第38話

「あれ?生徒会長は居ないのか?」

 

 生徒会室へと入ってきたアルミスが生徒会室を見渡してボソリと呟く。

 ここにいるのは、僕とミリアとアレリーナだけだ。

 もはや、生徒会室は僕たち生徒会メンバー一年生のたまり場となっていた。二、三年生は生徒会室に来ないしな。 


「あぁ……また色々あるらしいよ」

 

 僕はアルミスの言葉にパフェを食べながら答える。


「……また?今度は何があったんだ?父親が王都へと来ているらしいよ」

 

 生徒会長のお父さんは、南方の貴族たちを牛耳っている辺境伯である。

 この国は四方を敵国に囲まれている。

 そのため、その防波堤となる辺境伯には大きな権力が与えられている。

 その権力は侯爵を越え、公爵にさえ迫るほどである。

 ……敵国への最大の防波堤として機能しているアレイスター家の扱いと、辺境伯との扱いの差よ。


「……あぁ、紫紺の死神か」

 

 アルミスがボソリと呟く。

 そして、僕の方へと視線を向けてくる。

 ……何故だろうか?


 既に紫紺の死神が反逆を企てた侯爵家一家を惨殺したということは広く知れ渡っていた。

 当然南方の貴族たちが王家に対して反逆を企てことも知れ渡っている。

 学院に通っている南方の貴族たちの子供たちも今日は学校に来ていなかった。

 

 生徒会長のお父さんは南方の貴族を牛耳る辺境伯として中央へと呼び出されているのである。

 ……んー。生徒会長のイベント。さっさと解決してやろうかな。

 辺境伯は重要な立場として置かれている。

 だが、アレイスター家についての知識はゼロに近い。国境を任せるほどに信認が置かれている貴族家であると言えどもアレイスター家の存在は秘められている。

 アレイスター家は辺境伯が暴走したときに対処するための切り札だし。


「にしてもエゲツないよな……悪臭を放っている肉塊、奥さんと娘さんは殺すことも回復させることも出来ない。寿命が来るまで永遠に苦しみ続けるのだろう?」

 

 既に精神は殺しているので、苦しんではいない。

 苦しげな悲鳴は上げ続けているけど。

 悲鳴を上げ続ける醜悪な肉塊。これ以上の見せしめはないだろう。


「だからこそこの学院に通っている南方のガキ共は恐怖しているだろうな」


「……だな。彼ら、彼女らが哀れだ……なんとか助けられないだろうか」


 学院にいる生徒たちは人質としての役割も兼ねている。

 僕のもとにいつ彼らの暗殺依頼がやってきてもおかしくないだろう。

 アルミスがずっとこちらのことを見つめながら延々と話し続ける。


「ふふふ」

 

 それに対して僕は笑顔を返した。

 

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