第25話

「ごぷっ」

 

 最高神の口から真っ赤な液体が溢れ出す。


「……ァ?こ、れ……?」

 

 口から血を垂れ流す最高神は体を前へと倒し、膝をつく


「暗殺、成功」

 

 最高神の背後。

 

「ふー」

 

 ばらまいた死体の一つを動かしている僕は最高神に向けていた拳銃を下ろし、大きく息を深く吐く。

 全てはブラフだ。

 

 邪神と一つになったのも。

 

 空間魔法の腕を上げたのも。

 

 アレイスター家が必死に積み上げてきた歴史も。

 

 全てはたった一発の銃弾を最高神の心臓に当てるためのブラフ。

 

 確実に心臓を撃ち抜けるそのタイミングを、最高神が油断しきったその瞬間を作るためのもの。

 

 元々の話、僕たちアレイスター家の世界魔法であれば、神殺しを達成することは実に容易だ。

 アレイスター家の世界魔法は『自分が殺せる確立0%の相手を確実に殺す手段を作る』というもの。

 確実に相手を殺す手段は人それぞれで持っている。

 僕の場合は今、自分の手で持っている拳銃で相手の心臓を撃ち抜くこと。

 

 問題だったのは、音速程度の弾丸で最高神の心臓を貫かなくてはいけないということ。

 音速程度じゃ確実に防がれる。

 だからこそ、最高神が完全に油断したタイミング。何の注意も払っていないタイミングを作る事が重要なのだ。

 

 空間魔法を極め、膨大な技術を重ね、神へと至ったのは最高神に対して暗殺者である自分が正々堂々と力で勝負すると勘違いさせ、暗殺するタイミングを強引に作る。


「な、ぜ……?お前はころ、した……それに、余、余は……」


「僕は自分の存在をいくつにも分けているんだ。君が殺したのはそのうちの一つでしかないんだよ。この死体一つ一つに僕は魂を乗り込ませて、その体を動かす事ができるんだよ……アレイスター家舐めるなよ。殺せない相手であっても殺すのが僕らだよ」

 

 急速に力を失っていく最高神。


「ふー」

 

 僕はそれを見ながら深く息を吐く。


「チェックメイト」

 

 砂となって落ちた最高神の亡骸を踏みつけ、僕は一言簡潔に告げた。

 これで完全に終わりだ。

 神の時代が終わり、人が支配者となる。

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