第49話

「ふわぁ」

 

 心臓を抜き取られ、ゆっくりと体を倒していく第三級魔族、アズカバンのことを眺めながら僕はあくびを浮かべる。

 ……。

 …………。

 まぁ……うん。及第点だな。各々ちょいちょい反省点、足りないところがあったりもするが、まぁそこらへんの改善はおいおいやっていけば良いだろう。


「下らねぇ」

 

 僕は潰した心臓を地面へと放り投げる。


「おい」


 キャサリンへと僕は声を掛ける。


「は、はいッ!?」

 

 それに対してキャサリンは必要以上に反応を示す。

 

「お前の母はどうした?……なんか遠くで気絶しているが」


「ハッ!?」

 

 僕の言葉にキャサリンはふと思い出したかのように言葉を上げる。


「起こしにいかないと!」

 

 へたり込んでいたキャサリンが慌てて立ち上がり、キャシーさんがいる森の中へと入っていた。


「ありがとうございます、ご主人さま。ご足労かけて申し訳ありません」

 

 ミリアが僕の元へとやってきて、頭を下げる。


「構わん」

 

「……それにしても本当にすごいんだな」


「そうですね」

 

 僕がアズカバンを瞬殺したことに対してサブマとリーリエが呆然と呟く。

 良い感じに格の違いを見せつけられたのではないだろうか。全員アズカバンくらい瞬殺してくれないと困るからね。

 魔王とか、自分以外の魔族全員を相手取っても余裕で勝利出来るような奴だし。


「……もう少し速く助けに来なさいよね」

 

 ラザリアが僕の足を蹴りながら呟く。


「どうせ最初から起きていたのでしょう?」


「「「え?」」」

 

 ラザリアの一言に他の三人が驚愕する。


「……当然でしょう……この男は生きる伝説であるあの女と勝負した男なのよ?すべて計算通りでしょう?それくらい出来ないとあの女を相手に対等に戦うなんて無理よ」

 

 やっぱりラザリアは気づいていたか。

 ラザリアのマルジェリアへの信頼は非常に高く、それに比例するようにマルジェリアとのまともな勝負を演じた僕に対する実力面での信頼は非常に高い。


「どうせ少し前のちょっとした野暮用ってのはあの魔族の対策でしょ?……それに今日のあなたはなぜか窓を開けて寝ているしね。すべて予定通り。そう考える方が自然でしょ?」

 

「くくく……まぁな」


「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええ!」」」

 

 ラザリアの言葉に頷いた僕に三人は驚愕する。


「え?……起きていらしたんですか!?」

 

 いつも……基本的には冷静なミリアも驚愕している。


「当たり前だ……まぁ、今回の件はお前らへの試験だよ。ちょうどアズカバンがこちらへと来ようとしていたから利用させてもらったんだよ」

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