第32話

「そんなに怒るなよ」

 

 僕は腕を捻り上げ、目の前の五賢会の一人を……若々しい見た目の女性を睨みつける。

 

 腰まで伸びた真っ白な肌に真っ白な瞳。

 肌も白く、着ているドレスも白を基調としたもの。

 既に何百、何千年生きているとは到底思えないほどの美しさと若さを持っている女性。


 普段表情は能面のようであり、瞳にも何の感情も浮かんでいない。

 しかし、今はこれ以上ないまでに怒りを顕にしていた。


「ふーッ!ふーッ!ふーッ!裏切ったなァ!!!アレイスターッ!!!」

 

 叫ぶ五賢会の一人、女性……人類最古の勇者レイハ。

 

「最初に裏切ったのはあなたの方だよ……とっくの昔にあんたとアレイスター家の繋がりは切れているんだよ」

 

 人類最古の勇者。

 アレイスター家やエルフとともに最前線へと立って邪神と戦った一人の戦士。

 公式の記録には死んだことになっている……少しだけ神に愛されているだけの人間。

 神の寵愛と言う一点で見れば

 しかし邪神を倒し、その力の一端に触れ、影響されたことで寿命と言う概念を


「……ッ!それはッ!アレイスターがッ!!!私がッ!私がッ!前に立って全てをひっぱていくッ!寿命無き私が……それこそッ!」

 

 レイハは叫ぶ。

 彼女は……心の底からそう信じているのだ。自分は正常で、自分が全てを引っぱらなくてはいけないと信じているのだ。

 とっくにまともな思考回路など残っていないと言うのに。


「五賢会……いや。あえてこの名で呼ぼう。人類最古の勇者レイハ」

  

 僕の一言。

 それを聞いて民衆がざわめき始める。

 

「今、宣言しよう。私が今。あなたから卒業し、全てを終わらせると。既に時代は変わったのだ。……あなたを殺し、旧世代を終わらせてあげるよ」


「黙れッ!!!アレイスターッ!あなたが逆らうのであればッ!再び地を舐めさせるまでッ!初めて会ったときのようにッ!!!」

 

 ……既にレイハの知っているアレイスター家は、彼女が心の底から愛したアレイスター家は無いんだよ。

 ふっ……。

 結局のところ、僕はまだまだ甘いな。




 

 あとがき。

 やべぇ。完璧な形でのざまぁにならなそう……悪役を書くのが苦手ッ!

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