第2話

「ん……あっ……」


 僕は視界に入ってくる暖かな光と耳に入ってくる鳥の囀りによって徐々に意識を覚醒させていく。


「ふー」


 軽やかに動く体を動かし、体を起こす。


「……?」

 

 あれ?なんで僕はこんなに軽やかに体を起こせているんだ?確か……僕はグツグツに熱しられた油を浴びたはずでは?


「……え?いや、ちょっと待て……そもそもここは何処なんだ?」

 

 僕は辺りを見渡し、首を傾げる。

 グツグツに熱された油を浴びた僕なら、僕が居るべき場所は病院のはずだろう。

 しかし、辺りを見渡してもここが病院であるとは思えない。

 おそらく木造と思われる小さな小屋で、小屋の中にあるのは僕が今寝っ転がっているあまり柔らかくないベッドと、小さなテーブルと一脚の椅子だけ。

 とても病院とは思えない。

 ナールコールは!?ナースコールはどこだ!?


「ほわー」

 

 僕の口から気の抜けた声が漏れる。

 ……眠い。二度寝したい気分。

 だけど、二度寝するわけにはいかないだろう。

 ここが何処だか……探さなくては。梨々花も僕のことを心配しているだろう。梨々花は年頃の女の子だとは思えないくらいとても僕に懐いていてくれていたし。

 僕はベッドから降り、辺りを見渡す。

 ……あれ?ちょっと視線が高いような……?

 いや、別にまぁ良いや。


「あ、鏡あるじゃん」

 

 僕は壁に取り付けてあった鏡を発見し、そこに向かう。


「……は?」

 

 鏡に映った男。

 僕はそれを見て疑問符を上げる。


「……え、ちょ……え?」

 

 僕の脳内を困惑が支配する。何が……どうなっているのか?わからない。 

 鏡に映ったのは見慣れた顔でも、油を浴びて爛れているような顔ではない。

 紫がかった黒髪に、血のような赤い瞳を持った一人のイケメン。

 10人いれば12人が振り返るような絶世のイケメンがそこにはいた。……今、こうして見れば背もかなり伸びている。

 足も長いし、体もシュッとしている。全身には程よく美しい筋肉がついていて、体を動かしやすい。


 誰やこいつ。

 

 少なくとも僕ではない……というか日本人じゃない。なさそう。

 

「ふむ……」

 

 僕はぼーっと鏡に映っているイケメンを眺める。

 ……どこかで見たようなことがあるような……。


「あ……」

 

 僕は小さく声を漏らす。

 思い出した……。

 確か……生前。死ぬ直前に梨々花がやっていた乙女ゲーに出てきていたキャラだ!


「……え?なんで?」

 

 なんで僕の前に置いてある鏡が生前に梨々花がやっていた乙女ゲーのキャラが出てくるの?意味がわからない……。なんで?

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