第264話 やったよ恭介君! ラミアスの生乳揺れを見た!?

 恭介達が瑞穂に来て60日目、瑞穂はハイパードライブを解除して暗黒惑星ゾス付近までやって来た。


 瑞穂クルーが待機室パイロットルームに集まっている中、ラミアスは恭介と麗華を艦長室に呼び出していた。


「現在、暗黒惑星ゾスは戦国時代に突入しております。したがって、外部からの攻撃に対して通常よりも反応が遅くなるでしょう。恭介さん、侵攻部隊はどのように編成されますか?」


「沙耶が等々力さんと潤さんを率いる第一小隊で、晶が仁志さんと笛吹さんを率いる第二小隊とする。今回の侵攻作戦は2期と3期を中心に進めよう」


「よろしいのですか?」


 ラミアスがそう訊ねた言葉の裏には、1期と2期の組み合わせで出撃した方が侵攻作戦の成功確率が高いという考えがあった。


 恭介もそのように考えていたけれど、そうしないことには訳があった。


「今までの侵攻作戦はあの6人に大役を任せずじまいだった。今回の侵攻作戦では名立たる上位単一個体も発見されてないから、彼等だけに任せて自信を付けてもらおうと思う」


 主力である1期パイロット2人に頼っている戦術では、2期と3期のパイロットの成長機会を奪うことに繋がり、いざという時に彼等が力不足ということになりかねない。


 それと同時に、過去二度あった侵攻作戦において1期パイロットの戦果に比べ、2期と3期のパイロットの戦果は目立たないから自信につながりにくかった。


 幸いにも、暗黒惑星ゾス出身のクトゥルフやその子供達は討伐済みなので、単一個体はそこそこいても上位単一個体がいる可能性は低い。


 もしもいたならば、暗黒惑星ゾスが戦国時代に突入せずその上位単一個体が支配しているから、2期と3期パイロットだけで作戦を全うするなら今なのだ。


 恭介の意見に対し、モニターに現れたルーナも頷く。


『私はその編成で良いと思うよ。いやぁ、恭介君もちゃんとクルーの成長を考えてくれて嬉しいよ』


「誰目線だよ。麗華はどう思う?」


『戦闘スタイルも考えると私もその組み合わせにするかな』


「わかりました。それでは、今回の作戦では恭介さんと麗華さんには瑞穂に待機していただき、瑞穂の護衛といざという時に出撃していただきます」


 話はまとまり、恭介と麗華、ラミアスが待機室パイロットルームに移動した。


 3人がやって来たことで全員の注目が集まる。


「これより、暗黒惑星ゾス侵攻作戦を開始します。第一小隊と第二小隊に分けて侵攻を行います。第一小隊長は沙耶さんにお願いします。明日奈さんと潤さんはその下に着いて下さい」


「「「了解」」」


「続いて第二小隊ですが、晶さんに小隊長をお願いします。仁志さんと遥さんはその下について下さい」


「「「了解」」」


 恭介と麗華が瑞穂に残ると聞き、沙耶達は気合半分不安半分という表情をしていたので、恭介がラミアスの発表に補足を入れる。


「今回の侵攻作戦では俺と麗華がいない時の戦闘を想定した訓練でもある。別のミッションで俺達2人がいない時、2期と3期だけじゃ何もできませんでは済まされない。だからこそ、今回は俺も麗華もよっぽどのことがない限り瑞穂で待機する。沙耶と晶、3期パイロットを頼んだぞ」


「わかりました」


「任せてよ」


 今更恭介と麗華がサボりたくて待機するとは思っていないから、沙耶と晶は恭介の言葉を受けて気を引き締めた。


 それから、第一小隊と第二小隊に分かれて簡単な打ち合わせを行った後、彼等は格納庫に移動して各々のゴーレムに搭乗した。


「特装砲発射後、第一小隊と第二小隊に出撃してもらいます。総員、衝撃に備えて下さい。魔開闢砲オリジンキャノン照準、撃てぇぇぇぇぇ!」


 ラミアスの発射許可が下りてすぐに、特装砲の魔開闢砲オリジンキャノンが瑞穂から発射されて暗黒惑星ゾスに命中し、ド派手な爆発と共に大きなクレーターができた。


 当然、その反動も相当なものになる訳で、瑞穂全体が揺れるからラミアスの巨乳が揺れる。


『やったよ恭介君! ラミアスの生乳揺なまちちゆれを見た!?』


「ルーナ、黙ってろ。それと麗華、見てないから疑うような目で俺を見ないでくれ」


「恭介さんなら大丈夫だと思ってるけどさ、男の人ってすぐに大きい人の胸を見るから」


「落ち着け麗華。その考えはルーナのペースに乗せられてるぞ。俺が余所見してないのは麗華が一番わかってるだろ?」


「うん。そうだね。ごめんね恭介さん」


 自分が恭介を信じなくてどうするんだと気持ちを切り替え、麗華は恭介に謝った。


 そうは言っても、やはり気になる物は気になるらしく、麗華は隣に座る恭介との間を振れるかどうかギリギリのところまで詰めていた。


 女心とはそんな簡単に割り切れるものでもないようだ。


 ラミアスはAIゆえに恥ずかしさはないらしく、準備が整ったところで沙耶達に出撃の合図を出す。


「第一小隊から発進していただきます。進路クリア。レイダードレイク、発進どうぞ!」


『筧沙耶、レイダードレイク、発進します!』


 カタパルトから射出され、レイダードレイクが瑞穂の外の宇宙空間に飛び出してから他の瑞穂クルーの機体が続く。


『等々力明日奈、ゲイザー、出るわ!』


『田辺潤、ダビデ、行きます』


『尾根晶、アスタロト、行きまーす!』


『山上仁志、コンダクター、発進する!』


『笛吹遥、タイラントドレイク、出るわよ!』


 第一小隊と第二小隊に分かれ、それぞれトライアングルフォーメーションで暗黒惑星ゾスに侵攻を開始した。


 3期パイロットの4人も沙耶と晶が登場するゴーレムを合成した後、設計図をたくさん集めて自分達が納得するゴーレムを完成させた。


 明日奈のゲイザーはギャラルホルンとエンブリオというゴーレムを合成して完成し、ガトリングガンと小型ミサイルを内蔵したフライトユニットを背負ったモノアイの一角アンテナを頭から生やしたゴーレムだ。


 装備も九頭蛇剣ヒュドラソード台風蛇剣テュポーンソードを合成した結果、ファントムペインと名付けられた剣に変わった。


 この剣は刃の長さが自在という点も間合いが測りにくくて厄介だが、斬られる度に痛覚を倍加させるウイルスを流し込む特徴がある。


 ファントムペインのスペック以下の物体であれば、少し斬られただけで操作しにくくなる。


 潤のダビデはコロシアムソロプレイの36戦目に登場しており、潤が偶然手に入れた設計図を合成して完成したので、ガルーダから乗り換えた。


 その際に武器も双犬銃剣オルトバヨネット妖精銃剣フェアリーバヨネットを合成し、幻想銃剣ファンタズムバヨネットを完成させた。


 威力の向上は当然のことで、刃や射撃によってダメージを負うとランプオブカースよりも厳しいデバフがランダムで付加される。


 仁志のコンダクターはオーケストラとディスクマスターを合成した結果であり、タクトがデフォルト形態のタクトオブフィクサーを装備している。


 タクトオブフィクサーは剣と槍、メイスに変化する武器で、ダメージを与えた敵を効果が切れるまで操れる。


 これぞ黒幕というべき武器と言えよう。


 遥のタイラントドレイクはタイクーンとサイコドレイクを合成した結果であり、沙耶のレイダードレイクよりもマッシブな機体だ。


 竜形態でビームを放てる点も同じだが、高火力な分だけ移動速度がレイダードレイクよりも遅めである。


 以前使っていた呪機関銃カースマシンガン幽怪鳥砲ペリュトンキャノンを合成し、撃たれた者に不幸が訪れる不幸招銃アンラッキーガンが完成したのでそれを使っている。


 3期パイロット4人のゴーレムと武器の紹介はこの辺りに留めるとして、ラミアスは感知した敵の情報を沙耶達に伝える。


「第一小隊と第二小隊の皆さん、注意して下さい! C016シャンの群れが接近してます!」


 モニターに映しだされた昆虫集団を見て、恭介は嫌そうな顔をした。


「昆虫とクトゥルフ神話って絶対にかけ合わせてほしくないわ」


「恭介さん、大丈夫だよ。私が一緒に出撃した時は恭介さんが視界に入れなくても済むようにさっさと殲滅しちゃうから」


「ありがたいけど嫌いなだけで戦えないって訳じゃないから俺も戦う。虫が怖くて麗華に守ってもらってるなんて情けないからさ」


「良いんだよ。むしろ、私は恭介さんにもっと弱い所を見せてほしいな。じゃないと私が全然助けてあげられないもん」


 恭介の苦手とするものは虫しか知らない麗華にとって、もっと力になりたいから恭介の弱味は知っておきたいのだ。


 しかし、ルーナがニヤニヤしながら話の続きを待っている以上、恭介が自分の苦手を口にすることはない。


「ルーナが聞いてるから言わない。それよりも、沙耶達の戦いを見守ろう」


「そうだったね」


 恭介達は自分達の話を止め、モニターに映る戦闘に集中した。

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