第10話
「次は連射性と発動速度を確認するための試験だ。あの的を正確に撃ち抜いてくれ」
何故か遠い目をしておられる女性の言葉と共にいくつもの的がゆっくりと浮かび上がってくる。
「了解しました」
僕が得意とする魔法。その一つが空間魔法。そしてもう一つが雷魔法である。
「では、開始です」
「ほいさ」
女性の開始を知らせる言葉。それを聞いて僕は雷魔法をいくつも、無詠唱で展開した。
「ほえ?」
音を置き去りにする速度で真っ直ぐ突き進むいくつもの雷は的を全て一撃で打ち抜き、灰へとその姿を変えさせた。
ドンッゴロッゴッ
的が灰となった後に雷の大きな音がこの場を大きく揺らした。
「ほえ?」
女性は完全に硬直している。口をぽかーんだ。見事なアホ面を晒している。
目の前の女性だけじゃない。この体育館にいた全員が信じられないようなものを見るような瞳で眺めていた。
「どうですか?」
「え……あ、うん。お、オッケよ」
「点数はどんな感じでしょうか?」
「あ……なんか的全部無いし、いつ魔法が発動したかもわからないし……うん。満点、かしら?」
「ありがとうございます」
僕は笑顔を浮かべてそう告げる。
「では。僕はこれで失礼しますね」
最後の試験である魔法試験を終えた僕は晴れ晴れとして気持ちで体育館を後にした。
「ぶぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええ!?ど、ど、ど、ど、どうなっているのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!?」
「いやいやいやいや!?なんじゃあれ!?」
「何が起きた!?起きた!?どういうこと!?意味がわからないわ!!!」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええ!!!」
後ろから困惑の声が聞こえてくるけど気にしない気にしない。
僕は体育館の扉をガチャリと閉じる。
体育館には中の音を漏らさない消音結界が貼られているため、一度扉を締めてしまえばもう音は聞こえてこない。
「お?もう終わったのか?」
「……あ。さては出来なくて全部飛ばしてきたのか?駄目だぞ?せめてやる気ぐらいは見せておかないと」
「あ。大丈夫です。お気になさらず」
あまりにも早く終わった僕に驚いて、この学園の校門に立っている門番の人が話しかけてくるが、僕は華麗に無視する。
試験が終わったら、自由に帰宅していいのだ。実にありがたい制度である。
「んー。はぁー」
これで試験は終わり!!!多分歴代最速だったのではなかろうか?
さーて。これから娼館の方にでも行こうかな!
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