第6話

「それで……?一体どうしたんだ?魔王である君がボロボロでこんなところにまで飛ばされてくるなんてよほどの事だと思うんだけど……」

 

 僕は魔王の隣に腰を下ろし、疑問を投げかける。

 ……何が起こったのか。

 それくらい僕は予想出来るけど、一応聞いておいた方が良いだろう。

 

「……最悪よ。最悪。飼い犬に噛まれるとはこのことね……」

 

 僕の言葉に対して魔王が自嘲気味に言葉を話す。


「簡潔に話すとするのなら……玉座を追われた。ただそれだけのことよ」

 

 サラッと魔王から告げられる衝撃的な言葉。



「「「「「は?」」」」」

 

 

 それを聞いて全員が驚愕する。

 驚愕しているのはサブマ、リーリエ、ラザリアは当然のこと。

 まるで自分たちとは関係ないと言わんばかりに放置してダラダラと過ごしていた生徒会長とミリアも同じである。


「ちょ……え?……な、何を言っているの!?り、理解が及ばないのだけど……」

 

 その硬直からいち早く脱したのは生徒会長だった。


「あら?わからなかったかしら?……簡単に話したつもりだったのだけど?」


「言っていることは簡単よ。でも……それを納得に、理解が及ばないのよ。魔王であるあなたが……その座から引きずり降ろされた?そ、そんなことあるの……?」

 

「ふふふ……あなたたち人間には納得しきれないものがあるかも知れないわね……別に魔族における、王。魔王はそこまで絶対というわけではないのよ。……魔王は実力によって選ばれる。血統主義ではないのよ」


「そ、そうなのか……」

 

 魔王の言葉に生徒会長が驚愕する。その驚愕は……僕以外の全員に共通しているように見て取れた。

 ふふふ。

 いつか……いや、もうすぐ。僕がちゃんとわかるようにしてあげるよ。


「魔族は血統主義なんて言っていられるほど甘くないのよ……ほとんどのみんなが病弱で寿命が少ないからね」

 

 魔王がみんなの反応を見て苦笑しながら話し始める。


「さて、と……ちゃんとみんなには経緯を話してあげないとね。……まず、私は魔族が人類を攻めることに反対だった……」


 魔王が僕たちに向けて言葉を話し始めた。

 

 ■■■■■

 

「ということなのよ……」

 

 それからしばらく。

 魔王の説明が終わった。


 今回起きたこと。魔王の話をまとめるとこんな感じになる。

 まず、魔族は人類を滅ぼして魔族は魔界から出ていくべきだッ!という意見を持っている魔族が多くて、魔族が人間世界へと攻め込む準備をしていた。


 それに反対していたのだが魔王であり、それを止めようと躍起になってとうとう強権的にその運動を叩き潰そうとした結果、魔族たちからの反発を食らって反乱が起きてしまったというわけだ。

 

 魔王は寝込みを襲われて……親愛なる配下たちを殺す……その一歩を踏み出すことが出来なくて防戦一方となり、殺されそうになったので逃げてきたというわけだ。

 自分を匿ってくれる可能性がある僕の元へと。

 魔界にはアレイスター家がかなり前に残した転移装置があったはずだから、それを使ったのだろう。

 

「……俺の敵ではないじゃないか」


「そ、そんなことが……」


「……これは……」


「判断が難しいところね」


「どうせエルピス様がなんとかしますよ。あなたたちが悩むようなことでは決してありませんよ。全てエルピス様に任せておけば良いのです。……どうせ今回の件も最初から知っていたでしょうし」


「いや……まぁ、そうだけど。それを今、君が言う必要はなくない?」

 

 全て僕に任せようとするミリア。彼女に対して僕はささやかな文句を告げる。


「なるほど……!確かにそうだな!」


「それが良いわね。あれが過労で死んでしまえば良いのよ」


「なるほどです!エルピスくんなら何も問題はありませんね!」


「……確かにそうだな。全く何を」


「そうでしょう?……まったく。あなたたちは愚かなのですよ」


 いや、全員も納得するな?理解するな?


「あなた……信頼されているのね」


 それに対して魔王は驚愕の声を上げる。


「ははは……私とは大違い。いや、私が悪いのだけどね」

 

 そして、魔王が自嘲気味に笑った。

 おい?そこで闇を出してくるな?


「さて、と……まぁ、任されたからには僕も動くよ。まず、僕らが確実に成し遂げなくてはいけないのは魔族の侵攻を止めることだ。魔王には悪いが、そのためなら場魔族が滅ぶことすら構わない」


「ちょっと!?それは……!」

 

 僕の言葉に対して魔王が反発を見せる。


「いや……流石にそれひどいと思うぞ」

 

 魔王だけでなくサブマも同意のようだ。ラザリアなんかこれ以上無いくらい僕を見る目が終わりきっている。

 

 おい。ゲームで例え赤ん坊であろうとも真顔で淡々とぶち殺して、周りにドン引きさせて好感度を失って、後ろに着いてくる人がいなくなって一人で魔王軍を叩き潰した勇者様はどこへ行ってしまったんだい?

 ちなみに、。例えそうなっていてもヒロインの好感度が減ることがないのがエロゲたる所以とでも言っておこうか。


「……流石にそこまではしないよ。魔族の侵攻を止めるため。そのためにまずやるのが反戦派の魔族と繋がることだ。内乱状態にしてしまうのが一番早い」


「なるほどな……だが、どうやって反戦派の人間と繋がるんだ?」


「ん?良い子がいるだろう?」


 ようやく撒いた種の収穫期である。

 

 

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