第25話
魔法による結界に閉鎖された部屋の中。
「なっ……何故だ……何故君が私を殺すと言うのだッ……!」
一人の質素な服を着た男が恐怖と困惑の声を上げる。
「それが必要だからです。……あなたが死ぬことによって民衆の活動が激化してくれるんですよ」
それに対するミリアの答えは簡潔。
淡々と、当たり前かのように殺す理由を話す。
「……は、ははは。俺なんて必要ないってことか……」
それを聞いた男は諦観のこもった声を……寂しく、上げる。
男は民衆の自由のために、腐った貴族による圧政を開放するために、アレイスター家の少年を救うために、心血を注いで尽力してきた。
しかし、それをとうのアレイスター家の少年にノーを突きつけられる。
彼女がアレイスター家の少年と仲が良いことくらい男も知っていた。
「そういうことです。それではさようなら」
「嫌だッ……!死にたくなッ!!!」
ミリアが振るった短剣。
それが容易く男の喉を切り裂き、男の首から大量の血が溢れ出し、床を真っ赤に染め上げる。
男の体はゆっくりと地面へと横になる。
「暗殺任務。完了致しました。エルピス様」
「おっけ。おつかれ」
僕は仕事を終えたミリアの方に近づいていく。
「それで、他に何かするべきでしょうか?」
「いや。大丈夫だよ。既に色々な仕込みがは終わらせてある。僕たちのやったことだとバレることがないような仕込みをね」
僕には僕の暗殺があるように、国の子飼いの暗殺者による暗殺にも特徴がある。
ミリアの暗殺を、国の子飼いの暗殺者による暗殺に見せることくらい実に容易いことだ。
「なるほど。それでは私の仕事はこれで終了でしょうか?」
「うん。終了だね」
ミリアの言葉に対して僕は頷く。
「そうですか。それではお疲れさまでした」
「……一応帰るまでが暗殺だから、まだ気を抜かないでね?」
「承知しています。エルピス様」
「まぁ、僕がいる以上安全ではあるけど。じゃあ、帰ろうか」
僕とミリアはサクッとここから退散した。
一人の男の遺体を残して……。
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