第15話

 かつて。

 世界には最高神をトップにいくつもの神々が存在していた。

 神々が人類を愛し、守り、育てる。

 そんな古の時代。

 未だ人が神のペットだった時代。

 

 そんな時代は唐突に終わりを迎える。

 とある一柱の女神が邪神へと堕ちたのだ。

 堕ちた理由は簡単。最高神による性行為の強制である。

 神にとって性行為とは特別に大事なものであり、神と神が、神と人が性行為をした場合、格の低い存在が性行為をした相手に一生隷属するという仕組みが存在している。

 最高神に隷属したくなかった女神は、レイプされ、恐怖に支配された女神の力が暴走し、邪神へと堕ちた。

 女神に付き従う天使たちも悪魔へと堕ち……女神は、邪神は他の神々から狙われることになる……はずだった。

 

 最高神の傍若無人ぶりには他の神々も限界だったのだ。

 多数の神々が最高神を裏切り、邪神の下に集った。その数は多く、4分の3以上の神々が最高神へと楯突いたのである。


 傍若無人たる最高神に神々が反旗を翻した、神々の戦争が起こったのだ。


 戦争は邪神たちの敗北。最高神の絶対的な力の前に神々は死んだのである。

 裏切った神々は全員滅ぼされ、邪神へと堕ちた女神は力を失って世界の底に沈んだ。

 


 物語はそこで終わらない。終わってくれない。

 邪神へと堕ち、正気を失い、力を取り戻した女神は、その力を人類に向かって振るう。

 今もなお語り継がれる人類と邪神の戦い。

 

 女神は誰よりも人間を愛した神だった。自分が人間を殺すことに耐えられなかった女神は、邪神は己を二つに分けた。善性の自分と悪性の自分に。

 善性の自分が、悪性の自分を封印して人間と邪神の戦いは終幕を向かえた。

 勇者たちが勝てたのは元々邪神が人類の滅亡を望んでいなかったからに他ならない。

 本気で人類に牙を剥いた神に……ただの人類では決して勝てるはずもない。


「ねぇ?善性の邪神様……僕を、僕とサブマを『私を殺してくれる』存在だと思った?」

 

 僕は呆然としているサブマの頭を強引に撫でながら、マキナ、善性の邪神に向かって笑みを浮かべる。

 神の物語を、当事者以外知るよしもない昔話を僕は話し終える。


「……何故、何故、そこまで知って……」


「アレイスター家舐めんな」

 

 驚愕しているマキナに対して僕は自信満々に告げた。

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