第14話

「あっ……」


「終わりだよッ!!!」

 

 僕はボロボロの姿で床に倒れ伏している魔族の男の頭を思いっきり蹴り飛ばす。

 首の骨を折らない程度で……別に体の耐久力はある魔族で、回復魔法もあるこの世界だし、折ってしまっても死なないだろうが、念の為だ。


「ふー」

 

 僕は深く息を吐く。

 ようやく。ようやく終わったよッ!!!この面倒なッ!面倒な仕事がッ!!!

 戦闘開始から約10時間。なんとか全ての魔族を地面へと叩きのめし終えた。

 本当に疲れた……ものすごい重労働だった……こんなの人間がやるものじゃない。大変過ぎだ。 


「おつかれ」


 リガルレインが僕に労いの言葉をかけてくれる。


「……こ、こんなにボコボコにしなくとも……」

 

 それに対して魔王は若干引いたような声を上げる。


「……ァ?何?叩きのめされたいの?そうなら早く言ってよ。二度と喋られないようにしてあげるのに」

 

 僕は魔王の肩へと自分の手を乗せる。


「……あ、あなたなら本当に私のことを殺せそうだから……そういう冗談はやめてくれる?」


「え?冗談だと思う?」


「……ごめんなさい」

 

 魔王が僕の方へと頭を下げて謝罪の言葉を口にする。


「うん。それで良し」

 

 それを見て僕は満足げに頷いた。


「さて、と。これでもう良いよね?コイツラも既に現実を理解しただろう」

 

 僕は気絶している魔族たちを足蹴りしながら告げる。


「えぇ……そうね。というか、回復してあげなくちゃ……!」

  

 魔王が回復のために……タオルなどを取りにいく。


「じゃあ、僕もこれで」


 僕も外から建物の方に向かって歩き出す。


「おう。ありがとな。それにしても……お前も随分と明るくなったものだな」

 

 リガルレインが僕の方へと笑顔を向けてそう話してくる。


「……ん?こうしておいた方が良いだろ?」


 僕は少し前は……リガルレインと初めて出会っていた人と同じような視線を浮かべて笑みを浮かべた。 


「……ッ!?」

 

 誰よりも傲慢に。誰よりも我儘に。

 だってその方が人間らしいじゃないか。

 

「ふふふ。じゃあね」

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