第50話
「じゃあ……いってらっしゃい」
笑顔で告げられるキャシーさんの言葉。
「うん!行ってくる!」
それに対してこれまた笑顔のキャサリンが答える。
アズカバンの襲撃から早いことでもう一週間。
僕たちは学院の方へと帰ろうとしていた。
長くこっちの方に居すぎて、学院の方ではもう夏休みが始まっている。
「……本当に大丈夫なの?」
ラザリアが心配そうにボソリと呟く。
「うん!大丈夫だよ!私はもう元気だしね!」
それに対してキャサリンが元気よく答えた。
キャサリン。
彼女もまた、僕たち着いてくることになる。
転入生として学院へとやってくることに決まったのだ。ちゃんとマルジェリアにはここに来る前から許可を取っている。
「……で、でも……」
「案ずるな。僕が調整している。何も心配する必要はない」
ぐちぐち要らぬ心配をしているラザリアへと告げる。
「お前が……」
それに対してラザリアは心底嫌そうな表情を浮かべ、その後に沈黙した。
「住む場所もうちだものね……何も心配は要らないわね……」
「ま、そういうことだ。僕とマルジェリアが動いているのだ。これに対して何か干渉出来るような人間が居るとしたら、五賢会だけだ」
五賢会の連中はどうしようもないような老害ばかりが集まっているような組織ではあるものの、それでも混血に対する差別を持っている人はいない。
「……あぁ、あの人たちね」
ラザリアはまるでわかったかのように頷いているけど、イキっているだけでわかっていないだろう。名前くらいは聞いたことあるだろうけど、その組織の実態までは知らないだろう。
基本的にあのヘタレ王は偉大なる王なのだ。年老いてもなお、強い威圧を纏っている男なのだ。
表面上は。
「ま、何も問題はねぇよ。……心配事があるとするのならばミリアだけだよ」
僕はミリアへと視線を送る。
「ピッ」
ミリアがピタリと固まった。
歩いては帰らせないよ?
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