第11章 宝探し

第101話 世の中には2種類のパイロットしかいない。俺か、俺以外か

 ホームに来て23日目、恭介は朝からデイリークエストを消化するためにレース会場にやって来た。


『今日はスタンピードボルケーノに挑むのかな? ソロプレイで評価A以上は恭介君にとって余裕でしょ?』


「多分ね。楽しめるコースであることを願ってるよ」


『安心して良いよ。難易度は今までで一番高いから』


 フォルフォルが入場門を開き、恭介はリュージュを操縦してその中に入った。


 スタンピードボルケーノに到着すると、既に7機のゴーレムが位置に着いていた。


 1位の位置に水属性のケルブ。


 2位の位置に火属性のサイバードレイク。


 3位の位置に風属性のアシュラ。


 4位の位置に風属性のベルグリシ。


 5位の位置に土属性のサイバードレイク。


 6位の位置に水属性のアシュラ。


 7位の位置に火属性のベルグリシ。


 8位の位置に恭介のリュージュが着いたら、レース開始のカウントダウンが始まる。


『3,2,1』


「ギフト発動」


 恭介がギフトの発動を宣言し、彼はリュージュのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。


『GO!』


 ドラキオンがスタートダッシュに成功し、一気に1位に躍り出る。


 スタンピードボルケーノは火山の麓スタートであり、レース開始と共にモンスターが大量に押し寄せて来る仕様になっている。


 恭介の視界に捕捉できたモンスターはパイロリザードとマグマイマイ、トーチホークの3種類だ。


 パイロリザードの群れが一気に動けば、ドドドドっと大きな音がコース内に鳴り響く。


 山登りするゴーレムを吹き飛ばしてやると言わんばかりの数である。


 マグマイマイはパイロリザードの群れに置いていかれ、コースのあちこちに殻に籠った状態で居座るようになる。


 ゴーレムが近くに来た時に殻から飛び出し、その邪魔をするのがマグマイマイの役割だ。


 トーチホークは空を飛べるゴーレム対策として配置されており、数の暴力でゴーレムを撃墜しようとする。


 だが、トップスピードで風を纏うドラキオンには近寄れず、コース上空ではモーゼが海を割ったようにトーチホークの群れを割ってルートを確保している。


 スタンピードボルケーノのモンスター達は、共通して自分を抜き去ったゴーレムの邪魔をしない。


 それゆえ、恭介はとにかくトップスピードを維持して風のバリアでモンスター達を抜き去り、そのモンスター達で後ろに続くゴーレム達の進路妨害を狙う。


 戦闘音が後方から聞こえていたが、先に進むにつれてその音がどんどん小さくなっていく。


 少し進んで火山の中腹に来れば、モンスター達の姿が見えなくなる。


 その代わりにコースのあちこちから溶岩柱が噴き出し、恭介の行く手を阻む。


 (先に進めない仕掛けか。これは仕方ないな)


 前方では溶岩柱がずらっと横並びに吹き出し、何処にも抜け穴が存在しなかった。


 このまま突っ込めば機体も無事では済まないだろうと判断し、恭介はラストリゾートをビームランチャーに変形させて前方に射出する。


 ビームが溶岩柱の中心に穴を作り、恭介はドラキオンを操縦してその穴から先に進む。


 この溶岩柱の攻略法は通常だと溶岩柱が止むのを待って進むのだが、恭介のドラキオンはラストリゾートを装備しているので、ビームランチャーに変形させて攻撃すれば力業で突破したのだ。


『ヒャッハァァァァァ! 遂に恭介君の武器を使わせてやったぜぇぇぇ!』


「レースの邪魔!」


『あっはい』


 やっと恭介に武器を使わせることができたから、フォルフォルはテンションが上がり過ぎておかしくなった口調でドラキオンのモニターに現れた。


 当然のことだが、恭介に邪魔だと怒られてフォルフォルはおとなしくモニターから消えた。


 本当はもっと恭介のことを煽りたいけれど、恭介をマジギレさせるとデスゲームに対して非協力的になるかもしれないから、フォルフォルもこれ以上刺激してはいけないと思ったのである。


 抜け穴を用意しない横一列の溶岩柱は山頂までに3つ出現し、残り2つはタイミングが上手く合ったおかげで恭介は武器を使わずに突破した。


 山頂には火口があり、そこに飛び込むことで山の麓まで一気に降りる仕様になっている。


 しかし、注意しなければならないのは一定間隔で噴火することだ。


 火口の途中に横穴があって、その横穴を通ることで麓のスタート地点に戻れる。


 火山の噴火は1位のゴーレムが山頂に到着してから始まり、ドラキオンのトップスピードならば噴火する前に横穴に辿り着けた。


 (うわっ、うじゃうじゃいるじゃん!)


 横穴を出て2周目に入る時、恭介の目の前はパイロリザードの群れで覆われていた。


 陸を走るゴーレムがこのコースに挑むなら、パイロリザードの群れとの戦闘でなかなか2周目に入れないだろう。


 それでも、ドラキオンは空を飛べるからパイロリザード達が火を噴いて攻撃するのを躱し、あっさりと2周目に突入する。


 スタンピードボルケーノでは、1位のゴーレムが2周目と3周目に突入することでコースに現れるモンスターの種類が増えていく。


 2周目ではヒートエイプが追加され、落ちている石を投げたり火の玉を飛ばして邪魔をするようになる。


 恭介はそれらを無視して進み、8位と7位のベルグリシを1つ目の溶岩柱で追い抜いた。


 2つ目の溶岩柱の地点では、突破に失敗した6位のサイバードレイクの残骸を見つけ、その少し先で5位のアシュラを抜かした。


 3つ目の溶岩柱をビームで吹き飛ばして突破すると、4位のアシュラが前方に見えたから恭介はそれも抜き去った。


 山頂に到着し、火口付近では3位のサイバードレイクの上半身が熔けてなくなっていた。


 タイミングを誤り、噴火しているところに突っ込んでしまったのだろう。


 今は噴火していなかったため、恭介はドラキオンを操縦して火口の中に飛び降りる。


 横穴までもう少しという時、真下の溶岩が上昇し始める。


「俺は噴火になんて負けない!」


 ビームランチャーで噴火の勢いを一瞬だけ抑え込み、そのタイミングで横穴に入って恭介は噴火から逃れてみせた。


 恭介が3周目に突入し、今度はパイロコブラが現れるようになった。


 口から強酸性の液体や火の針を吐くパイロコブラだが、攻撃が当たらなければ恐くない。


 トーチホークも風のバリアでドラキオンに近づけないから、恭介はあっさりと1つ目の溶岩柱の地点に到着した。


 溶岩をビームで吹き飛ばした先にはケルブがいて、2つ目の溶岩柱が地中に消えるのを待っていた。


「見つけたぜ、チキン野郎!」


 ケルブはドラキオンの接近を知り、今になって溶岩柱を攻撃し始めた。


 三対の翼からの銃撃では溶岩柱を吹き飛ばすことができず、恭介がビームで溶岩柱を吹き飛ばしてできた穴を通過したことにより、ケルブも周回遅れになった。


 3つ目の溶岩柱は運が良いことに噴き出しておらず、恭介はそのまま山頂に向かう。


 山頂に到着した時に火口から溶岩が噴き出していたが、その勢いが弱まって火口の中に溶岩が引いていくのが見え、恭介は飛び降りる。


 今度は力業でルートを切り拓く必要もなく、横穴を通過してドラキオンが1位でゴールした。


『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』


 スタンピードボルケーノからレース会場前に移動し、恭介は黄竜人機ドラキオンをキャンセルした。


 リュージュのコックピットに戻って来れば、既にレーススコアがモニターに映し出されたのでチェックする。



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レーススコア(ソロプレイ・スタンピードボルケーノ)

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走行タイム:38分12秒

障害物接触数:0回

モンスター接触数:0回

攻撃回数:9回

他パイロット周回遅れ人数:7人

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×5枚

   資源カード(素材)100×5枚

   50万ゴールド

非殺生ボーナス:魔石4種セット×50

ぶっちぎりボーナス:武器合成キット

デイリークエストボーナス:黒金剛アダマンタイト×50

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv19(up)

コメント:世の中には2種類のパイロットしかいない。俺か、俺以外か

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「俺が言った風にコメントすんの止めろや」


『え~? 良いじゃん。恭介君ならこれぐらいオラついたって誰も文句言わないよ?』


「それはない。どんなに優れた人がいたとしても、1人もアンチがいないなんて有り得ないね」


『俺様キャラの恭介君も見てみたかったのに。残念』


 フォルフォルはそれ以上のことは言わず、モニターから姿を消した。


 恭介もこれ以上この場に留まる理由がないから、格納庫に帰還した。

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