既にBADEND済みで国外追放されているゲームの悪役貴族に転生した僕はどうやら最強で、他国の王女を始めとするヤンデレ美少女たちに囲まれているようです

リヒト

第一章 アンノウン編

第1話

「……っ」


「あー」

 

 僕は妹が乙女ゲーをしているのをソファーに寝っ転がりながらぼーっと眺める。

 今はなんかイケメンに囲まれている主人公の女が一生懸命頑張って戦っている。対戦相手はなんか魔王っぽい奴。強そう(小並感)。

 妹がやっているのは乙女ゲームと呼ばれているゲームなんだそうだ。結構面白いらしい。

 僕はやったことないんだけどね。

 

「ん……お茶」

 

 喉の乾きを感じて僕はソファーから立ち上がる。


「お兄どうしたの?」


 妹が僕の方を振り返り、尋ねてくる。

 僕の妹、霧雨きりさめ梨々花りりか

 肩まで伸びたきれいな白い短髪に、青い瞳。顔は小さく、10人いれば12人が振り返るような絶世の美少女である。

 小さめの体躯で、体はあまり丈夫ではない。アルビノだしね。

 ちなみに僕の名前は霧雨きりさめ理央りお。普通の一般高校生である。

 普通に黒髪、黒目だしブサイクと言うほどではないと思うが、イケメンではない。フツメンだと思っている。

 

「ん?喉乾いたからお茶飲みたくて」


 僕は梨々花の疑問に答える。


「なるほどね」

 

 僕の言葉に梨々花は頷く。

 そして、梨々花は視線を乙女ゲーの方に戻した。


「んしょ」

 

 僕はキッチンに立ち、冷蔵庫を開く。

 

「お茶お茶ー」

 

 冷蔵庫の中に入れられているお茶の入った容器を取り出して、手に持って冷蔵庫を閉める。


「あ、お兄!今、夜ご飯の揚げ物のために油温めているから気をつけて!」


「え?」

 

 僕が梨々花の言葉に反応し、振り返ったそのとき。

 何故か床に転がっていたバナナの皮を踏み、体のバランスを崩して倒れる。


「あ……」


 派手にすっ転んだ僕は、僕の手は……グツグツに熱されていた油の入った鍋にぶつかる。

 

「ほっ……」

 

 倒れた鍋。

 そこから勢いよく零れ落ちた油は僕に向かって降り注いできた。


「ふっ……」

 

 僕の口から笑い声が漏れる。

 あっ……これ死んだわ。

 死因、バナナの皮ってマ?

 死にゆく人間とは思えないような考えを最後に……僕の視界は暗闇へと包まれていった……。













「お兄?」













 感情の失った声が響く。


 慟哭。号哭。泣哭。

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