第6話
「ふぅー」
僕は孤児院でせっせと働いているリーリエのことを近くの建物の屋上から眺める。
色々と思い出すリーリエとの散策の後、僕とリーリエは別れたのだ。
別れたあと、僕はなんとなくいつもリーリエがやっている孤児院の手伝いを眺めるためにリーリエを適当に尾行してついてきたのだ。
「良い子ね」
気配を、存在感を消して僕の隣へとやってきていたミリアが僕に向かって話しかける。
僕によって暗殺の技術を叩き込まれ、この国の最高権力者である五賢会のうち、三名を殺してみせたミリアの隠密の技術は非常に高い。
僕でなければ話しかけられるまで、近づいてきていることに気付け無いであろう。
「……そうだね」
ミリアのその言葉に対して僕は頷いた。
リーリエ。
彼女は非常に優しい子だ。暗殺者である僕とは何もかもが違う。人を殺す僕の手とは違い、彼女は誰かを守り、助けるために力を振るう。
「ふふふ……案外。あなたはあの子に一目惚れしていたりして」
「……なわけ」
僕はミリアの言葉を切り捨てる。
リーリエに僕が初恋しているなんてありえない。……あり得たとしてもそれは……僕がまだ何も失っていなかった頃の話だ。
今の僕と昔の僕とでは何もかもが違う。
「私は復讐を終えたわ」
ミリアの声から感情が消える。
「あなたに命令を下した人間は殺した」
「何?僕を殺す……?であるのならばあと数千年は修行が必要だけど」
「……」
僕の言葉。
半ば本気で告げた僕の言葉に対してミリアは沈黙と言う言葉で返した。
「……」
彼女は今、空を眺め……一切の身じろぎもしない。
能面のように無表情で、何の感情も浮かんでいない彼女の横顔から、プレイベートモードの僕では何の感情も読み解くことは出来ない。
「……」
「……」
沈黙。
「……ふー」
長い沈黙の後にミリアがゆっくりと息を吐く。
重い……重い息を。
「生き返らないわ。私の父は」
ミリアは空を見つめていた自身の瞳を僕の方へと向ける。
ゆっくりと……きれいな涙を流しているその瞳を。
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