第18章 第2回新人戦
第171話 俺以外のゴーレムは犠牲になったのだ
恭介達が瑞穂に来てから40日目にして第二回新人戦前日、恭介はドラグレンに乗ってレース会場に来ていた。
『恭介君、解禁されてるコースは次がラストだよ』
「明日には新人戦のコースが2つ増えるだろ。通常コースは増えないのか?」
『それは明日以降のお楽しみだね。タワー探索とコロシアム、宝探しよりもレースの方が優先順位は高い?』
「そうだな。侵略者達が来ればいくらでも戦うことになるんだ。それなら侵略者達とできないレースが良い」
恭介からすれば、元々GBOではレースをメインにプレイしていたため、いくらでもやることになる戦闘よりもレースの方に注意が向くようだ。
『侵略者とのレースって独特な考えだね』
「別に本当にやりたい訳じゃないさ。さて、ハザードコロニーへの入場門を開いてくれ」
『はーい』
ドラグレンを操縦して入場門の中に入ると、そこはハザードコロニーである。
事故が発生して地球に向かって進んでいる小惑星がモチーフのコースであり、無重力の中をゴーレムが走る。
既に7機のゴーレムが位置に着いており、恭介が位置に着くのを待っている。
1位の位置には風属性のルシファー。
七つの大罪において傲慢を司るルシファーは、セラフにそっくりな見た目のゴーレムだ。
違いを挙げるならば、セラフを衛星のように守る4枚の盾がルシファーの場合は4つのビットに変わっており、防御ができない代わりにビームが放てる。
その点を考慮すると、セラフよりも攻撃に重きを置いていると言えよう。
2位の位置には火属性のサタン。
七つの大罪において憤怒を司るサタンは、正統派の悪魔と呼ぶべき見た目だ。
それに加え、リュージュが機械竜形態に変形した時のように口からビームが放てるだけでなく、翼から飛ばした火薬に着火して爆破することも可能だ。
手数よりも一撃当たりによるダメージを重視した機体である。
3位の位置には水属性のレヴィアタン。
七つの大罪において嫉妬を司るレヴィアタンは、悪魔竜人と呼ぶべき外見がデフォルトで水龍形態にも変形可能だ。
どちらの形態でも口からビームを放てるだけでなく、翼から展開したエネルギーフィールドで一定以上吸収した属性攻撃を任意のタイミングでビームに収束して放てる。
4位の位置には土属性のベルフェゴール。
七つの大罪において傲慢を司るベルフェゴールは、防御特化のゴーレムで攻撃を反射できる4枚の盾を衛星のように展開している。
5位の位置には火属性のマモン。
七つの大罪において強欲を司るマモンは、アシュラと同じく6つの腕にそれぞれ剣を握っており、背中の一対の翼に仕込まれた銃で遠い敵も攻撃できる。
6位の位置には風属性のベルゼブブ。
七つの大罪において暴食を司るベルゼブブは、持久力に長けたゴーレムであり、攻撃を吸収できる盾を4枚ずつ衛星のように展開している。
7位の位置には水属性のアスタロト。
本来であれば、残る七つの大罪である色欲を司るアスモデウスのはずなのだが、GBO制作陣がゴーレムと色欲を結び付けられずに八つの枢要罪に含まれていた憂鬱が選ばれた。
憂鬱と言えばアスタロトだから、アスモデウスの代わりにGBOで登場している。
アスタロトは自身に何かが近づけば近づく程そのスピードの落ちるフィールドを展開しており、装備されている銃で発射する時は逆に発射後のタイミングで銃弾が加速する。
いずれも特徴的なゴーレムの準備が整ったため、レース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1』
「ギフト発動」
恭介がギフトの発動を宣言し、彼はドラグレンのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。
『GO!』
スタートの合図と同時にドラキオンがスタートダッシュを決め、1位を奪われたくないルシファーが全武装でドラキオンを攻撃した。
(危ないな)
ドラキオンを巧みに操縦し、恭介はルシファーの攻撃を全て躱してみせた。
その時には恭介が2位になっており、3位のサタンが翼から火薬を飛ばしてドラキオンを攻撃していた。
恭介が躱した銃撃がその火薬に命中してド派手な爆発が生じ、ドラキオンはその爆風を利用して1位になった。
それに対して、順位を抜かされたルシファー以下のゴーレムはその爆発に巻き込まれてしまった。
(俺以外のゴーレムは犠牲になったのだ)
そんな感想を抱きつつ、恭介は1位のままコースを独走する。
ハザードコロニーは武装した小惑星なのだが、今は緊急事態ということでアラームが鳴り続けている。
このコースは他のコースと異なり、コースを破壊しようとする勢力とコースの破壊を防ごうとする勢力が戦い、両勢力からレース参加者が狙われる。
コースを破壊しようとしているのは白塗りのゴーレム部隊であり、それを阻止するべく勢力が黒塗りのゴーレムの部隊だ。
恭介が最初に遭遇したのは白いドミニオン部隊で、ドラキオンを見て問答無用で攻撃し始める。
(白いドミニオン。レース限定だろうな)
珍しいドミニオンを見て気になる気持ちはあったけれど、今はレースに集中すべき時だから恭介はトップスピードを保ってドミニオンを近づけさせない。
ハザードコロニー限定のゴーレム達の特徴として、自分達に反撃しない者はしばらく追って成果を挙げられないと追いかけなくなるのだ。
そういったゴーレムに時間をかけるのが無駄だからであり、恭介のレースにおけるできる限り非殺生の方針と上手く噛み合ったと言える。
1周目はそのおかげで大した苦労もなく終わり、恭介は2周目に突入した。
2周目に入った途端、白と黒の勢力の戦いが激しくなり、コースのあちこちで爆発音が鳴り響き始める。
黒い勢力のジャンクパラディン部隊がドラキオンを捕捉し、一斉に接近して来る。
(ジャンクパラディン程度じゃ相手にならんぞ)
決して臆することなく進み、トップスピードのドラキオンが纏う風のバリアでジャンクパラディン部隊は吹き飛ばされた。
しかし、黒い勢力のジャンクパラディンは通常の機体とは異なり、背中にミサイルランチャーを背負っている。
それらが背後から発射され、恭介は面倒な事態になったと溜息をつく。
どうやってやり過ごすか考えていたところ、前方に手負いのマモンがいたため、恭介はミサイルの処理をマモンに擦りつけることに決めた。
マモンは接近して来るドラキオンを迎え撃とうとしたが、それをドラキオンにするりと躱されてその背後から向かって来たミサイルをまともに受けてしまい、大破して走行不能になった。
(悪いけどこれ、レースなんだ)
そう思うだけで気持ちを切り替え、恭介は先に進む。
2周目の後半でレヴィアタンが走行不能な状態で撃墜されており、その少し奥にはベルフェゴールとベルゼブブが空中戦を繰り広げていた。
ドラキオンの接近で注意が散漫になった隙を突き、その上空を飛んでいたアスタロトが2機を撃墜した。
アスタロトは自身の安全第一の方針だったため、ドラキオンに勝負を挑まずドラキオンに追い抜かれても見送るだけだった。
恭介が3周目に突入したことにより、ハザードコロニーに白と黒の勢力の艦体が接近して砲撃を開始した。
(冗談じゃねえぜ!)
コースを挟んで白と黒の艦隊が主砲と副砲を順番に放ち、勢力争いの火力が一気に上がる。
それだけとは言い表せない爆発が前方で起こり、恭介はサタンがその爆発に関与しているだろうと予想した。
半周した結果、大爆発に巻き込まれてサタンだけでなくその前方にいたルシファーまで走行不能になっていた。
(ブラストキャリッジを思い出す爆発だったな)
爆破地点を通過した時、恭介は今じゃ乗る者がぶっ飛んだギャンブラーしかいないブラストキャリッジを思い出してちょっぴり切なく感じた。
結局、あの大爆発のおかげで恭介はルシファーとサタンを相手せずに済み、そのまま1位でゴールを通過した。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』
アナウンスが聞こえてすぐに、恭介はレース会場前に移動して
ドラグレンのコックピットに戻ったら、レーススコアがモニターに表示されたのでそれをチェックする。
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レーススコア(ソロプレイ・ハザードコロニー)
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走行タイム:38分19秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:0回
他パイロット周回遅れ人数:7人
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×5枚
資源カード(素材)100×5枚
50万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×50
ぶっちぎりボーナス:モーセの設計図
デイリークエストボーナス:50万ゴールド
ギフト:
コメント:恭介君ってば本当にリアルラックが高いんだから
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モーセはGBOにおいて、麗華が操縦するソロモンと設計図を合成できる唯一のゴーレムだ。
それが恭介の手中に収まったことに対し、ルーナはドラグレンのモニターに現れてやれやれと首を振った。
リミットブレイクキットは手に入らなかったものの、麗華のゴーレムが強化できるならそれで良いとご機嫌な様子で恭介は瑞穂に戻った。
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