最終章 エルピス

第1話

「おかしい」

 

 アルミスが一言呟く。


「おかしい」

 

 さらに一声。


「おかしい」

 

 さらにさらに一声。


「おかしいだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 そして、絶叫を一つ。


「何がだよ?」

 

 僕は一切アルミスの方へと視線を向けずに尋ねる。

 視線は書類の方へと固定されたままだ。


「この現状がだよッ!?なんで俺ら生徒会が国家の重要書類などの作業をやっているんだ!?どう考えても俺らの仕事ではないだろ!」

 

 アルミスは生徒会室に置かれている大量の書類を指さして叫ぶ。


「仕方ないだろ。うちは南の領地での実績もあるし、僕が騒動の中心なんだから」

 

 五賢会が壊滅してから一週間。

 今、この国は大変なことになっていた。


 五賢会はあんな人間たちと言えども長年君臨していた人間であり、ちゃんと仕事もこなしていた。

 特にレイハが。

 この国の国王がするべき仕事のほとんどをレイハがあの傀儡の代わりにこなしていたのだ。

 

 五賢会が居なくなったことで溜まっていく仕事。

 

 それだけじゃない。

 民衆の動きも大変だった。

 五賢会は倒れ、国王が傀儡だったことが知れ渡り……既に民衆の運動は着地点を見失っていた。

 自分たちが何をすれば良いのか。解決したのか。そもそも自分たちは何をしたかったのだろうか?

 

 その民衆の思いは貴族たちにも影響を与える。

 貴族たちは動きたくとも、地雷を踏むのが怖くて動くに動けないという状況なのだ。

 

 今、動けるのは未だ何の責任も持っていない子供……もはや生徒会が動くほかないような状況なのである。

 

 各地の執務、民衆への説明、新しい国のあり方を探る。

 やらなくてはいけないことは幾らでもあった。普通に多忙である。


「お前らはまだ言いだろ……俺らなんかいきなり招集されてこれだぞ?」


「南の領地の件にも関わっていないんだけど……」


 駆り出されている生徒会メンバーは一年生だけでなく二、三年生も同様である。

 彼ら、彼女らは生徒会長の元淡々と作業をこなしている。


「あぁー。ゴミゴミ。なんで俺らがやっているのか、意味がわからない。ふー。頑張ってあげるから、その代わり今度恋人ごっこさせて?」


「いや……それは嫌だよ?」


「ひっでぇ!?」

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