第5話
それからしばらく。
「んっ……」
既に生徒会室にいる面々が魔王のことなど忘れて、くつろぎだした頃。
「あ……」
魔王のきれいな声が聞こえてくる。
「起きた!?」
それに強く反応を示したのはサブマを初めとした勇者たちだった。
サブマはしっかりと腰に聖剣をぶら下げている。
「大丈夫なの……?」
「警戒しておくことに損はないでしょう」
武器を構えているのはサブマだけではなく、リーリエやラザリアなんかも同じであある。
「あ、この紅茶美味しいわね」
「ふふふ。当然。私が淹れたのだもの。頭を垂れて感謝しなさい」
「……あなた、エルピス以外には本当に偉そうようね……」
「当然。私がエルピス様の使用人。偉いの」
「その理論はわからないわ」
そんな勇者たちを尻目にミリアと生徒会長はこれ以上無いくらい楽に過ごしていた。
らくらくのダラダラ。
これ以上無いくらいにはダラダラと過ごしていた。
魔王に対する警戒のけの字もない。
「……っ、いっつ……」
魔王が毛布を押しのけて、ゆっくりと体を起こす。
「ここは……」
体を起こした魔王が当たりを見渡して、呟く。
「……っ」
周りに居るのが武器を持った人間たち……魔王は体を強張られせ、警戒態勢に入る。
「……ッ」
「ふー」
「……」
それに対抗するようにサブマたちも警戒態勢に入る。
最悪の循環が起きようとしていない?大丈夫そう?
「……ッ!」
そして、警戒をしたまま辺りを見渡していた魔王が僕のことを見つけて、安堵の表情を浮かべる。
「やぁ……久しぶりだね」
僕は魔王に向かって手を上げて、近づいていく。
「良かった……無事にあなたの元にたどり着けたのね」
魔王は安堵のため息を吐いて、警戒態勢を解く。
それに合わせてサブマたち三人も警戒態勢を解いた。
「あぁ。そうだな。しっかりと保護してやったよ。感謝しろよ?」
「えぇ。……そうね。あなたには感謝してもしきれないわね。本当にありがとう」
そして、魔王は僕に向かって深々と頭を下げたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます