第4話

「今日も裏山に行ってくるね」

 

 僕、ニク・アレイスターはまだ声変わりもしていない声を張り上げる。

 ニク・アレイスター。これが僕の今世の名前だ。貴族の家なので、アレイスターという家名を持っている。

 アレイスター。僕が死ぬ直前までしていたエロゲの竿役の家名。すごい偶然もあるものだよね。名前が違うから、僕がエロゲの竿役ではないだろうけど。


「いってらっしゃいませ。お坊ちゃま」

 

 僕はメイド服を着たまだ若い女性、カレアさんに告げ、屋敷を出る。

 この世界に僕が転生してから早8年。

 僕は元気にすくすくと過ごしていた。

 ちなみにカレアは今も若い、きれいな女性のままだ。


「身体強化」

 

 僕は普段圧縮して仕舞っている魔力を足へと送り、地面を蹴る。

 体が悲鳴を上げ、そして悲鳴を上げる体は魔力によってすぐに癒やされる。


「気持ちいー」

 

 僕はこれ以上ない速度で駆け抜け、屋敷の裏にある裏山へと入っていく。

 

 魔力。

 僕が赤ちゃんのときからずっと使っている遊び道具。8歳となり、いやそれよりも前から、自由に体を動かせるようになったときから、魔力の持っている力に僕は気づいていた。

 魔力を良い感じに体へと流すと、体が悲鳴を上げながらも強化してくれるのだ。三徹を繰り返す頭にエナドリを流すときのような感覚に似ている。

 

 未だに魔法は見たことがないから魔法は使えないけども、魔力で身体強化出来ることがわかったのだ。

 これはもう魔力と呼んでいいだろう。……この八年間魔法なんて見てないけど、あると信じていいよね?


 僕はそんなことを


「起動!グー◯ルマップ!」

 

 僕は体内の魔力を薄く、放出する。

 魔力はソナーのようで、魔力を発射すれば、反射波が返ってくる。それを元にどんな場所の地図も一瞬で描けるし、範囲内にどんな人がいるかも一瞬で認識出来る。

 頭に魔力を流して強化すれば、どんだけ情報量が多くても簡単に情報を処理出来るのだ。いやぁー実に便利だよ……ね……ん?

 

「人?」

 

 僕のグー◯ルマップ……いや、これは危険だな。

 グーグ◯マップじゃなくて、僕の魔力感知が人間の気配を捉えた。そして、そのそばにいる魔物の姿も。


「……なんで?人が?」

 

 この裏山は僕の家の所有物のはずだ。

 ……立入禁止のはずなんだけど……?

 いや!そんなことを考えている場合じゃないわ!急がないと。


「ふっ」

 

 僕はいつも以上に魔力を体へと流し込み、人の気配と、魔物の気配がした報告に向かって全力で向かった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」

 

 聞こえてくる悲鳴。

 僕が気配がした方に辿り着くと、そこにはゴブリンに囲まれるまだ小さな少女が蹲り、涙を流していた。

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