第8話
「ただいまー」
屋敷の玄関の方から、小さな声が聞こえてくる。
……ちっ。帰ってきやがった。マルジェリアが帰ってきてから帰ってこいよ。……いや、マルジェリア逃げたな。
あいつとは話がしたくなくて逃げたな。
足音が近づいてきて、部屋の扉が開かれる音が聞こえてくる。
「ふぁッ!?」
絶叫。
「なっ!?なっ!?なっ!?」
大声。
「なっ……!なんでここにあなたがいるのよぉッ!?」
喧しい女の声。
「出てけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええ!!!」
耳に入ってくるのは大きな女の、ラザリアの声だった。
「はぁー」
僕は深々とため息を付き、視線を上げる。
ずっとやっていたジグソーパズルからラザリアのほうへ。
「うるせぇ」
僕は嫌悪感たっぷりに告げる。
「知るか!なんであなたがいるのよ!!!」
ラザリアは僕のことを睨みつける。
僕がマルジェリアのところで暮らしたくなくて、無意味な抵抗をあそこでした理由がこれだ。
マルジェリアの屋敷には、ラザリアが住んでいるのだ。
ラザリアは孤児。マルジェリアに拾われ、育てられた孤児なのだ。貴族しかいない屋敷の中で唯一貴族の血統じゃない人間だ。
理事長であるマルジェリアの義理の娘だからこそ王立騎士学院に入学出来たのだ。
……まぁ、実はとんでもない身分の人だった。ってなるんだけどね。
だからこそマルジェリアに拾われて、ここまで育てられているわけだし。
マルジェリアは優しく、温和な性格をしているが、汚れを知らぬ子供ではない。長き時を生きたマルジェリアは自分一人が何かをしたところで無駄だと知っている。
普通の孤児を拾って育てるような真似はしない。
「僕だって居たくて居るわけではない。どうした?僕とマルジェリアが戦ったことくらい知っているだろう?」
「……えぇ、聞いているわ!負けたそうじゃない!いい気味ね!」
「あぁ、そうだ。負けたな。だからいるのだよ。マルジェリアがいきなり部屋に住めとか言ってきてな。それに対して僕が抵抗した戦いがあれだったわけよ。負けた僕に拒否権など無い。大人しくここに居るしか無いのだよ」
「……」
「僕をここに呼び寄せたのはマルジェリアだ。文句があるならマルジェリアに言ってもらおう。しっかりとマルジェリアを言い負かせてくれたまえ。僕のためにな。さすれば僕はこんなところからおさらば出来る」
「こんなところって言うな!!!」
ラザリアは僕の言葉に噛みつき、叫んだ。
……早く帰ってこい。マルジェリア。
あとがき
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『既にBADEND済みで国外追放されている悪役貴族に転生した僕はどうやら最強で、他国の王女を始めとするヤンデレ美少女たちに囲まれているようです』
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