第15話

「戻ったよー」

 

 僕は娼館へと戻ってくる。

 もはやここが第二の実家と言っても良いかも知れない。それくらいの安心感がある。

 第一の実家が暗殺家で、第二の実家が娼館という異世界転生者は僕くらいのものじゃなかろうか?

 

「うっ」


 僕が扉を開けて部屋に入った瞬間、僕のお腹に強い衝撃が走る。

 完全プライベートモードで、他人の気配なんて気にしていないから全然避けられなかった……。


「心配したんだからぁ」


 僕のお腹に突撃してきたのはエウリアだった。多分扉の前で待っていてくれたのだろう。

 くらっとするような甘い匂いが僕を刺激する。


「まだ会って二日だけど……かなり親近感を持っているのだからね?私は。……いなくなったら寂しいわ」


「……ごめん。でも、安心して?国王陛下にも平然と会話して許されるような男の子だから」


「なにそれ……って笑いたくなるけど、平然と近衛騎士を殴り潰していたもんね……」

 

 僕の自信満々の言葉にエウリアが呆れたように呟いた。

 近衛騎士。

 僕を迎えに来た騎士は、近衛騎士と呼ばれる存在であり、国王陛下直々に認められ、その警護を任される騎士。

 この国の騎士で最も気品が高く、位の高い地位にいると言っても過言ではないだろう。

 普通の場合だとまだ当主にもなっていない貴族の嫡男の、大した位でもない僕が殴り潰していい相手ではない。


 だが、やった。

 

 どこまでも自由に。どこまでも傲慢に。どこまでも我儘を貫き通す。

 今までじゃ絶対にありえないアレイスター家としての姿。

 それを僕が晒し続ければ、否応にも僕に注目しざるを得なくなる。

 しばらくはアレイスター家そのものにも監視の目が続くだろうが、お父様がしばらく大人しくしていて従順にしていれば、自ずと監視の目が減っていくだろう。

 僕に注目が集まり、監視の目が僕に集まれば集まるほど、アレイスター家そのものへの監視は薄くなり、お父様も動きやすくなるだろう……。


 別に目立たず行動しても良かったけど……どうせやるなら好きにやった方が楽しいよね?


「……貴族の色々についてはツッコまないことにするわぁ。無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいわぁ。……今日もたくさんエッチなことをしましょうね?」


 エウリアが僕のことを上目遣いで見つめてくる。


「ふふふ、良いよ」

 

 僕はそんなエウリアの可愛いぷっくりとした唇に自分の唇を重ね合わせる。

 舌が絡み合い、唾液が糸を引く。

 

「ただし徹夜は駄目だからね?」

 

「きゃっ」

 

 僕はエウリアをお姫様抱っこで持ち上げ、そのままベッドへと向かった。

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