第34話
「……」
私は自らの気配を周りと同化させ、独特の歩行術で敵との距離を詰めてナイフを振るう。
私のナイフは動きが鈍くなった敵の首を容易く切り裂き、命をこぼれさせる。
「ふー……やりやすいわね」
私は一人、小さな声で呟く。
そして、私は視線を彼女の方へと向ける。
「くぅ……やりにくいのじゃ……!いくらなんでも多すぎじゃろッ!!!」
そこにいるのはたくさんの魔族に囲まれて四苦八苦しながら戦っているアレリーナである。
彼女は状態異常魔法と弱体化魔法のエキスパート。
実に嫌らしい戦い方で敵と戦っていた。
そんな彼女と私の相性は抜群に良かった。
基本的には暗殺者スタイルの一撃必殺と毒の操作を武器として戦う私にとって理想のパートナーと言える。
私は彼女をうまく使い、敵を倒し続けていた。
……それでも魔物の数は非常に多い。全然足りないのだけど。
「遅いわね。……ちっ。さっきからあの子は何をしているのよ。殺して良いのかしら?」
少し離れたところで大量の魔族を相手どってくれているマルジェリアが居なければ既に戦線は崩壊しているだろう。
……エルピス様のおもちゃにされているイメージしかなかったけど、本当に強い人なのね。
エルピス様の親友であらせられるアルミスがマルジェリアに慄き、適当な扱いに震えていた理由がわかった気がするわ。
それと……『殺して良いのかしら?』とはどういうことだろうか?
あの子とはエルピス様のこと……?もしかして魔族を殺すことはエルピス様に悪影響を及ぼす可能性が……?
……。
…………。
だったらいい気味ね。
エルピス様が困るのは万々歳。エルピス様なんて不幸になってしまえば良い。
私の父親を殺したエルピス様。
そんな人を好きになるはずがない。
嫌い。嫌い。嫌い。大嫌いだ。
だから、私がエルピス様の不幸を望むのは極自然なことだ……何もおかしいことなんかじゃない。
私は自分を偽ってなどいない……ッ!!!
「ッ!」
私は次の狙いを定めて行動を開始した。もっともっと殺して、困らせるのだ。
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