第14話
僕の言葉。並みの人間であれば失神するであろう『仕事モード』の僕の言葉。
「……ッ」
それに国王陛下は言葉を詰まらせる。
……だがしかし、こんなことで止まってしまうような軟弱の人間であれば一国の王などとてもじゃないが務まらない。
「余には、アレイスター家の領地を軽々とひねりつぶす力がある」
国王陛下の力強い言葉。
「僕には、国王陛下並びに貴族達を軽々とひねりつぶす力がある」
それに言葉を被せるように笑顔で告げた。
「「……ッ!!!」」
その瞬間、後ろの二人から感じる無言の圧力が強くなる。
殺気が、魔力が、威圧が、僕を押しつぶさんと強くなる。
「ふっ」
呑み込まれる。
深淵を思わせる僕の殺気に、魔力に、威圧に。
弱々しい二人を呑み込み、『僕』という存在がこの場を支配する。
「我らは短剣。我らは道具。我らは国を守る最初の針。それ故に我らは目立たず、闇を生息地とし永遠となる」
アレイスター家の、長年守ってきた考え。根幹。
「だがしかし。今や我がアレイスター家は闇にあらず。我らという存在はひどく知れ渡った。すでに我らは先祖の誓いを違えた」
だがしかし、そんな考えはすでに壊れた。
僕らが立っている場所は闇ではなく、目立つ位置に立っている。
「王国最低貴族として有名になるのも、王国最高貴族として有名になるのも、もはや何も変わらない」
「そんなこと……させるわけには……」
「いかない、と?どう止めるつもりだ?我が領地を荒らすというのであれば、我らは王国全土を焼くぞ?すべて許さぬ。すべてを灰燼と帰すぞ?我らは……この国の民を決して許さぬ憤怒の剣へと成り果てるぞ?」
僕はゆっくりと立ち上がる。
護衛として立っているはずの二人はすでに動けない。腰が抜け、ただ呆然とこちらを眺めている。
目の前に。
国王陛下の目の前に僕は立つ。
「我らの忠誠は王家によって足蹴にされた。我が家の名誉はすでに地へと落ちた。我らはもはや只の錆びついた短剣でしかない」
僕の口から漏れる息が国王陛下の顔面を撫でる。
無臭。
幾度もの肉体変容によってもはや匂いがなくなってしまった息が国王陛下へと届く。
「あなたが最初に裏切った。我らが忠誠はすでにここにあらず」
僕は振り返り、国王陛下へと背を向ける。
「我らは我が領地のため、この国に尽くそう。だがしかし、我らはすでに王族が道具にあらず。よく覚えておくが良い」
それだけを言い残し、僕はこの部屋から立ち去る。
「すまない……」
部屋を出る直前に聞こえてきたその一言を、僕は聞かなかったことにしてあげた。
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