第114話 ゴーレムの中のゴーレム、出て来いや!
ホームに来て26日目にして第4回代理戦争当日、朝食をしっかり取って準備万端な恭介達は各々のゴーレムに搭乗し、イベントエリアを選択して恭介達は
全参加国のパイロットが同時にイベントエリアに現れたが、イベントエリアはいつもと違って暗かった。
恭介達が到着した直後に、タキシードを着たフォルフォルのホログラムがスポットライトを浴びながら姿を現す。
『ゴーレムの中のゴーレム、出て来いや!』
その掛け声の直後、BGMが流れてイベントエリア内にアナウンスが流れ始める。
『エントリーナンバァァァ、ワァァァン! 過去3回を完全に制覇した日本の柱は間違いなくこのペアのおかげ! トゥモロー&リュージュ!』
名前が呼ばれた瞬間、スポットライトがリュージュに向けられる。
『瑞穂の黄色い弾丸半端ないって!』
『俺を倒せるのは俺だけだ!』
(何この演出…)
フォルフォルが紹介した後の掛け声は、どうやって用意したのかわからないがフォルフォルの声ではなく、恭介はここまでやるのかと顔を引き攣らせた。
『エントリーナンバァァァ、トゥゥゥ! このペアがいるからトゥモローとリュージュが輝ける! 福神漬け&セラフ!』
『なんてったって傭兵アイドル!』
『私の推しは君に決めた!』
麗華もスポットライトを浴びて嫌そうな声を出す。
『なぁにこれぇ…』
それでも、フォルフォルの紹介は止まらない。
『エントリーナンバァァァ、スリィィィ! ふざけたキャラネームと違って根は真面目! (゚д゚)&ラセツ!』
『『『…『『こっちみんな!』』…』』』
(反応が雑!)
沙耶の時だけ紹介の後のリアクションに対し、恭介は心の中でツッコんだ。
『エントリーナンバァァァ、フォォォ! 私と同類な気配を感じる煽りのプロ! ねこまたびたび&リャナンシー!』
『いつかやると思ってました!』
『はい、論破!』
『おのれフォルフォルめ。僕に対する悪意を感じる』
晶の顔を見ていないけれど、恭介達は晶がムッとしているだろうことを容易に予想できた。
『エントリーナンバァァァ、ファァァイブ! 弱い者いじめに定評あり! マーリン&ジャンクパラディン!』
『弱肉強食!』
『焼肉定食!』
(焼肉定食は関係ないだろ)
語感が似ているからとはいえ、関係ない言葉が聞こえたので恭介はフォルフォルにジト目を向けた。
『エントリーナンバァァァ、シィィィックス! E国のじゃない方といえばこのペア! メタルクイーン&スフィンクス!』
『あっ、いたんですね!』
『やだー、モブさんじゃないですかー!』
なんとも悪意に満ちた発言である。
これには恭介も少しだけメタルクイーンを不憫に思った。
『エントリーナンバァァァ、セェェェブン! 強い者には逆らわない! ムッシュ&ヨトゥン!』
『もっと上を見ろよ!』
『貴方の辞書には無理と不可能ばっかりですか!?』
(俺と麗華以外の紹介と掛け声以外、どれも酷くないか?)
ここまで聞いていた恭介はそのように思うが、そう思うのも無理がない。
『エントリーナンバァァァ、エェェイト! イライラしたら燃やす姿に優雅さは感じられない! マダムF&イフリート!』
『『『…『『燃え燃え~!』』…』』』
(字が違うんだろうなぁ)
もしも萌えだとしてもマダムの名前に相応しいとは思えまい。
恭介はフォルフォルが全力でふざけているとわかったため、呆れた視線を向けるのみである。
『エントリーナンバァァァ、ナァァァイン! ヒーローは遅れてやって来るが口癖! キャプテンA&プリンシパリティ!』
『遅れるんじゃねえ! 間に合えよ!』
『敵の口上なんて邪魔しろや!』
ヒーローに何か恨みでもあるのかと疑わずにはいられない掛け声だった。
確かにそうだと思えばこそ、恭介は心の中でツッコまなかった。
『エントリーナンバァァァ、テェェェン! 欲しい物は蜘蛛のように絡め取る! スパイダーW&アラクネ!』
『ズビュル! ズビュル!』
『ベタベタだぜ!』
(紹介はマシな部類だったのに掛け声で台無しだ)
この感想はきっと恭介だけが抱いたものではないだろう。
『エントリーナンバァァァ、イレブン! 自らが一番なんだと身内に自慢する内弁慶! リチョー&エクスキューショナー!』
『よっ、豊頬の美少年(笑)』
『他国のパイロットなんて歯牙にもかけないんですよね!?』
パイロットネームの元ネタで完全にいじられている。
リチョーの乗るゴーレムがエクスキューショナーではなく、虎に変形できるゴーレムだったらもっといじられていたに違いない。
『エントリーナンバァァァ、トゥエルブ! ねこまたびたびに静かに闘志を燃やすのはこのペア! 麻婆豆腐&ニンフ!』
『キャラが下位互換なんですね、わかります!』
『レスバ弱いもんねぇぇぇ!』
麻婆豆腐に対する掛け声はただの煽りでしかなかった。
全てのゴーレムにスポットライトが当たった後にBGMが止んだ。
『さあ、始まったよ第4回代理戦争! 司会はこの私! フォルフォルさんだよ! 3! 2! 1! ゴーレムゴーレム!』
ゴーレムゴーレムの部分だけ、イベントエリア内ではフォルフォル以外の声がいくつも重なって聞こえた。
『ふぅ、やり切ったところで真面目に代理戦争の説明を始めるよ。ルールが一部追加されて変わったから、改めて紹介するね』
フォルフォルが説明した代理戦争の内容をまとめると以下の通りになる。
・代理戦争は参加国のパイロットが5,10,15のように5階層突破毎に開催される
・例外として代理戦争で一度でも総合優勝した国が突破した場合はノーカウント
・もしも1ヶ月以上新たに5階層が突破されなければ、代理戦争が強制開催される
・代理戦争はレース部門とバトル部門が順番に行われる
・レース部門はランダムで2名が選出されて順番にレースに参加する
・レース部門は毎回違うコースで行われる
・バトル部門では生存者全員が毎回別のテーマで戦う
・報酬は部門毎に用意されており、実績によって按分される
・他国のパイロットを仕留めるとギフト以外全ての物的財産を引き継げる
ルールの数は変わっていないが、日本が一方的に有利にならないようにレース部門に参戦する者が完全にランダムになるよう変更された。
また、バトル部門はレース部門の生存者全員が参加と明言されているので、レース部門で自身の乗るゴーレムを傷つけられないようにしないと後で困るだろう。
『さて、レース部門のコース選択を始めるよ』
笑顔のフォルフォルが指パッチンしたことで24面ダイスが2つ現れ、レース部門で走るコースの選定が始まる。
サイコロを上に放り投げてからフォルフォルが歌い出す。
『何が出るかな♪ 何が出るかな♪』
(出て来いやの後に何が出るかなって世界観がぶっ壊れてるよな)
改めて恭介はフォルフォルが好き勝手やっていると感じた。
動きが完全に止まった時、サイコロの面に記されていた文字はそれぞれNINJA屋敷とデプストンネルだった。
『忍者じゃなくてNINJAになってるところが気になるわ』
「それな」
麗華の指摘に恭介は頷いた。
忍者屋敷だってギミックだらけだと思うが、それがNINJA屋敷になったことで悪ふざけが過ぎたものになっていそうだと感じるのは仕方のないことである。
『やったね! 第4回代理戦争のレース部門はNINJA屋敷とデプストンネルで開催だよ! まずはNINJA屋敷でレースするパイロットをランダムに選出するよ!』
フォルフォルが指パッチンすると、ドラムロールが何処からともなく聞こえて来る。
ドラムロールが聞こえている間、スポットライトが国ごとに順番に参加者達を照らすようになり、ドラムロールが終わった時に日本チームからは沙耶が乗ったラセツが照らされていた。
その瞬間、ラセツや他の選ばれたゴーレムの足元に魔法陣が出現し、そのまま魔法陣でNINJA屋敷へと転送された。
「やっぱり俺は選ばれなかったか」
『なんだい? まさか私が意図的に恭介君を選ばなかったとでも言うのかい?』
恭介がぽつりと呟いたところ、フォルフォルが外部に声が漏れないよう細工をしてからコックピットのモニターに姿を現した。
「難易度調整はしないと言いつつ、2期パイロットの優遇をしてた時点で信用はできない。それに、俺からどう思われようとレースの展開が決まってるのはつまらないと考えれば、フォルフォルは俺をレースに出さないよう仕掛けるだろう?」
『…黙秘権を行使するよ』
それだけ言い残し、フォルフォルはモニターから姿を消した。
やれやれと溜息をついてから、恭介は沙耶達が転送されてイベントエリアに現れたレースの映像を見るのに集中することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます