第164話 ちょこまかと逃げて食い散らかすなんて下品ですね
恭介と麗華が瑞穂に戻って来た直後に、格納庫のモニターにラミアスが現れた。
『総員、第一種戦闘配備。繰り返します。総員、第一種戦闘配備。侵略者が現れました』
「このタイミングで?」
コロシアムでの戦いと宝探しから帰って来てすぐということもあり、恭介としては流石に休みたかった。
それは麗華も同様であり、その表情は明るいものではない。
その時、格納庫に沙耶と晶が準備万端といった様子でやって来た。
「ラミアス、接近中の敵戦力について教えて下さい」
『C001ショゴスとC002ナイトゴーント、C003シャンタク鳥が確認できております。C004ミ=ゴの姿はありません』
「わかりました。晶さん、私達だけで行きましょう」
「そうだね。初陣の時はちょっと危なかったけど、今の僕達ならやれる。恭介君と麗華ちゃんは
前回の襲撃では、自分達が出払っていたこともあり、沙耶も晶も今回の迎撃で初陣のリベンジをすると意気込んでいる。
「それじゃ、お願いしようかな」
「無理しないで下さいね」
「任せて下さい」
「大船に乗ったつもりでいて良いよ。あっ、既に戦艦に乗ってたね」
晶には冗談を言う余裕まであるようだ。
沙耶と晶は各々のゴーレムに乗り込み、恭介達は
沙耶がデルピュネをカタパルトまで移動させると、ラミアスの声がコックピット内に響く。
『進路クリア。デルピュネ、発進どうぞ!』
「筧沙耶、デルピュネ、発進します!」
デルピュネがカタパルトから射出されたのを確認し、晶がその後に続く。
『アイトワラス、発進どうぞ!』
『尾根晶、アイトワラス、出るよ!』
アイトワラスもすぐに宇宙空間に飛び出し、沙耶のデルピュネの後ろに続いた。
恭介達の前方には、ショゴスとナイトゴーントの混成集団がいた。
『『『…『『テケリ・リ!』』…』』』
『『『…『『ヨォォォォォ!』』…』』』
その奥にはシャンタク鳥が2体いて、瑞穂から発進したデルピュネとアイトワラスを相手に自分達が参戦すべきか様子を窺っている。
「この程度ならへっちゃらです」
『素数を数えなくたって問題ないね』
恭介と麗華に任せてくれと言ったように、沙耶も晶もショゴスやナイトゴーントの声が直接頭に響いて来ても余裕で耐えていた。
「晶さん、序盤はショゴスをお願いします」
『OK。サーヤはナイトゴーントをよろしくね』
晶がショゴスを担当する理由だが、それは晶のアイトワラスが水属性だからである。
水属性の攻撃で死んだ同胞を喰らい、ショゴスが水属性になったとしたら、沙耶が乗る土属性のデルピュネで攻撃すれば良い。
与えられるダメージが増えるので、沙耶達の担当の割り振りは効率的と言えよう。
素早く役割分担を決め、沙耶は手前のナイトゴーント達に狙いを定めて攻撃し始める。
デルピュネの手に握られた武器は、
この蛇腹剣の機能だが、斬りつけられた対象が生物なら弱体化し、斬りつけられた対象が非生物なら腐食する。
斬りつければ斬りつけるだけその効果が重ねがけされる。
強者が相手でもじわじわと弱らせることのできる武器だが、
沙耶が
(ファルスピースには全然敵いませんが、切れ味は十分ですね)
最前列にいたナイトゴーント達を一撃で倒せたことは、沙耶にとって嬉しい誤算だった。
やられた個体の後ろにいたナイトゴーント達は、ぼーっとしていると真っ二つにされてしまうと判断してバラバラにデルピュネに向かって突撃し始める。
『サーヤ、チェンジ!』
「わかりました!」
晶がそう言って近くのナイトゴーントから狙撃し始めたため、沙耶は晶がまだ倒していないショゴスと戦うべく移動する。
現在生存するショゴス達はいずれも水属性になっており、土属性の
沙耶がショゴスの残りを倒し終えた時には、晶もナイトゴーントの残りを片付けていた。
このタイミングでシャンタク鳥が力尽きた味方を喰らうべく、沙耶達の攻撃を警戒しながら行動を開始した。
射程距離で比べれば晶の方が広いので、晶は
それにより、翼を撃ち抜かれた個体の移動速度が目に見えて遅くなり、晶はそのまま蜂の巣にしてみせた。
残る一方の個体は、接近しようとする沙耶から逃げつつショゴスの死体を捕食する。
「ちょこまかと逃げて食い散らかすなんて下品ですね」
『シャーッ、シャッシャ!』
沙耶の頭に直接響いてくるシャンタク鳥の声には、なんとでも言うが良いと開き直っているようだった。
シャンタク鳥はショゴスの屍肉を喰らってパワーアップできたらしく、翼を硬質化させて刃のようにしてからデルピュネに突撃を仕掛けた。
「速くなろうと動きが単調なら対応できます」
沙耶はそう言って
パリィによってバランスを崩したシャンタク鳥なんて、晶にとっては的でしかない。
『いただきぃぃぃ!』
『お疲れ様です。敵性反応が完全に消えました。沙耶さん、晶さん、瑞穂に帰艦して下さい』
「わかりました」
『は〜い』
ラミアスから帰艦の指示があったので、沙耶達は瑞穂に戻った。
着艦と同時に沙耶と晶のゴーレムのコックピットにスコアが表示される。
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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)
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出動時間:26分30秒
撃破数:ショゴス20体
ナイトゴーント20体
シャンタク鳥2体
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×5枚
資源カード(素材)100×5枚
50万ゴールド
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×50
ギフト:
コメント:2期パイロットの成長が嬉しいね
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「フォルフォルが素直に私達の成長を喜ぶとは思えないのですが」
『心外だね。私は侵略者達から地球を守りたいんだ。だから、君達が強くなって恭介君達と一緒じゃなくても戦えるようになったことに喜んでるんだよ』
「それでも、兄さんと麗華さんの混浴は覗き見してますよね? あれは侵略者達と何も関係ないですよね?」
『パイロットのラブコメを見守るのは私の使命だよ。古事記にもそう書いてある』
「そんなことある訳ないでしょうが。寝言は寝て言って下さい」
モニターに映るフォルフォルがドヤ顔でデタラメを言うものだから、沙耶はジト目を向けた。
沙耶と晶がコックピットから出て来ると、恭介と麗華ぎ2人を出迎える。
「お疲れ様。安心して見てられたぞ」
「お疲れ様でした。無事に戻って来てくれて良かったです」
恭介達はホッとして微笑んでおり、そんな2人を見て近づこうとした沙耶の脚がもつれて恭介の方に転びそうになる。
沙耶が転ばないように恭介は彼女を支えた。
「大丈夫か?」
「すみません。安心して気が抜けてしまったようです」
「無理もないさ。普段戦う敵とは質が違うんだから。今日はゆっくり休んでくれ」
「それを言うなら兄さんの方が休んでないと思いますが」
沙耶の反論に恭介は言い返すことができずに苦笑した。
『恭介君、侵略者が来ないなら明日はオフにしたらどうかな? 君達に過労で倒れられると私は非常に困るんだ』
「心配してる風を装って、オフの俺達の気が抜けたところを見てやろうって企んでる笑いが隠せてないぞ?」
『濡れ衣だよ! 私の目を見てくれ! この目がそんなことを考えてるように見えるのかい!?』
「思えるね」
『ガーン』
モニターに映るフォルフォルがあからさまに落ち込むが、どう考えても自業自得である。
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