第12話

「お主らアレイスター家はノックの仕方も忘れたのかえ?」

 

 目の前の空間が裂け、そこから一人の美しい女性が姿を表す。

 一切衰えない体に練り上げられた強力な魔力は他のエルフとは比べ物にならないことがわかる。

 目の前にいる女性はハイエルフであった。やっと出てきた……。

 ちなみにだけど服は……着ていなかった。え……?なんで全裸なの?


「いや、ノックさせてくれない君等が悪いやん?」


「……理不尽さまで遺伝する必要はなかろうて。ノックはともかくとしてわざわざこんなに大暴れする必要はないやろがいな」


「普通に結界破壊して入ってきても捕まって終わりでしょ。君たち引きこもりは引きずり出せないでしょう?」


「そうではあるがのう」


「別に被害自体は出していないだろう?それにあんたを引きずり出せればすべてが解決だ」


「アレイスター家とまともに会話しようとした我が悪かったな」

 

 アレイスター家の思考回路は基本的にぶっ飛んでいる。

 ものすごく理不尽で、領民が苦しんで死ぬのは絶対に認めず、領民のためなら道具とされても平然としているのがアレイスター家なのだ。


「ところで君はなんで全裸なん?」

 

 僕は一番聞きたかったことを訪ねてみる。


「あぁ……ハイエルフらは全員性欲などとうに枯れ果てたのでのう。わざわざ服を着て隠す必要もあるまいて」


「この場にいる男連中は決して枯れていないけど」

 

 鼻血を出してぶっ倒れている周りの男たちへと視線を向ける。色々とひどいことになっている。

 

「そこら辺の若造など関係ないわ。アリンコに裸を見られて恥ずかしがるのは異常じゃろ……汝も別に我の裸などどうでもいいであろう?」


「まぁ……そうだね」

 

 僕はハイエルフの言葉に頷く。

 別に性欲は枯れていないけど、裸だーッ!!!と喜べるような人生は残念ながら送れていない。


「それじゃあ……さっさとハイエルフが住まう異空間へと行こうとするかのう」

 

 ハイエルフは王と思われる女性へと視線を向ける。


「この男については任せておれ。結界なら……」


「あぁ……貼り直すよ」

 

 僕はサクッと魔法を発動させて大規模な結界を貼る。


「……ッ!?!?」

 

「これでも前のよりも強度が高いはずだよ。しっかりとしたものは後でちゃんと貼るけど……今はこれで十分でしょ?」


「……ふー。聞きたいことが増えたようじゃのう」


 ハイエルフの女性がボソリと呟いた。


「では、行こうぞ」


「ん」


 僕はハイエルフの言葉に頷き、異空間へと入っていった。

 その後をミリアとアレリーナがついてきた。



 


「え?」

 

 エルフたちは全て無視されて嵐は去っていった。

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