから、恭介と麗華が手に入れたアップデート無料チケット(フリー)を使って食堂をver.9に、私室をver.8に、
代理戦争優勝記念ランチが豪華だったおかげで、恭介も麗華も帰還した時よりは機嫌が良くなった。
食のパワーは偉大である。
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