第4話

「と、とりあえずは現状確認だ」

 

 僕は自分の状態を確認する。

 体は動く……前世より遥かに。

 き、記憶は……。

 ゲームだとアルベトは魔族となる前も十二分に戦えたはずである……!

 しかし、その戦い方を僕が忘れていた場合、いや、忘れていたは正しくない。その戦い方の記憶がなかった場合……終わりだ。

 魔族、魔物もいる世界でたった一人。戦い方も知らずに放り出されるとか終わりである。 

 僕は必死に頭を唸らせ……何か、何か思い出さないか……。思い出せないか!?

 

「……何にもわかんない」

 

 だがしかし、結局何もわからなかった。

 探っても探っても出てくるのは僕の記憶。アルベトの、異世界の記憶は一切出てこない。

 ……いや、普通に考えたらわかるはずもないのだけど……え?ど、どうしよ……マジで詰んでない?これ……。

 

「な、な、な……なにか無いかな!?」

 

 僕は家の中を駆け回り、何かないか探し回る。


「くっ……」

 

 そして見つけたのは……。


「なにこれッ!?」

 

 仮面!ただの仮面!特に何か特別感があるわけでもない仮面!

 付けてみたけど、何かあるわけでもなかった。……本当に何かあるわけでもなかった……。

 ただの仮面。ただの装飾品。ただの品でしかなかった。


「オワタ……」

 

 僕は天を見上げて呆然と呟く。もはやどうすることも出来ない。

 ……本当にどうしよう。


「外行ってみるか……」

 

 僕は最終手段として外出を決意する。

 ……外にとんでもないものがいたり、あったりするような事態を恐れて外に行くのを躊躇っていたのだけど……この際しょうがない。だってどうしようもないもの。もはや希望があるとするのならば……外しかない。

 大丈夫。窓から見える外は平和そのものだ。


「……良し」

 

 僕は小屋に取り付けられている玄関の扉へと手を伸ばし、開いた。


「わぁ……」

 

 視界の先。

 広がった世界を見て僕は感嘆の声を漏らす。

 視界の上に存在している太陽が暖かな光で僕を包み、木々のざわめきと鳥のさえずりが通り過ぎていく。


「空気が美味しい」

 

 環境汚染が進んでいる地球とは何もかもが違った。


「すぅー。はぁー」

 

 僕は一度深く深呼吸する。


「……よし。行くか」

 

 そして、足を一歩踏み出す。

 何か、何か僕にとって利益になるものを探すために。

 念のために仮面を付けておく。一応僕は国外追放されている人間だしね。


「キャァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「……」


 大きな一歩を踏み出した瞬間。

 遠くの方から女性と思われる人の大きな悲鳴が聞こえてくる。

 ……え?ど、どうしよう……。

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