第208話 生物からミサイルが飛び出すってどゆこと!?

 ヨグ=ソトースは虹色に輝く球体であり、その球体から無数の触手を生やし、球体の中心と触手の全てにモノアイと口を持つ異形の存在だ。


『『『…『『足りぬ』』…』』』


 何が足りないのかわからないが、ヨグ=ソトースは触手を自ら切った。


 その触手が集合し、13個の小さなヨグ=ソトースに変形する一方で、切った触手は再生してヨグ=ソトースは元通りになった。


 (自分の分身をどこまで作れるかが問題だな)


 ルーナの話ではヨグ=ソトースは上位単一個体だから、無尽蔵に分身を作って統率するなんてことも考えられる。


 恭介が13体の分身を警戒していると、ドラキオンの背後から13のビームが発射されて分身全てを破壊した。


『お待たせ!』


「麗華か。ありがとう。黒い仔山羊は沙耶と晶に任せたのか?」


『うん。ディープワンの群れを片付けたから、私は先に行けって引き受けてくれたの』


「そうか。頼りになる仲間だ」


 ルーナには戦いは質だと言ったが、質の高い者は1人よりも2人いる方が良いに決まっている。


 だからこそ、麗華の合流は恭介にとってありがたかった。


『『『…『『邪魔』』…』』』


「やらせねえよ!」


 ヨグ=ソトースが麗華を邪魔に思い、体にある無数の目からビームを放とうとしたので、恭介は土精霊槌ノームハンマーを発動してヨグ=ソトースの攻撃を未然に防いだ。


 攻撃は最大の防御だから、ルーナのアドバイス通りにいくつかのアニメを見て想像力を鍛えた成果を披露すべく、月を永久に三日月にできる程の破壊力を備えた一撃を放った。


 土精霊槌ノームハンマーが命中し、ヨグ=ソトースの体が半分以上削れると共によろける。


『『『…『『脅威』』…』』』


 体を再生させるのではなく、ヨグ=ソトースは体の形を変形させ始めた。


「させねえよ!」


『させないわ!』


 ドラキオンの竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムとブリュンヒルデの一斉掃射を受け、ヨグ=ソトースの体に異変が生じる。


 第一形態から第二形態に変形するにあたり、恭介と麗華の攻撃を受けたせいでエラーが発生したらしい。


 第一形態の無数の触手を生やした球体から、今のヨグ=ソトースは触手の輪を首元から生やした八本脚の大山羊に変わった。


 第二形態になるにあたって虹色なのは変わらないが、そのサイズは半分になった。


 エラーと考えられるのは、触手の輪が不安定なようでノイズが走ったようなエフェクトが生じていることだ。


『反撃』


 短い言葉が恭介と麗華の頭に直接届いた直後、ヨグ=ソトースの触手の輪からいくつものミサイルが飛び出してドラキオンとブリュンヒルデを襲う。


 (生物からミサイルが飛び出すってどゆこと!?)


 恭介はラストリゾートをビームライフルに変形させ、次々に撃ち落していく。


 麗華は混沌衛砲カオスサテライトだけでミサイルを撃ち落とし、ヴォーパルバヨネットと四対の翼の銃でヨグ=ソトースに反撃した。


 ヨグ=ソトースは麗華の反撃に対し、触手の輪から4つのビットが出現してブリュンヒルデと同様に四角錐のエネルギーバリアを形成して防いだ。


『嘘でしょ!?』


「落ち着け麗華。勝機は必ずある」


 自分と同じ防御手段を敵が有していると知り、動揺している麗華を恭介は落ち着かせた。


 そして、高火力の攻撃ならその防御を貫通できるのではと考え、竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムでヨグ=ソトースを攻撃した。


 結果として、竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムはエネルギーバリアを貫通してヨグ=ソトースにダメージを与えた。


『足りぬ』


 再び足りないと言ったヨグ=ソトースは、大山羊の形態から第三形態へと変形する。


『ギフト発動』


 麗華は200万ゴールドをコストにして金力変換パワーイズマネーを発動する。


 残骸換金サルベージで換金した敵の死体やパーツの儲けは50万ゴールドもあったため、そこにアンフィスバエナ戦と同様に150万ゴールドも上乗せしたから、麗華が今までに放って来た中で最強の一撃が準備できた。


 変形中は攻撃してはいけないというお約束に喧嘩を売り、麗華は第三形態に変形中のヨグ=ソトースに命中する。


 二足歩行に変わってバフォメットに似た姿になりつつあるヨグ=ソトースの体に大きな風穴が開き、撃ち抜かれた体はサイズを縮小して再生された。


 ヨグ=ソトースの体はゴーレムと同程度まで小さくなっており、変形途中に麗華の攻撃を受けたせいなのかサイボーグ化したバフォメットと表現するのが適切な外見になった。


『始め…』


 途中で言葉が途切れ、ヨグ=ソトースの姿が消えた。


『ようか』


 残りの言葉が消えた時、ヨグ=ソトースはブリュンヒルデに死角から接近して口から圧縮したビームを放とうとしていた。


「麗華に手を出すな」


 しかし、恭介がパイルバンカーに変えたラストリゾートでヨグ=ソトースの体を貫けば、ビームの発射に失敗してヨグ=ソトースの顔が爆発した。


 その隙に麗華はブリュンヒルデをドラキオンの後ろまで移動させており、爆発には巻き込まれなかった。


『恭介さん、ありがとう』


「どういたしまして。でも、気を抜くな。まだヨグ=ソトースは生きてる」


 恭介の言う通りで、ヨグ=ソトースはドラキオンとブリュンヒルデから距離を取りながら再生していた。


 ここから先はスピードと集中力の勝負が30分程続いた。


 ヨグ=ソトースが恭介や麗華の死角に高速で移動し、剣に変化させた腕で攻撃しようとするから、狙われてなかった方が狙われた方のフォローをしてヨグ=ソトースに地道にダメージを与える戦いになったのだ。


 このまま戦い続けても勝機はないと判断したのか、ヨグ=ソトースは狙いを変えて瑞穂を撃墜せんと行動を開始した。


「逃がさねえよ」


 前回の使用から1時間が経過したため、恭介は本日2回目の土精霊槌ノームハンマーを発動する。


 今度は核ミサイルをイメージして発動したため、全速力で瑞穂に向かって飛ぶヨグ=ソトースが粉々になって宇宙の塵になった。


『討伐完了! 恭介君も麗華ちゃんもお疲れ!』


『恭介さん、麗華さん、お疲れ様でした。後続の敵性反応はありません。帰艦して下さい』


「ふぅ。腹減った」


『…確かに。お腹空いた』


 朝食も取らずに激戦を繰り広げていたため、いざ戦いが終わってみると恭介も麗華も腹が減っていることに気づいた。


 それから恭介達は瑞穂に戻り、それと同時に各々のゴーレムのコックピットにバトルスコアが表示される。



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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)

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出動時間:1時間17分4秒

撃破数:黒い仔山羊60体

    ディープワン80体

    ダゴン1体

    ハイドラ1体

    ヨグ=ソトース1体

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×12枚

   資源カード(素材)100×12枚

   120万ゴールド

ファーストキルボーナス:ドラクール専用兵装ユニット青六星翼ヘキサグラム

            ドラストム専用兵装ユニット緑秘仮面ペルソナ

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×120

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv40(up)

コメント:朝からお疲れ様。ギフトレベルが2も上がるなんて大変だったね

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 (ルーナの労いのコメントや報酬を貰うだけの戦いだったな)


 バトルスコアを読み終えた恭介はそのように思いつつ、ギフトを解除してドラグレンのコックピットに戻った。


 格納庫に戻ってから、ドラクールとドラストムに追加された青六星翼ヘキサグラム緑秘仮面ペルソナを確認したら、いずれも2機の性能を底上げするものだとわかった。


 青六星翼ヘキサグラムは六芒星を模った翼であり、着脱自在なビットが集合している。


 そのビットからビームを放つこともできれば、刃を突き出して串刺しにすることもできる。


 緑秘仮面ペルソナはドラストムの頭部に追加されており、見た目は仮面舞踏会で見かけそうなエレガントなデザインだ。


 勿論ただのデザイン変更だけでなく、ドラストムが纏う嵐の出力や翼から放出する爆発する粉やチャフの威力と操作性を向上させる性能があった。


 恭介が2つの追加兵装を確認し終えたと判断し、麗華が話しかける。


「恭介さん、聞いて。ギフトが2つもレベルアップしたの」


「麗華もか。俺も2つ上がった」


「ということは、また黄竜人機ドラキオンに新しい力が追加されるってこと?」


「多分な。でも、それを確認するよりも先にまずは腹ごしらえだ」


「だよね。私もお腹ペコペコ~」


 この後、出撃した4人は遅めの朝食をモリモリ食べた。

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