第31話

 嵐が巻き起こった地上。

 その下で。

 

「来るなッ!!!来るなッ!お前がッ……!私を誰だと思っているッ……!!!」

 

 とある一人の……何故生きているのかもわからないほどに小さく、やせ細って弱りきった老人が逃げる。

 誰から?


「……知ったことじゃない」

 

 これ以上ない濃密な殺気を漂わせるミリアから。

 ミリアの周りには一瞬で制圧された護衛のための騎士の死骸が転がっている。

 エルピスに鍛えられたミリアの戦闘力は凄まじく、不意打ちであれば騎士を相手でも軽く制圧出来るまでになっていた。


「答えなさい」

 

 ミリアは上から目線で老人に尋ねる。

 この国の最高権力者として長年君臨していた五賢会の一人へと。


「わ、私を誰だと思っているッ!!!貴様ッ!」


「黙れ」

 

 ミリアは一人になっても威張る老人の足を勢いよく斬り裂く。


「ひぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?」


「あなたはただ私の疑問に答えれば良いの」


 血を流して、もがく老人へと顔を近づけて尋ねる。


「何故……何故あなたたちは私の父親を殺したの……?」

 

 ミリアがずっと聞きたかったことを尋ねる。


「……お、お前の……?あ、あぁ……あの男か。あれは挨拶のときに不味いものを用意しやがったのだッ!!!」


「そ、そんな理由で……」

 

 老人の答えを聞いてミリアは絶句する。


「そんな理由……?この私に渡す手土産だぞッ!そんなのを万死に値するッ!ゴミッ!ゴミッ!ゴミッ!私が少しでも気に食わない奴が入れば死ねッ!それが正義だッ!この世界の私の……ッ!お前らのような使えない雑魚共は私を楽しませるためにせいぜい無様な死に姿をさら」


「この……ッ!!!クズがッ!!!!!」

 

 聞くに堪えない老人の言葉に堪忍袋の緒が切れ、ミリアはその首を叩き落とす。


「はぁ……はぁ……はぁ……やったよ。お父さん……とうとう」

 

 復讐の達成。

 それを前にミリアの心に満足感が広がる。


「あと三人……」

 

 己の復讐を完遂するために……。

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