第二章 生徒会

第1話

「……は?」

 

 僕は目の前の女の言葉に疑問符で返し、睨みつける。


「あら。怖い……私を相手に睨みつけてくるとは……いい度胸ね」

 

 それに対して僕の前の女は不敵に笑う。

 僕と女は静かににらみ合い、周りがざわめき始める。

 

「もう一度言うわよ?あなた、私の家で暮らしなさい。娼館なんかじゃなくね」

 

 目の前の女、この王立騎士学院の理事長を勤めている女、魔女、世界最強。

 そんな人間が僕に向かって笑顔で告げる。


 理事長。

 『永久の魔女』の二つ名を持っている別格中の別格である女性。

 寿命が異常なまでに長いエルフの上位種であり、その寿命は永遠とまで言われているハイエルフの最後の一人である女性、マルジェリア。

 イロンティア王国建国前から生きる彼女は生きる伝説であり、最強の存在だ。

 第十二階位の魔法の使用すらも可能で、おそらくお父様よりも強いだろう。

 そんな女が学校が終わり、帰路についていた僕に当然話しかけてきて、いきなり私の家で暮らせとか言ってきたのだ。

 頭おかしいだろう。




「断る」

 


 

 僕は普通に拒絶の言葉を告げる。

 当たり前かのように。

 

 空気が凍りつく。

 

 僕の一言に。 

 ……何故だ?別に普通の感性だろう。いきなり自分の家に住みなさい。なんて言われて了承するような人間が何処にいるというのだ?

 いるとしたらそいつが騙されて、奴隷落ちして売れないかどうか心配になる。


 にも関わらず周りの人間が大慌てし始める。

 マジかこいつと言わんばかりの視線が僕へと向けられる。

 何故だ?何故なのだ?意味がわからない。

 ……いや、わかるけど。しかし!周りの同調圧力に屈する僕ではない!この程度の同調圧力に屈するような人間であれば、同調圧力大国日本でエロゲーマスター(未成年)なぞ貫けない!

 というか、R18って言う概念意味がわからない。

 何?青少年の育成を阻害するって。それを示すデータはどこ?というかそもそも青少年って何?勝手な大人の価値観で自由を侵害してきやがって……。大人が禁止するというならそれ相応のデータをよこすがよい!

 僕がもう関係ない前世のことに憤慨している間にも周りの人間は大きく騒ぎ始める。全く何故こんなにも慌てているのか。


「あぶぶぶぶぶぶぶぶ」

 

 僕と一緒に帰るべく、隣にいたアルミスは泡を吹いて、見ているこちらが不安になるくらい震えている。


「ハッハッハッハッハッハ!そう!そうね!断るのね!」

 

 それに対してマルジェリアは大きな笑い声を上げた。

 

「あぶっ」

 

 アルミスはびくんと震え、白目を剥いた。まだ倒れては居ない。

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