第3話
どうやら僕は赤ちゃんへと転生したようだった。
……赤ちゃんからの転生。それを受けて僕が最も懸念したことは退屈で死ぬことである。
赤ちゃんなんてやることがなくて、冗談でもなく退屈で死んでしまうかと思ったが、その心配は杞憂に終わった。
その理由は……
コンコン
静かな空間に軽やかな音が響く。
僕が寝かされている部屋の扉がノックされた。
「失礼します」
扉が開く音が聞こえ、それと共に一人の人物が僕に近づいてきてくる。
「……今日もおとなしいですね」
僕が寝かされているベッドを覗き込み、そう呟いたのはメイド服を着たまだ若い女性であった。
メイド服を着たまだ若い女性の顔は整っていて、とてもきれいだった。ふくよかなお胸に、露出の少ないメイド服からわずかに見える白い肌が瑞々しく、美しい。
実に眼福である。
「では、今日も失礼します。……すみません」
メイド服を着たまだ若い女性が僕の小さな小さな手を取る。
これだ。僕が退屈で死ぬことが杞憂で終わることになった理由は。
別に、きれいな女性に触れられたヒャッホイーッ!!!というわけではない。いや、そういう一面もあるけど。
僕は紳士なので、手を握ってくれるだけで妄想で一日を過ごせるけど。
これが理由ではないのだ!
「では……」
じんわりとした、温かいものが僕の中へと流れてくる。
僕はそれに対して意識を集中させ、流れ込んでくるものを操作し、全身に行き渡らせていく。
この温かいもの。それが今の僕の退屈しのぎである。
魔力。
僕はこれをそう呼んでいる。
これが、魔力がどうかは正直わからない。しかし、異世界に転生して、何か温かいもの!これが魔力以外のものであるはずがないッ!!!
まだ、魔法も身体強化とかも赤ちゃんだから出来ない。なので、これが魔力かどうかは未だわからない状態だけど。
ちなみに僕は魔力であると信じている。
この魔力は自由自在に動かすことが出来る。全身に移動させたり、圧縮したり、放出したり。色々出来る。この魔力は奥が深く、動かせば動かすほど、遊べば遊ぶほど新しい発見を見つけることができ、決して飽きることはない。
「……終わりました」
僕の手から。メイド服を着たまだ若い女性の温かい、ぬくい手が離れていく。
ぽとり。
僕の手が柔らかな布団へと落ちる。
あぁ……終わってしまった。
「今日もお疲れ様でした……」
何故か、酷く暗い顔をしたメイド服を着たまだ若い女性は僕に向かって一度礼をしてから、部屋へと出ていった。
それを見送った後、僕は今日もまた魔力での遊びを堪能した。
それにしても、なんでメイド服を着たまだ若い女性はあんなにも申し訳なさそうな表情を浮かべているのだろうか?
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