第48話

「静かに寝れねぇじゃねぇか」

 

 一つの小屋から、一人の少年が出てくる。

 

「……ッ」

 

 決して、強そうとは言えない見た目。

 まだ小さな、少年。とても可愛らしい見た目の少年。


「誰だァ?てめぇ」

 

 そんな見た目には似合わない粗暴な口ぶりとともに姿を表した少年を前にアズカバンは体を膠着させる。


「なんとか言えや、ゴラァ」 


 そして、その少年はアズカバンの目の前にまで立った。

 ここまで近くに近寄られても、アズカバンは動くことが出来ない。恐怖で。


「……な、何者だ?」


「質問に質問を返すなよ」 

 

 少年はゆっくりと拳を動かす。


「……ッ!?」

 

 それに対してアズカバンは過剰に反応して、距離を取る。


「何座り込んでやがる」

 

 少年は跪いてくることで、ちょうど目が合うようになったキャサリンへと視線を送る。


「だ、駄目……」

 

 キャサリンが声を震わせながら呟く。


「あ、あれには勝てないよぉ。魔法も、剣も強くて、それで、それで、こっちは魔法が使えなくて……だ、だから、私が……」

 

 体を、言葉を震わせながらキャサリンは……。


「ふんっ」

 

 少年は震えているキャサリンの頭へと手を起き、強引に頭を撫でる。


「僕は言ったはずだぞ?僕に出来るのは殺すことだけだと。だが……」




「殺すことだけは僕に任せろ」




「すぐに終わる」

 

 少年の姿が消える。


「……ァ?」

 

 少年は、アズカバンのすぐ後ろに立っていた。

 

 ドクンッドクンッ

 

 掲げられた少年の右腕には心臓が握られていた。


「ごふっ」

 

 アズカバンの口から血が溢れ出す。

 ……胸、心臓が会ったはずの場所。

 そこには空洞があった。


「ま、まさか……おま……」

 

 アズカバンが体を揺らし、血を垂れ流す。

 足元がぐらつき、バランスを崩す。


「殺すのに魔法など必要ない」

 

 少年は心臓を握りつぶした。

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