第175話 あんな所に丁度良い踏み台があるぞ
転送が終わって視界が切り替わると、仁志は既に5位の位置に移動していた。
ケイローンのモニターにレース参加者の情報が映し出され、どんなゴーレムに乗る誰と戦うか把握したら、フォルフォルがレース開始のカウントダウンを始めるのを待つしかない。
(空を飛べるのはメビィだけ。悪くない引きだ)
『3,2,1,GO!』
レース開始直後、パリジャンの乗るジャンクバスターのコックピットから、メビィに向かって鎖が伸び、それがメビィをグルグル巻きにした。
これにより、メビィは武装を使えなくされてしまい、ジャンクバスターという錘を牽引しなければならなくなった。
パリジャンがレース開始と同時に発動したのは、
今は移動のみしか許可されていないので、ハンバーガーソウルはまんまとパリジャンの作戦に嵌ったと言える。
スタート地点でゴタゴタやっている間に、仁志のケイローンがスターゲイジーパイのアラクネとザワークラウトのスフィンクスを抜いて1位に躍り出る。
マグマ&ウェーブは火山近くの海辺のコースだが、地面はマグマが海水によって冷やされてできたものだ。
それゆえ、所々に漂流物が障害物のように落ちており、どういう訳かその漂流物が通常のサイズよりも大きくて走行の邪魔になる。
先頭を進む仁志は、漂流物の中から出て来たハーミットクラブを見つけた。
ハーミットクラブは地面にトゲトゲな球体を投げ始める。
(撒菱か。面倒な物を持ち出すなよ)
ケイローンは空を飛べず陸を進むゴーレムだから、前方に撒菱が広がるのは望ましい展開ではない。
面倒だと思っても対応できない訳ではないから、仁志はケイローンを操縦して漂流物を足場に跳ねるようにして進む。
『良いね! 日本のサビザンが匠の技を見せる! 漂流物を足場にしてハーミットクラブの撒菱を躱してるよ!』
フォルフォルがレースで最初に行った実況は、誰かがリタイアしてゲス発言をするものではなかった。
それから少ししてから、2位のスターゲイジーパイも仁志の動きを参考にして漂流物を足場にするように飛び跳ねる。
ところが、仁志が飛び跳ねた時とは違う事象が発生した。
火山弾がコースの至る所に降り注いだのだ。
数ある内にいくつかが、ジャンプ中のスターゲイジーパイの頭部に命中した。
頭部のカメラが壊されてしまえば、コックピット内で外の様子を知るにはセンサーの反応に頼るしかない。
『なんてこった! スターゲイジーパイのアラクネが頭部を損傷! あっ、パリジャンのジャンクバスターの放ったビームがコックピットに命中した! F国のパリジャンがE国のスターゲイジーパイの物的財産を没収したよ! やったね!』
いつの間にかスフィンクスは追い抜かれ、鎖で動きを制限された
その直後に、時間切れで
そうなれば、ずっと良いように使われていたハンバーガーソウルはやり返さなくては気が済まない。
執拗にパリジャンを狙い、パリジャンは火山弾とハンバーガーソウルの攻撃の両方から逃げる羽目になった。
後ろがごたごたしている間、仁志は火山弾に注意して先へ進んでいた。
しかし、注意すべきは火山弾だけでなく、徐々に火山の方からコースに向かって流れて来ていたマグマにも注意しなければなるまい。
困ったことにマグマがコースを覆った時の足場がないから、仁志はとにかく先を急いだ。
この手のコースならば、2周目に突入することで状況が変わるからである。
今まで順調に進めたこともあり、仁志はマグマがケイローンの走るコースに届くギリギリ前に2周目に入ることができた。
それにより、海側から大波がコースに向かって来る。
変化はそれだけに留まらず、コース全体が揺れて落とし穴が掘られ、足場や壁になりそうな岩が隆起した。
(これならマグマはなんとかなりそうだな)
仁志はコースの変化を見てホッとした。
コースの変化はこれだけだったが、コース上に現れるモンスターはハーミットクラブだけの状態から1種類増えていた。
それはトーチバードである。
陸からはハーミットクラブが陰湿な妨害をして、空からはトーチバードがパイロットを苛立たせる妨害をするのがマグマ&ウェーブの2周目なのだ。
ケイローンの脚力を活かし、仁志は足場にできる岩をぴょんぴょんと飛び跳ねて進んで行く。
ハーミットクラブの撒菱が仁志にとって意味をなさないものになり、トーチバードの攻撃は反撃せずに避けることに専念する。
そうしている内に再び火山弾がコース内に降り注ぎ始める。
『遂に仕返し成功! A国のハンバーガーソウルが火山弾と落とし穴に気を取られたF国のパリジャンを撃墜! ハンバーガーソウルがパリジャンから物的財産を奪い取ったよ! おめでとう!』
パリジャンが撃墜され、生き残っているパイロットは3人になった。
マグマがコースに流れ込み、その直後に大波がコースを覆うように迫って来たため、仁志は足場にしている岩を踏み込んで大きく跳躍した。
(飲み込まれてなるものか!)
その願いはなんとか聞き届けられ、大波はケイローンの足元まで来てコースの地面を覆った。
マグマが冷え固まり、コースの地面が所々歪な形に変わる。
着地した仁志は次の波が来るまでにできるだけ進みたかったから、凸凹していない場所を進んでいく。
仁志が3周目に突入した時、コースのあちこちから溶岩柱が噴き出すようになった。
天気は風が強くて今にも雨が降りそうな雲行きに変わり、ハーミットクラブやトーチバードがコースから姿を消した。
マグマ&ウェーブの3周目はギミックオンリーであり、火山弾とマグマ、大波は最初からどんどんコースに押し寄せて来る。
足場に困っていた時、仁志は前方にスフィンクスを見つけた。
(あんな所に丁度良い踏み台があるぞ)
ザワークラウトが操縦するスフィンクスはバリアを展開し、生還することを最優先にしてスピードを二の次にする作戦のようだ。
仁志はスフィンクスのバリアを踏み台にして、大きな跳躍をして狙っていたポイントに着地した。
普通ならばムッとするところだろうが、ここでキレて反撃したところで敵うとも思っていないから、ザワークラウトはおとなしく仁志を先に行かせた。
それから数十秒後、スフィンクスの後ろにメビィがやって来た。
ハンバーガーソウルは落ちている小銭を拾う性格らしく、1位は諦めてザワークラウトを仕留めることにしたようだ。
スフィンクスの堅牢な防御を中々崩せず、ハンバーガーソウルは少しムキになっていた。
そのせいで火山弾に気づくのが遅れてしまい、メビィのボディに火山弾が命中した。
これは千載一遇の好機だと判断し、ザワークラウトはバリアを解除して装備していたマシンガンで中破したメビィを撃破した。
『素晴らしい! D国のザワークラウトの反撃により、A国のハンバーガーソウルが撃墜! ザワークラウトがハンバーガーソウルから物的財産を奪い取ったよ! コングラチュレーション!』
後方での銃撃戦に意識を向けず、仁志は自分のレースに集中して火山弾とマグマ、大波、溶岩柱を慎重に躱してゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は日本のサビザン&ケイローンだぁぁぁぁぁ!』
フォルフォルは仁志が1位であることを宣言し、ケイローンは魔法陣によってイベントエリアに転送される。
転送中に仁志はモニターに表示されたレーススコアに目を通していく。
-----------------------------------------
レーススコア(第2回新人戦・マグマ&ウェーブ)
-----------------------------------------
走行タイム:38分34秒
障害物接触数:22回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:0回
他パイロット周回遅れ人数:3人
-----------------------------------------
総合評価:A
-----------------------------------------
報酬:資源カード(食料)100×5枚
資源カード(素材)100×5枚
50万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×50
ギフト:
コメント:仁志君もギフト使わない勢なんだね
-----------------------------------------
「ギフト使わない勢ってなんだよ。敵に与える情報は少ない方が良いだろうに」
『仁志君も恭介君と同じことを言うね。まったく、日本チームはすぐ隠すんだから』
「そんなこと言われても知らん」
『やれやれだね』
フォルフォルが苦笑した直後、仁志はイベントエリアに戻って来ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます