第3話
梨々花がやっていた乙女ゲー『フィル・エデン』
ものすごくざっくりとした説明をするのならば、人類を脅かす猛威である魔王率いる魔族たちから人類を守るべく女主人公が色々な立場のイケメンたちと一緒に協力しながら戦う、というゲームである。
今僕の目の前に映っている鏡の中の人間もこの乙女ゲーの登場人物だったはずだ。
確か……名前はアルベト・レイノワール。公爵家の息子。
主人公の婚約者なのだが、主人公に対して興味がなく、いつも酷い態度をとっているようなキャラで、悪役に属される存在だったはずだ。
基本的には王族と仲良くなった主人公によって、アルベトは断罪され国外追放される……そんなんだったはずだ。
国外追放された後はそのまま野垂れ死んだり、盗賊に捕まって奴隷として売られたり、魔族となって主人公たちの前に敵として立ちふさがったりしていたりと色々あったはずである。
敵キャラとしてのアルベトが異常なまでに強くて、梨々花が発狂していたのを覚えている。
アルベトが国外追放後どうなるかはランダムらしく、結構な確率でアルベトは敵として立ちふさがってくるらしい。
唯一その可能性を無くせるルートはアルベトと仲良くなるルートなのだが、アルベトと仲良くなるルートの数は少なく、大体のルートで確率を引いて、アルベトと戦う羽目になってしまうらしい。
梨々花はそれを愚痴っていた。
アルベトが敵として立つことのないルートは珍しいらしい。
そんなキャラ。……そんなキャラが僕の目の前の鏡に映っている。
「え……っと」
も、も、も、もしかして……僕。
「異世界に転生してる?このキャラとして……」
呆然と、ポツリと呟く。
僕は辺りを見渡す。
そして、自分を見下ろす。
この味気ない小屋にも見覚えがある。確か、断罪されて無一文で国外追放されたアルベトが一時の間暮らしていた小屋だったはずである。
……ほとんどのルートで主人公たちがこの小屋に訪れているので、僕の記憶の中にも存在していた。
……僕の体が着ている服はボロボロであり、とても公爵家の息子とは思えない。
「おっふ……」
赤ん坊からのスタートじゃなくて……国外追放されたBADEND後からのスタート?
「何そのクソゲー」
どうすればいいかわからない。
なんかもう……終わっているような状況に転生してしまった僕は途方に暮れるのだった……。
あとがき
転生とは、Wikiによると、肉体が生物学的な死を迎えた後には、非物質的な中核部については違った形態や肉体を得て新しい生活を送るという、哲学的、宗教的な概念ということらしいので、これは転生です。
憑依ではなく転生です。
死んだ主人公が、新しい肉体を得て新しい生活を送っているので転生です。
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